ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

『助長』 宋人に…

2014年06月22日 | 中学受験 合格力随想

宋人有閔其苗之不長而揠之者。

芒芒然帰謂其人曰、「今日病矣。予助苗長矣。」

其子趨而往視之、苗則槁矣。(出典『孟子』公孫丑上

■書き下し文
宋人に其の苗の長ぜざるを閔(うれ)へて之を揠(ぬ)く者有り。

芒芒然として帰り、其の人に謂ひて曰はく、「今日病(つか)れたり。予苗を助けて長ぜしむ。」と。

其の子趨(はし)りて往き之を視るに、苗則ち槁(か)れたり。

■口語訳
宋の国の人に自分の苗が成長しないのを憂えてこれを引っ張るものがいた。

ぐったりとして帰り、自分の家族に言うには、「今日はくたくただ。わたしは苗の成長 を助けてやった。」と。

その人の子が走って行ってこれを見ると、苗は枯れていた。

 

お子さんの勉強を見るときに、保護者の方が最も失敗しやすのは、最初にがんばってやりすぎることです。特に点数化などされていると100点以外は悪とお思い勝ちです。大事なことは、がんばることではなく長く続けることですから、腹八分目というよりも腹六分目ぐらいがちょうどいいのです。

例えば、お子さんが書いた作文には、多くの場合字の間違いがあります。しかし、そのほとんどは、何か月かたてば自然に直るか、またはひとことの注意で直るものです。ところが、今すぐ直そうとするから何度も注意し、お子さんも保護者の方も両方くたびれてしまいます。

手をかけるのは、苗を伸ばすところではなく、その苗の植わっている土に水をやるところです。作文で言えば、書いたものを直すところではなく、その土台になっている読む力をつけるところです。よくある作文の通信講座には、赤ペン添削に力を入れているところがあり、それはそれで文法作法を身につけたりするとき役に立つのですが、それ自体は苗を伸ばそうとしていることに近いでしょう。書いたあとの結果に手を入れるのではなく、書く前の準備に力を入れることが、苗に水をやることだと私は思います。

何ごとによらず、『助長』から真の成長は生まれません。仮に、みかけ上結果が出ているように見えても、必ずどこかでいつか破綻します。その破綻が遅ければ遅い程、修復に多くの時間を要することとなります。保護者の方は結果も出ており、本当によかれと思っておられるので尚更事態は悪化、深化します。私も含めて子どもたちの成長に関わる皆が、自戒を込めて子どもたちの成長の根を抜く宋人ではないことを願わずにはいられません。


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