新・本と映像の森 226 檜山良昭『ヒトラーの陰謀 ドイツ国会放火事件』講談社文庫、1983年
386ページ、定価480円
著者は推理小説家のようですが、これはリアルな純粋ドキュメント。そして、めっぽう面白い。まだ今出版されていればボクは推奨。
1933年2月27日夜に起きたベルリンでのドイツ国会放火事件の謎を追うドキュメント。
国会に放火したのは誰かという謎と、当時ドイツにいたため放火犯人に仕立てられたブルガリア共産党員でコミンテルン活動家ディミトロフも追い、ついに真実を突き止める。
その真実は?
◇
当時のナチスの実態・暴力の姿や刑務所でのディミトロフの苦闘も活き活きと活写している。
ディミトロフはドイツ語でゲーテの詩を書き留め常に見ていたという。
「時をうしなわず、賢くなることを学べ
運命という巨大な秤の指針は
めったにとまっていることはないのだから
高くのぼるか、でなければ沈むか
うちかって支配者となるか
でなければ負けてつかえるか
儲けるか、でなければ損するか
苦しみ悩むか、でなければ勝ち誇るか
ハンマーとなるか、でなければ鉄床(かなとこ)となるか」
反ファシズム人民戦線の理解にも必要な1冊だと思う。
たかしディミトロフの全生涯の評価は「ハンマーでなくて鉄床(かなとこ)」にされた生涯では、なかったのかと思う。
3部に分かれる。
第1部 放火事件
第2部 ディミトロフの推理
第3部 真相
最近の研究書を読んでみたいと思う。