ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

考える力①…テーマのある体験

2010年10月01日 | 中学受験 合格力随想
公立中高一貫校の入試問題は、内容がよく工夫されていますが、問題が工夫されていることに伴って、採点はかなり手間がかかるものになります。しかも、手間がかかるだけではなく、採点の基準がはっきりしていないため、採点する側の心理的な負担もかなり大きいと思われます。

これらを鑑みると、いずれこのような形の入試問題を出すことには限界が来るのではと思われてきます。将来は推薦試験のような形が取り入れられるか、あるいは学力検査に近い要素が増えてくるのではないでしょうか。

それはともかくとして、今の入試のスタイルが現実にはあるのですから、当然そのスタイルに合わせた練習が必要となります。そうしなければ合格が遠のくことになります。つまり当面、中高一貫校の入試では考えるさせる良問の出題が続くことを前提に、その対策を行うことで、その取り組みが受験ばかりでなく考える力をつけるという形でその生徒の一生の役に立つことになります。

では、考える力をつけるためにどうしたらよいのでしょうか。そのためには、まず読む力をつけることです。読む力がそのまま考える力になっていると考えてもいいでしょう。体験を豊かにするということももちろん大事ですが、ただいろいろな体験をしていればよいというのでなく、お仕着せの体験は、単なるエピソードにしかなりません。同じ体験をしても、考える力のある子は、より内面的に個性のある体験としてとらまえていきます。

つまり、体験の外見ではなく、自分なりのテーマを持った体験をすることが大事なのです。子供時代はいろいろな体験をすることが必要ですが、その体験を深めるものは、その体験をしたときのその子のテーマです。

例えば、親に連れられてアフリカに行ってキリンの背中に乗って遊んだというような珍しい体験よりも、自分で何か欲しいものがあって、初めて隣町まで買い物に行ったというような体験の方が、その子にとってはテーマのある体験になります。珍しい体験だけであれば、それは思い出にはなるだけですが、テーマのある体験をした子は、そこから新しい体験を発展させていくことができます

このテーマというものがどこから来るかというと、やはり読書や対話などを通した知的な想像力からやってきます。豊かな想像力を持っている子供は、普通に遊んでいるときでも、自分を物語の主人公の一員と見なして遊んでいる面があります。

小学生のころのいたずら好きな子というのも、この想像性ということから理解できます。いたずらをする子の多くは、単に悪いことをしようと思っていたずらをしているのではなく、いたずらという物語を演じています。その背景には、いたずらを楽しく描いた読書などの影響があります。だから逆に、テレビやアニメなどで根の浅い物語ばかりを見ていれば、その子の体験のテーマも根の浅いものになります。

読書や対話によって多様なものの見方ができるようにするとともに、読書や対話を通してテーマのある体験をしていくということが、子供の考える力を豊かにしていきます。つまり、元になるのは、読む力をつけるということです。そして、その子にどれぐらい読む力や考える力や豊かな体験があるかを見ることができるのが文作です。中高一貫校の記述試験は、このような背景から作問されていると考えるべきでしょう。

氷山のように海面に表出しているものはたった八百字程の文作ですが、そのためには、海面下にその何倍・何十倍もの素養(読む力・考える力・豊かな体験)が必要なのです。


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