ひょうきちの疑問

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新「授業でいえない世界史」 30話 イギリスの産業革命

2019-08-25 09:44:13 | 新世界史12 18C後半~

【産業革命】
 
【産業革命の背景】 次はヨーロッパの産業革命です。まえに戦争に絡めて序盤戦を言いました。18世紀、1700年代のことです。ここから世界が近代化・機械化に入っていきます。それが最初に起こった国がイギリスです。

※ 1820年では中国の GDP シェアがトップで、ヨーロッパ各国を合わせても中国には及ばない状態です。・・・ヨーロッパは1800年以前に決定的に優位にあったわけではない。(世界史は99%経済でつくられる 宇山卓栄 育鵬社 P?)


 ではこの産業革命の前にイギリスは何をしていたか。フランスと植民地争いをしていた。それに勝ったのがイギリスです。イギリスはここで儲けるわけです。
 儲けた金を資本つまり元手として・・・・・・資本というのはお金です・・・・・・そのお金で工場を作った。
 儲け方はいろいろある。農業で儲けようという人たちは、1億円持っていたら土地を買い占める。弱小農民に「おまえたち出て行け」と言う。「オレが土地を買い占めるから」と。こういう土地の買占め行動も起こります。これを第2次囲い込みといいます。第1次はちょっと言っただけですが、200年前の1500年頃にもありました。ここでは第2次囲い込みといいます。
 そこで企業的大農場経営をやる。人を使って農業をする。そうすると、そこから追い払われた農民は、あてもなくどこに向かうか。都会に向かう。
 そうすると明日の仕事を求めて「時給1000円で働きたい」という。でも「そんなに払えない、300円なら雇ってやる」と言われるとそれで働くしかない。低賃金・長時間労働です。社長にとってはコストかからない。だから儲かる。こういう社会構造ができる。

 それがイギリスの産業革命に結びついていきます。
 あとお金の問題もあります。イギリスはヨーロッパで初めて、お金がなくても紙をお金にすることに成功した国です。印刷すればいい。そこに国家と結びついた銀行つまりイングランド銀行ができる。この銀行はこの名誉革命直後の1694年に成立し、産業革命が始まる約60年前にはできていた。どうも怪しいという噂があったけど、国が合法化してしまった。こういうこととも絡みます。



【生産技術】 次に何を作り出すか。イギリスが欲しかったのは綿です。ヨーロッパに綿はありません。ヨーロッパ人は毛織物しか着なかった。だから臭いんです。洗えないです。でもインド人は綿を着ている。着心地がいいし洗えるし、清潔だった。「オレたちもつくりたい」と。
 それが綿織物工業です。しかもそれを機械化して安く作ることができた。しかも低コストで。人件費も安い。時給300円でいいんだから。そして綿織物を安く、本場のインドに売り込むんです。こうやって儲けていく。綿織物を自国で作り出す。もともと綿というのはインド綿です。

 どういうふうにして機械化に成功していったか。織物はもともとは農家の奥さんの暇な時の副業だった。手でずっと、縦糸に横糸を通して、いちいち織っていかないといけなかった。
 まず1733年、飛び杼(ひ)が発明されます。機織りというのは、基本的には何百本もの縦糸に、手で横糸を通していくんです。これを手で横糸を通していくのではなくて、それをロケットみたいな、ピュッ、ピュッと走る道具を発明する。たったそれだけです。これで大きく変わる。これが飛び杼です。手でいちいち横糸を通す手間がなくなる。
 次にはその手間さえ機械がやる。どちらとも機械でやると、人間は糸が切れないように見張っておくだけでいい。労働効率は人間の手作業とは比べものにならないほど効率化されていく。

 その前に紡績という糸をつくる作業があります。まず木綿というのはワタなんです。綿花というのは、花がふわふわです。これを細くグルグル巻いて糸にしていく。この作業がある。これを紡績という。糸を紡(つむ)ぐことです。この機械技術が生まれたのが1763年。これが自動化されていく。イギリスの産業革命は1760年代です。


教材 産業革命 その1 インドからイギリス



 産業革命の起こる1760年頃は・・・・・・さっきプロシアのところで言った・・・・・・イギリスが七年戦争で勝って、アメリカ植民地を手に入れたころです。それが1760年頃です。正確には1763年のパリ条約です。七年戦争に勝ったのとほぼ同時に、産業革命がイギリスで始まっていく。
 次には1769年に、動力がないから山の水のエネルギーを使う水力紡績機ができる。最終的には蒸気で回すようになる。
 アークライトという人は一介の床屋さんで字も読めない。しかし発明に没頭して、嫁さんが逃げてしまう。字が読めなくても発明はできる。

