雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

新・本と映像の森 240 小松左京「保護鳥」、『さらば幽霊 小松左京自選短編集』講談社文庫、1974年

2019年03月03日 16時40分25秒 | 本と映像の森


新・本と映像の森 240 小松左京「保護鳥」、『さらば幽霊 小松左京自選短編集』講談社文庫、1974年

 同書、p108~135。

 昨日、朱鷺のことを書いたので「関連」でSFの「保護鳥」を書く。

 舞台はヨーロッパのどこか、英語とドイツ語とフランス語が通じる田舎町。

 主人公の日本人カメラマンは泊まった宿で、その村の自然に生息する貴重な「アルプ鳥」のことを聞く。

 話では保護鳥は敏感で2つがいだけ残っているという。

 「アルプは繁殖力が弱いんですか?」
 「繁殖期には特別の餌がいるんです。それがこのごろめっきりすくなくなって・・・」

 主人公はカメラに500ミリ望遠レンズをつけて撮影していたのをとがめられ、宿からも追放される。

 車で宿を離れた彼を、「工事中、迂回」の標識や、なぜかガソリン切れの「不運」が襲う。気がつくと彼は「保護鳥」のエリアに入り込んでいた。

 彼はアルプの生息する森で鳥の叫びを聞いてしまう。

「ちなまぐさい、血と唾と腸の一部がとびちるような、恐ろしい叫びが・・・。
 相かわらず、狂ったような呪詛の調子はこめられていたものの、今度は、そこに、毒々しい歓喜の色がこめられていた。
 なにか、いいものを見つけた、という歓喜が・・・。
 そして牙がガチガチふれあうような、あからさまな飢餓が・・・。
 つづいて彼の背後から、もおう1つ別の叫びがあがり、前面の叫びとよびあった。
 パサッ、パサッ、という大きな羽ばたきの音と、草をかきわける、ガサリ、ガサリ、という音が近づいてきた。」(p134)

 終末まで、あと7行。