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ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

我思う、故に…

2008年02月26日 | 中学受験 合格力随想
人類の歴史が大きく変わったのは、産業革命からです。工業生産は、巨大な資本を必要としました。工業生産のフロンティアは、当時無限の広がりを持っているように見えたので、資本主義もそれに応じて無限の拡大を志向しました。しかし、工業生産は次第にそのフロンティアを埋め尽くしていきます。鉄道、自動車、住宅など、大きな資本を必要とする工業生産の需要が次々に満たされていく中で、資本主義は次第に変容していきます。今、私たちが生きているのは、その変容しつつある資本主義の世界です。そこで起こっていることは五つあります。

第一は、製造業が資本主義の牽引車である状態が終わりつつあることです。トヨタは、世界一の自動車生産企業です。しかし、その世界一は、コストの限りなき圧縮、下請けや労働者への絶えざるコストの転嫁など、きわめて苦しい状態で維持している世界一です。だから、世界第二位以下の自動車会社は、更に苦しい製造業になりつつあります。同様のことは、住宅産業についても、そのほかの製造業についても、あてはまります。

第二は、大きなフロンティアを失った工業生産が、次第に縮小しながらも新しいマーケットを作り出していることです。その新しいマーケットとは、パソコンや携帯電話などのより規模の小さい製造業であるとともに、意外に聞こえるかもしれませんが、サービス業もそうなのです。スーパーやファミリーレストランのような業界は、今どこもコスト削減に苦しんでいます。それは、それらのサービス業が実は形を変えた製造業だったためです。

第三は、戦争そのものが、製造業の一つの変化した形だということです。だから、戦争自体も次第に割の合わないものになりつつあります。戦争が軍需産業の在庫整理としての役割を果たしていた時代はまだしばらく続くとしても、次第にその効果は小さくなるでしょう。

第四は、今後、コストの心配をせずに利益を拡大できる産業は、個人の能力に依拠した小規模なものになるということです。ファミリーレストランは、どこも同じようなコスト削減で、どこも同じような味しか出せなくなっていますが、個人が経営する評判のよい料理屋は、その個人がいるかぎり繁盛します。同じことは、芸術家、作家、音楽家など、個人の能力を生かせる職業すべてについて言えます。したがって、これからの能力開発は、英数国などの主要教科の習得に5割使うとすれば、自分の持ち味を出すための学習や訓練に残りの5割を使うという形になると思います。

第五は、マネーの流れの中心が、製造業から投資や投機の世界に移っていくということです。

以上の話を比喩的に言うと、次のようなことになります。巨大な資本を持った巨人が何人かいて、昔は、その資本で道路を作ったり橋を作ったり船を作ったりして更に資本を大きくしていました。乱暴な巨人の中には、戦争をして資本を大きくした者もいました。しかし、もう作るものがなくなってきたし、戦争で壊すのも割りに合わなくなってきたので、巨人は巨人どうしで賭博を始めます。しかし、製造業は昔のパワーを失ったとは言え、まだ次々と新しいフロンティアを生み出していますから、それなりの価値はあります。言わば、製造業は金の卵を産むニワトリです。巨人の主な関心は、今は賭博になっていますが、その余力でニワトリをつかまえることも忘れていません。更に、まだ残っている余力で、巨人は芸術や文化のパトロンにもなろうとしています。

これらの巨人たちは、地球をわがもの顔に支配しているつもりで賭博に明け暮れていますが、もっと大きい宇宙的観点から見ると、実は、大きなタライの中で、マネーの波に乗ったり落ちたりしているだけなのです。今求められていることは、こうです。だれかがこのことに気づいて、タライの中の水を汲み出し、それを創造の土壌に撒き始めることです。資本主義がカジノになって終焉するのか、新しい創造の世界の土台となるのかが、これから問われてくるのです。


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