 しかし本当に欲しかったのは、この糸そのものではなくて、縦糸・横糸を織って布にすることです。ここまで行かないと布にはならない。
 縦糸・横糸を織って布になる。これを自分の国で作ることに成功した。これでイギリスの綿布の製造力が一気に50倍になる。それでインド産綿織物を凌駕する。
 さらに技術が発展していって・・・・・・ミュール紡績機とかもありますが・・・・・・1785年のポイントは力織機の発明です。「力持ちの機織り機」みたいな言い方ですけど、そうではなくて「力」の意味は「自動」ということです。つまり機械化された。これが力織機です。人力じゃないというところがポイントです。これが1785年。

 もうそろそろフランス革命がおこるころです。ナポレオンが出てくる時代です。綿糸つまり糸を、縦糸・横糸を織って、綿布つまり織物にすることに成功していく。これが最終製品です。目標はこれです。
 そうなって生産力が10年間で50倍に高まると、逆に綿花が不足する。それをどこから手に入れるか。
 アメリカではアフリカから黒人奴隷を連れてきて綿花畑で働かせている。アメリカで黒人奴隷に綿花栽培させています。アメリカの奴隷農場から綿花を輸入する。これが綿織物の原料です。こんなふわふわした綿花を、糸にして、さらにその糸を織って布にしていく。たかが布じゃないか? しかしこれが世の中を変えていきます。

【フリーメイソン】
※ 実際にフリーメーソン運動が普及するのは、18世紀も後半になってからである。・・・・・・1717年ロンドンでグランド・ロッジが創設されてから30年ほどのあいだに、ヨーロッパ全土に同一の信条と儀礼をもつ結社の一大ネットワークが完成したのである。(フリーメイソン 吉村正和 講談社現代新書 P52)

【フランスのフリーメイソン】
※ (フランスでは)1756年にはド・クレルモン伯爵をグランド・マスターとして、グランド・ロッジ(グラン・ロージェ・ナショナル)が創設される。・・・・・・さらに1773年には、グランド・ロッジの廃止とグラン・トリアンの創設が決定される。グラン・トリアンの創設は、フランスのフリーメイソンのイギリスからの独立を意味するものであった。イギリスのグランド・ロッジが神の存在と魂の不滅性を大前提としていたのに対して、グラン・トリアンはその前提を否定し、さらに急進的な無神論的結社となっていく。オリアン(東)は、太陽の昇る方向として「光」を意味する。(フリーメイソン 吉村正和 講談社現代新書 P44)

【ドイツのフリーメイソン】
※ (ドイツで)1775年、マイヤー・アムシェル・ロスチャイルドがドイツの名門貴族ヘッセン家のヴィルヘルム9世と古銭業を通じて知り合い、その財産運用を任されます。当時はアメリカ独立戦争の最中であり、ヘッセン家は、独立戦争を鎮圧するための傭兵をドイツで鍛えてイギリス政府に貸し出すというビジネスをしており、個人としてはヨーロッパ最大の資産家でした。このヘッセン家の資産が、のちにロスチャイルドがのし上がる種銭となります。(金融の仕組みは全部ロスチャイルドが作った 安部芳裕 徳間書店 P89)

※ ドイツのフリーメイソン史は、1770年代に極めて特異な結社を生む。インゴルシュタット大学の教会法教授アダム・ヴァイスハウプトが1776年にバイエルンで創設した啓明結社(啓蒙結社=イルミナティ)である。ヴァイスハウプトは1777年にみずからフリーメイソンに加入し、啓明結社をフリーメイソンの組織と運営を模して再編する。(フリーメイソン 吉村正和 講談社現代新書 P48)

※ (ドイツでは)教会法の教授で、かつてイエズス会士に教育されたアダム・ヴァイスハウプトは、インゴルシュタット大学で教えるかたわら、キリスト教思想を離れ、サタンのイデオロギーに帰依した。1770年になると(ロスチャイルド商会を設立したばかりの)金貸し業者がヴァイスハウプトを雇い、サタンのシナゴーグに世界の最終支配権を与えて社会変革を起こしてのち、サタン的独裁支配を実施してサタンのイデオロギーを自らの民族以外のすべての人々に課すことを目論んだ大昔の「プロトコール」を時代にふさわしいものに改訂させた。この仕事をヴァイスハウプトは1776年5月1日に完成させた。(闇の世界史 ウィリアム・G・カー 成甲書房 P26)

