ひょうきちの疑問

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新「授業でいえない世界史」 9話の5 古代オリエント ハンムラビ法典

2020-04-29 07:09:04 | 新世界史4 古代オリエント

【ハンムラビ法典】 ハンムラビ王は法律を作った。世界初ではないですが、非常に早い法律です。これをハンムラビ法典と言います。

※ ハムラビ法典前文からも、正義の確立というイデオロギーを読みとることができる。・・・・・・すなわちハムラビは「国土に正義を顕現させるべく、邪悪なる人、悪人を滅ぼすべく、強き人が弱き人を虐げることをふせぐべく」、アンエンリル神によって任されたというのである。
 「国土の人びとを正しく導き、正しい行動を学ばせるべくマルドゥク神が我に命じたとき
、我は国土に真理と正義を確立し、人々に安寧をもたらした」。(世界の歴史1 人類の起源と古代オリエント 大貫良夫他 中央公論社 P212)
 
 

 しかしこのことは、法によって正義が確立されたというよりも、法を制定しなければならないほど社会の混乱があったととらえたほうがいい。法は制定する必要があってはじめて生まれるものだからです。法が解決の対象としているいろいろな社会的トラブルがすでに発生していたのです。

※【精神的危機の発生】 
※ 悪人どもははびこり、祈りはかなえられない。神々は人間の事柄に無関心であると思われる。前二千年紀以降、同じような精神的危機が他の地域(エジプト、イスラエル、イラン、インド、ギリシャ)でも生じた。(世界宗教史1 ミルチア・エリアーデ ちくま学芸文庫 P129)

※【利息】

※ 都市が自立性を持ち民族の交流が盛んなメソポタミアでは古くから交易が発達し、都市の神殿が利子を取って「お金」の貸し付けを行っていた。(知っておきたいお金の世界史 宮崎正勝 角川ソフィア文庫 P14)

※ ハンムラビ法典の第89条は、銀を貸したときの最大利息を2割と規定している。(知っておきたいお金の世界史 宮崎正勝 角川ソフィア文庫 P14)

※ ハンムラビ法典では、大麦を貸したときの利子は年33%とされ、奴隷の価値も銀の重量単位のシュケルで表示された。(知っておきたいお金の世界史 宮崎正勝 角川ソフィア文庫 P14)


※【悪からつくられた人間】
※ (バビロニア神話を記した「エヌマ・エリシュ」では)、(対立する神である)ティアマトは・・・・・・「最初に生んだ神々のなかから・・・・・・キングをとりたてた」。ティアマトはキングの胸に運命の板をつけ、至高の権力を授けた。これらの準備をみて、若い神たちは勇気を失った。アヌもエアも、キングにたち向かおうとしない。この戦いを受けてたつのはマルドゥクのみであった。その際、彼はあらかじめ至高神として公認されることを条件にしたのであるが、他の神々はすぐさま承認した。二つの軍勢のあいだに戦われた戦闘は、ティアマトとマルドゥクの決闘によって決まった。・・・・・・最後に彼(マルドゥク)はティアマトのところにもどり、頭骨を打ち砕き、死体を「干し魚」のように二つに切り裂き、半分は空に張りめぐらし、残りの半分はとした。・・・・・・
 最後に、マルドゥクは、「神々に仕えさせ、神々を休息させるために」人間を創ろうと考えた。・・・・・・だれか「戦争をあおり、ティアマトをそそのかして反逆させ、戦いを始めたのか」とたずねられると、皆、異口同音に一つの名「キング」をあげた。そこで、(マルドゥクとの戦いに敗れた)キングの血管は切り裂かれ、エアはその血で人類を創った。・・・・・・若き勝利者マルドゥクをたたえるために、原初期の神々、なかでもティアマトは「悪魔的」諸価値を与えられている。ティアマトは、もはやたんに天地創造に先立つ原初の混沌的全体なのではなく、最後に無数の怪物を生み出す神であることがあきらかになる。・・・・・・言いかえれば、「原初的なるもの」そのものが、「否定的創造物」の源泉として示されている。マルドゥクが天地を形成したのは(マルドゥクが殺した)ティアマトの死体からであった。・・・・・・キングは原初の神のひとつであったにもかかわらず、ティアマトが創った怪物と悪魔の軍勢の指揮官、大悪魔となっているのである。それゆえに、人間はキングの血という悪魔的物質で創られている。シュメール版との差異は重大である。人間はその起源によって、すでに断罪されていると思われるので、悲観的ペシミズムについて語ることが可能である。・・・・・・バビロンでは「エヌマ・エリシュ」は新年祭の4日目に神殿で朗誦された。(世界宗教史1 ミルチア・エリアーデ ちくま学芸文庫 P115)



 このハンムラビ法典の石碑には、法律の条文だけではなく、この決まりをハンムラビ王がバビロンの都市神マルドゥクから受け取る絵が描かれていました。こうやって王権は神から与えられたのです。そう信じられたのです。

▼ ハンムラビ法典 高さ約2m  
左の立っているのがハンムラビ王、右の座っているのが神



※ (ハムラビ法典の)石碑上部には、ハムラビがバビロンのマルドゥク神から王権を象徴する棒と縄を与えられている情景が描かれている。(世界の歴史1 人類の起源と古代オリエント 大貫良夫他 中央公論社 P210)
(●筆者注) この神をマルドゥクではなく、石碑の置かれたシャマシュ神殿のシャマシュとしている本もあります。ここでは神の違いではなく、神から王権が与えられたということが重要です。


