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ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

足のつかないプール

2008年09月05日 | 中学受験 合格力随想
保護者の方に「足のつくかつかない深さのプールが一番速く泳ぎを覚えます。水も少しは飲んだ方がいいのです。」というお話をすることがあります。何事も多少付加がかかり、ストレスを感じるぐらいの方が早く上達することの例えとしてお話しします。その付加は、時間制限であろうと問題量であろうと構わないのです。少ししんどいぐらいが成長の糧となります。先日、こんなお話を聞きました。このお話もまさにこのことの類でしょう。

お母さん曰く、『今は部活命のわが家の中学生の娘ですが、小学生時代はピアノを習っていました。その時に思ったことがあるんです。発表会の数か月前、発表会の曲を選びます。その時、先生はいつも、少し難しい曲を選んでくださいます。本人はもちろん、親の私も「えー、難しそう!」。親子共々、「たしかにかっこいい曲だけど、練習が大変そうだな~。」というのが正直なところです。でも、先生は、「だいじょうぶ、できるから!」と、きまっておしゃいます。

しかたがない(笑)ので、それから発表会まで、頑張ります。そして、先生と、本人と、親の努力の甲斐あって、発表会ではうまく弾けてよかったね、ということを何度も経験します。そして、そのたびに、確実に娘は上手になっていくのです。もし、本人と親が自由に曲を選ぶなら、もう少し楽で、その時の力で弾きこなせそうな曲にしてしまいます。実際、私がそうなんです。娘がピアノを習い始めてしばらくたってから私も弾きたくなり、習い始めましたが、始めの数回は発表会にも挑戦したものの、やはり忙しいことを理由に、ここ2年くらいは発表会にも出ず、レッスンも休みがちになっていました。そうすると、本当に、びっくりするくらい上達しないのです(笑)。とても、「習っている」とは言えないくらいの実力のままです。』と。

やはり、何かを習うということは、そして力をつけようと考えるなら、「足のつくかつかない深さのプール」がキーワードのようです。「無理だから」と言ってレベルを下げたり、現状を維持していても、力は決して伸びません。さらに、もうひとつ大切なことは、お子さんの潜在能力は、保護者の方が思っているよりも高いことが多いということです。限界は自己の意識によって生まれます。もうダメだ。これくらいと思った時点で限界は発生するのです。

もちろん、周りがあまりにも高い目標を与えすぎて、本人に本当に無理なことをさせては何にもなりません。「溺れるプール」になってしまいます。「『少し』無理め」がポイントなのです。学習に置き換えると、私が今までに見てきた子供達は、ほとんどこの「少し無理め」を、こちらが思うよりも早くクリアしていきました。だからこそ私は、「少し無理め」に直面してちょっとブルーになっている子供達にも、保護者の方にも、あえて「ではもう少し、楽なところから」とは言いたくないのです。そう言ってしまうと、その子の「できるようになる日」を、私がかえって遅らせてしまうことになりかねないからです。


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