※ (ドイツで)1776年、ヴァイスハウプトはイルミナティを組織して目論みを実行に移した。イルミナティという言葉はサタンに由来し、「光を掲げる者」を意味している。その目的は、知的能力を実証された人々が世界を治められるよう、世界単一政府を生みだすことであると嘘をついて、彼は、美術、文学、教育、さらにはさまざまな科学、財政、産業の分野でもっとも聡明な人々を含む2000人ほどの信望者を集めた。そしてその後、大東社ロッジを創設すると、それを秘密本部とした。(闇の世界史 ウィリアム・G・カー 成甲書房 P27)




【交通革命】 さらに動力です。この綿織機の技術にプラスして、また別のところから発明が加わります。湯を沸かす茶釜の蓋が、ボコボコ、パタンパタンするのを見て、ふと思いつく。「アッ、これ人間の代わりにこの力を利用できるぞ」と。やっぱり天才的な発明です。
 私だったら茶釜がパカパカいっても、うるさいと頭にくるだけですけどね。これをエネルギーに変えられる。これが蒸気機関です。その上下運動をどうやって円運動にするか。一種の回転するモーターみたいになっていく。そういう改良をしたのがワットです。1769年です。

 この頃になるともう産業革命が始まっています。そうすると今度は蒸気機関の機械を作る必要がある。機械は何でできるか。鉄です。その鉄をつくるためには石炭と鉄鉱石が必要です。こうやって産業分野が広がっていく。これが産業革命です。
 鉄ができたら、大急ぎで蒸気機関ができる。その技術が結びついて「今度は人を乗せて走ろう。石炭を乗せて運ぼう」、いわゆる蒸気機関車ができる。これがスティーブンソンです。それを走らせるには鉄道のレールを敷かないといけない。ますますがいる。

 次の1800年代に入ると10年ちょっとで、イギリスのマンチェスター・リヴァプール間・・・・・・博多~北九州間ぐらいかな・・・・・・そこを人が引っ張らなくても、鉄が勝手に走る。驚きだったと思います。そんなもの誰も見たことがないんだから。そうやって鉄道が開通する。歩いて行くところを、人間はこれに乗って座っているだけで移動できる。これが1830年です。
 その頃になると近代社会に片足は十分踏み込んでいる。あとは応用です。船でもこの蒸気機関を使って、最初は船の両脇に車輪のようなモノをガラガラ回して漕いでいく。そういう蒸気船ができる。イギリスは海賊の国です。まずこれを戦争に取り入れる。それで海軍が強くなる。次々にこうやってイギリスに連鎖反応がおこっていく。



【資本主義社会の成立】
 
【資本主義】 資本主義社会の成立についてです。こうして産業が発展していくと、同時に問題が発生していく。「こうして金持ちになるのは社長だけ」ということです。
 逆に、機械で大量生産できるようになった分、今まで手作業でやっていた職人さんの職が奪われていく。肥え太る人間がいる一方で、没落していく人間もいる。金持ちになる人間と貧乏になっていく人間、2通りに分かれる。



【都市と労働者】 社長になる人つまりお金を持っている人、こういう人をブルジョワジーという。語源的には、ブルジョワというのはブルクつまりお城の中に住んでいるお金持ちのイメージです。この時には金持ちとは社長のことです。
 それに対して、農村を追われて当てもなく都会に出て明日の飯にも困り「頼みますから時給300円ででも雇ってください、何でもしますから」という労働者をプロレタリアートという。これが漢字でいうと「資本家」と「労働者」です。
  
 経済学的に簡単にいうと、人間にはこの2種類しかない。男と女は関係ない。大人と子供も関係ない。資本主義の論理でいうと、人間には、資本家と労働者、つまり金持ちと貧乏人、社長と使用人、この2種類です。そういう考え方をするのが資本主義です。でも人間には男と女があり、大人と子供があります。それをどうするかは謎です。

 こういった中で、金持ちが都市に住み、その都市が成長していく。まずイギリスで。一番の都市になったのは、もともと鄙(ひな)びた田舎の港町だったのですが、その港町が何を商品として扱っていたか。アフリカの奴隷なんです。その港の田舎商人たちが奴隷貿易でがっぽり儲けた。つまり奴隷商人です。これがリヴァプールです。そう言えばビートルズはここの出身でしたね。
 そうやってお金を儲けた商人たちが、その町の裏手に工場を作り出した。そこで新しい工場地帯ができた。これがマンチェスターです。マンチェスターとリヴァプールは隣同士です。
 これをつなぐ目に見えない動きは、奴隷貿易です。奴隷貿易で稼いだ富を、マンチェスターの工場ににつぎ込む。だからさっき言った世界初の鉄道もマンチェスターとリヴァプールの間を結んだんです。
 ではその繁栄するマンチェスターの一方で、高級住宅に住んでいるのは社長だけです。貧しい労働者は、トタンぶきの屋根のような、衛生状態が悪いスラムに住む。

