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ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

「他愛の人」

2008年05月21日 | 中学受験 行雲流水録
ノーベルはダイナマイトの発明や、石油のパイプラインの開発で巨万の富を蓄えた人物です。けれども、彼は巨額の財産を自分や家族のために使うのではなく、人類の発展に貢献した人たちに賞金として与えることを遺言に残しました。ノーベルは後の人のために、なにかをしようと思ったのです。

先日、「ミス・ポター」という映画が公開ました。ミス・ポターとは『ピーターラビット』の絵本を描いたビアトリクス・ポターのことです。映画は彼女の生涯を描いたものです。(ただし、事実と違うところがたくさんあるようですが。)もともと彼女の家は裕福でしたが、ピーターラビットのシリーズが世界中で人気を博し、彼女は巨額の印税を得ることとなります。そのお金を使って、ポターは美しい農村風景が残るイギリス北西部の湖水地方の自然を守るため、たくさんの土地を買い上げました。その土地は自然や歴史的建造物を次の世に引き継いでいくことを目的としたナショナルトラストという団体に託され、今では国立公園の一部になっています。今日美しい湖水地方が残っているのは、ポターのおかげともいえます。

ノーベルの伝記を通じて遺言状を一度読んでみましょう。そこに脈々と流れる精神こそノーベルの遺産ともいえるでしょう。わたしも自分の家を学童保育の場所に使うよう、遺言された人を知っています。ノーベルやポターのように大金を投じて、歴史に残るようなことするのは誰にでもできるわけではありませんが、身近なところでも「後の人のためにとなにかをする」=「他愛の人」は必ず存在するのです。

高い知能を持った猿も、過去のことから何かを学んだり、自分の家族や仲間のために何かをすることはあるでしょう。でも、これからずっと後のことに思いをはせたり、地球規模の視野にたって物事を考えられるのは、人間しかいません。ただし人間が時間や空間に大きな広がりを持って考えられるようになったのは、ここ150年くらいからかもしれません。人間の思考はどんどん進化しているのです。

私はノーベルやポターのようにお金はありませんが、後の人のために自分にできることは何だろうと、ふと思った今日でした。


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