馬糞風リターンズ

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「美木多」と云う地名(地名の話8)

2009年09月08日 | 地名・地誌
 泉北高速に「栂・美木多」と云う駅があります。
和泉が丘駅と光明池駅との間の駅です。
鉄道ファンには特異な駅名として結構有名だそうです。
何故かと聞きましたら、例えば「四天王寺前夕陽ヶ丘駅」「さくら夙川」のように並列併記の駅名は幾つかあるそうですが ]・[ 中黒と云うそうですが、この中黒表記の駅名は珍しいそうで、その1つが「栂・美木多」なのだそうです。
「栂」をトガと読むのも珍しい読み方で、普通はツガがと読むようです。
栂はさて置き、今回は「美木多」を考えてみます。

 「美木多」地名解
「美木多」=みきた、通常何の疑問もなく耳に入ってくる音ですが、考えてみると意味が分からない地名です。
使われている漢字には何の意味もないでしょう。そうすると音が問題になると思いますが「みきた」とは、どんな意味があるのか?
「美木」「神酒」「三木」「幹」「樹」「御木」「三岐」「見城」「三鬼」・・・などいろいろ考えられますが、後ろの「た」を付けた「みきた」になるとまた数は限られてくるでしょう。
しかし、そうして並べて見ても「みきた」にぴったりの組み合わせはないように思います。
長年、頭の片隅に「みきた」はもやもやと残っていたのですが、ゆっくりと地図を眺めていて気付いたことがあります。

 話は飛びますが「重箱」読み、と云う読み方があります。
即ち、漢字には「音」と「訓」があります。普通漢字を2文字続けますと「新聞」「飛行」などのように「音+音」で読みます。所が「重箱」は「重」=音+「箱}=訓、で読みます。
因みに「湯桶」読みと云うのは、「訓」+「訓」の読み方です。
 美木多は石津川の支流「和田川」に沿ってあります。
この「和田」が重箱読みの典型です。
「和」は、「和魂」=ワコンとも読みますが大和言葉ではニキタマと読みます。
同じように「和物」=ニキモノ、「和布」=ニキメなど「和」の訓は「ニキ」です。
「にき」=「和、熟」おだやか、やわらか、精熟した、などを表す接頭語です。
動詞は「にきぶ、和ぶ」となります。
「和田」=「にきた」と読むのが本来の大和言葉です。
実り豊かな「にきた」が広がっていたこの地区を「にきた」と呼び、それに対応する漢字表記として「和田」を充てたと思われます。
「にきた」が訛って「みきた」となり「和田」本来が忘れられて表記も「美木多」になったと考えると納得がいく地名です。
和田川表記は残り「美木多」は大和言葉の呼び方が残ったことになります。
 このように「思考実験」は、大変面白いお遊びになります。