 日本にも明治の初めにはスラムがありました。東南アジアには今でもあります。高層ビル街の1~2キロ郊外に出ると、そういった貧しい人たちがトタン葺きの屋根みたいなところに50人ぐらいザゴ寝で寝泊まりしてる。そういったスラム街がある。
 そこから労働問題が発生してきます。「何だ、いい目を見ているのは、金持ちだけじゃないか、オレたちは農村に住んでいた頃がよっぽどよかった。しかも低賃金・長時間労働。子供まで働かせる。これっておかしくないか」と。
 そこで貧しい労働者は、自分たちの組合をつくりだす。労働者のグループです。労働組合の結成に動き出す。これが社会主義運動にも結びついていきます。

 こういう非常に激しい貧富の差が、産業革命期には発生したんです。なぜか「お金はお金のあるところに集まる」、お金の習性は恐いものです。塩は水に溶かすと拡散するけど、お金はお金のあるところに集まって拡散しない。これをほっておくと大変なことになる。ではこれをどうやって拡散させるか。それは人間の力でやるしかないでしょう。お金を発明しそれを使い始めた人間は、最後までお金の面倒を見るべきだと思います。お金のいいとこ取りは社会的なマイナスです。
 このどうやって富を分散させるかという考え方が、社会主義思想に繋がるんです。このあと100年間は。ただ我々は21世紀に生きているから、結論は知っています。社会主義思想は失敗したんです。ソ連が崩壊して。
 では資本主義が正しかったかというと、ソ連が崩壊した後、世界的にまた貧富の差が拡大している。「なんだ19世紀といっしょじゃないか」ということです。ではどうするか。まだ謎ですね。残念ながら、たぶん私の世代では間に合わない。君たちの時代にどうもピークが来そうです。人間社会の矛盾は人間が考える以外にないんですよ。



【世界の工場】 世界の工場となったのは、一番乗りはやっぱりイギリスです。強い、安い、大量生産です。
 この時代は株式会社が禁止されていて、会社といっても規模はまだ小さいものです。会社はカンパニーといって、個人でやるか、共同でやるとしても仲間を集めてやるくらいで、のちの株式会社のように不特定多数の人間から資金を集めて、大規模経営を行うようなことはありませんし、大規模な独占企業が出てくることもありません。株式が広く売買されることもなく、株の暴落も起こりません。その点で19世紀後半からの資本主義とは違うのですが、それでも貧富の差の拡大は起こります。それはこの大量生産をもたらす機械工業が従来の職人技による手工業を破壊していったからです。それを代償として機械工業は発展していきます。

【株式会社禁止】
 1720年に泡沫会社禁止条例が制定され、7名以上の出資者からなる株式会社は、議会の承認、あるいは国王の勅許が必要とされることになった。事実上1825年に同条例が廃止されるまで、イギリスでは株式会社の設立が不可能になる。イギリスの産業革命は、株式会社の設立が不可能な状態の下で始まるのである。(知っておきたいお金の世界史 宮崎正勝 角川ソフィア文庫 P72)


 産業革命に成功したイギリスは、外国と貿易する時に必ず自由貿易を主張する。そして「これで世の中うまくいく」という。しかしそれは「ウソ」ですよ。

 すでにタルムード(ユダヤ教の聖典)の中で・・・・・・中世のすべてのキリスト教の法とは全くもって異質な、営業の自由や、自由貿易の考え方が、展開されているという事実そのものが、きわめて重要である。(ユダヤ人と経済生活 ヴェルナー・ゾンバルト 荒地出版社 P379)



 アメリカも第二次大戦後ずっと自由貿易を唱えてきた。でも1世紀以上前のこの時代にはアメリカはイギリスに比べて弱いから「保護貿易がいい」と言っていた。
 ところが戦後70年経って、アメリカの自由貿易がうまくいかなくなり、大統領が代わって今のトランプさんになると、また保護貿易に変わってきている。
 輸入品に関税をかけようとしている。今、関税が高くなろうとしています。撤廃するどころか。私が子供の頃から50年間も60年間も念仏のように言ってきた自由貿易が、去年あたりから変わろうとしています。関税を引き上げようとしています。
 「アメリカ製品が売れないから、輸入品の関税を引き上げよう」という。すると生産力に勝る中国が「何でだ。今まで自由主義がいいと言っていたじゃないか」と反対する。それと同じです。強いところは自由貿易が好きです。

 この頃のイギリスには「自由貿易、自由主義でいいんだ」という経済学者の走りみたいな人が出てくる。アダム=スミスという人です。1776年・・・・・・この年はアメリカの独立戦争が勃発した年と同じですが・・・・・・彼が「国富論」を書きます。「政治・経済」でもよく出てくる人です。

 一言でいうと彼は「自由競争、世の中それでいいんだ。見えざる手があって、世の中をまとめてくれる」という。しかし「見えざる手」とは何か。アダム=スミスが例として上げているのは、需要と供給の関係で価格が調整されるというものです。しかしそれだけのことで、他には何も具体的なものはない。
 キリスト教には予定調和説というのがあって、「神を信じれていれば、世の中は自然とうまくまとまる」という信仰があります。発想的にはその信仰と同じです。非常に宗教っぽい話です。

 こういうイギリスの自由貿易に対して、出遅れた国、ドイツとかフランスとかは・・・・・・日本もこれに入りますが・・・・・・「保護貿易にして、輸入品には関税かけよう」という。「そうでないと国中がイギリス製品だらけになってしまって、国内工業が育つ暇がないどころか、潰されてしまう」という。

 一言でいうと「自分の国の産業をイギリス製品から守らないと、国は豊かにならない」ということです。これははっきり結論が出ていない。どっちが正しいかというのは論争が続いています。

 ただ言えることは、強い国は必ず自由主義貿易です。これは一貫している。イギリスが強かったときもそうだったし、アメリカが強かった時もそうだった。実は現在の日本もそうです。日本は輸出国家だから、自由貿易が好きです。

 しかし日本の農業はどうか。別に「日本の農業が弱い」とは言っていません。ただ100ヘクタール持つアメリカの農家と、1ヘクタール持つ日本の農家が、同じ土俵で戦えという前提がおかしい。前提条件が違う。
 そこに自由競争を持ち込めば、日本の農業が負けるに決まっている。ただでさえ日本の食糧自給率は先進国中最低です。それをどう抑えるか。自由貿易にはいろいろ問題があります。
 保護貿易を唱えてイギリスに早く追いつこうとする国が、次のフランス、ドイツ、それに海の向こうのアメリカです。さらに20世紀、1900年代ぐらいになるとロシアが出てきて、ロシアと同じころに日本も資本主義の仲間入りをします。明治維新後の日本です。これらの国々が次々に産業革命を達成していきます。



【世界の構造化】 ただ19世紀、1800年代を見ると・・・・・・今の21世紀の世界の中心がアメリカであるとすれば・・・・・・世界の中心はイギリスです。
 それに続く国が、イギリス以外のヨーロッパです。アジアの中ではまだ日本だけです。そういった国が「原料を買いたい。大量生産で売れ残ったのを売りたい。売りさばかないとお金にならない」、そういうことを求めて植民地・・・・・・ラテンアメリカやアジアなど・・・・・・を獲得していく。
 人口が多いのはこのアジアですが、特に不幸になっていったのはアフリカで、簡単に植民地にされます。アジアもそうですけど。目的は売りつける製品市場、つまり売る場所を求めるわけです。すでに植民地から一方的原料を求めるのは当たり前になっています。こうやってどんどん収奪されていきます。

 どうやって、どこに何を売るか。

 イギリス中心に工業製品を売りつけます。
 逆に輸入したのがインドの綿花。アメリカからも綿花。北米からは綿花です。
 カリブ海地方からは紅茶に入れる砂糖です。たかが砂糖とバカにしたらいけない。
 さらに中国からはお茶です。このお茶に砂糖を入れる。
 さらにもう一つあります。何を売りつけたか。イギリスがインドで栽培した麻薬です。アヘンです。これを中国に売りつけるんです。そのためにアヘン戦争を起こします。これはあとで言います。

 次に見るフランス革命の最中に、イギリスではこんなことが進行しています。イギリスはフランス革命の英雄ナポレオンを潰して、世界の中心になっていきます。

 教科書ではそのことが非常にわかりにくく書かれていますので、フランス革命よりもイギリスの動きに要注意です。
 終わります。ではまた。


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