 この法律の原則は何か。相手から被害を受けたら、その加害者にも同じ被害を与えてよい。目を潰されたら相手の目を潰してよい。歯を折られたら相手の歯を折ってよい。これをもっと縮めて「目には目を、歯に歯を」といいます。今こんなことしたら、両方とも傷害罪で刑務所行きですが。
 しかし法律の原則はここに記されています。まずはこれです。殺されたら殺してよい。憎しみのあまり「倍返し」なんかしたらいけない。これで「おあいこ」です。おあいこのことを難しく言うと同害復讐と言います。「倍返し」はダメです。

 この時代はお巡りさんがいない。裁判所がない。それでどうやって悪いことをしないようにするかが問題になる。そのルールが同害復讐です。
 黙っていると悪ははびこるんです。「それをどうやって防ぐか」が人間の知恵なんです。目をつぶされたら相手の目をつぶしていい。これが正しいと決まったら、次はどうなるか。目をつぶさなくなる。こうやって正義を保つ。

※【奴隷】

※ 階級社会の刑法は一般に身分差にしたがって刑罰がことなるのがふつうであった。・・・・・・当時の社会が、貴族、平民、奴隷という三つからなる階級社会だったことはあきらかである。・・・・・・
 奴隷といっても、たとえば奴隷制度の発達したローマ帝国などの、おびただしい数の奴隷を想像してはまちがいである。それにまた、その奴隷も、ローマ帝国の奴隷のように、無制限に過酷な搾取と虐待を受けていたわけではないことも注意しておく必要があるだろう。・・・・・・法の保護が奴隷たちにもちゃんとゆきわたっていたことを意味している。・・・・・・
 もとはといえば、戦争のときの捕虜が奴隷たちの最大の供給源であったようだ。・・・・・・となり近所の地方へ出かけて奴隷たちを輸入する、いわゆる奴隷商人の活躍もなかなかさかんであった。かれらの中には債務奴隷、つまり借財のために自分から身を売って奴隷になったものもいたけれども、こういったばあいについては、終身奴隷にはならなかったようである。(世界の歴史2 古代オリエント 岸本通夫他 河出書房新社 P97~101)


 敵のエラム人はここを攻めたとき、このような強い王権を与えるほどの強い神が気にくわなかった。だからいっしょに神を殺す必要があった。だからエラム人は、ハムラビ法典の石碑もろとも持ち去った。
 このハムラビ法典が書かれた石碑は、1902年にフランス人がこれを発見したときにはバビロンから約400キロも離れたスサという場所で・・・・・・のちのアケメネス朝ペルシャの首都ですが・・・・・・ここで発見されました。
 これはバビロン第一王朝が滅んだとき・・・・・・滅ぼしたのはカッシートですが・・・・・・これはカッシートを滅ぼしたエラム人が、ハンムラビ法典の石碑を持ち去ったからです。

※ (ハムラビ法典の)石碑は、もともとシッパル(都市)のシャマシュ神殿におかれていたと思われるが、前12世紀にエラム王が戦利品として持ちさっていたのである。(世界の歴史1 人類の起源と古代オリエント 大貫良夫 中央公論社 P209)


 こうやって神は殺されます。国が滅ぶとき、こうして神も死にます。逆にいうと民族を殺すには、その神を殺せばいい。神を失った人間が、どう生きるのかという問題は非常に大事なことです。
 戦争に負ける神は、頼りにならない神です。そんな神は当てにならない。負けた側はもっと強い神が欲しくなる。そういう強い神がだんだんと生まれていきます。このような戦争絶え間ない地域では、神の姿はだんだんと強い神へと姿を変えていきます。

※【殺される神】

※ 未開の諸民族は、彼らの神々が彼らに勝利と幸運と安楽を提供する義務を果たさなかった場合、彼らの神々を排除するのを慣習としていた。それどころか神々を処刑することすら慣習としていた。 王たちはいつの世にあっても神々と同じように取り扱われてきた。この太古における王と神の同一性は、両者が共通の根から生じてきた事実を明瞭に示している。(モーセと一神教 フロイト著 ちくま学芸文庫 P188)

※ 古代の戦争も、国と国、民族と民族、軍隊と軍隊の戦いである。しかし古代の戦争には、神と神の戦いとしての意味もあった。戦争に負けて、国や民族が滅びると、そこで崇拝されていた神も死ぬ
 このことは戦争での勝利という「人の側の要求」について、神は当てにならない、頼りにならないということを意味する。つまりこの神は、いわば駄目な神である。そのことが戦争の敗北・民族の滅亡という動かしようもない厳然たる事実によって、証明されてしまったのである。(一神教の誕生 加藤隆著 講談社現代新書  P60)

※【殺されるシャーマン】

※ (アメリカ・インディアンの)ナッチェス族の精神的な生活は、シャーマンが担当した。・・・・・・病気がなおると多額の礼をしたが、病人が死ぬと患者の親類がシャーマンを殺すことになっていた。・・・・・・晴天担当のシャーマンは、屋根の上にあがって雨を追い払う努力をした。雨が降らなかったり、よい天気にならなかったりすると、それぞれ失敗したシャーマンが殺されることになっていた。(アメリカ・インディアン 青木晴夫 講談社現代新書 P55)

※ 「魏志倭人伝」に、中国へ行くヤマタイの船には、髪の毛を切らず櫛もいれない男が一人ずつ乗っていて、船に何かが起こると殺されたという記事があるが、これは航海安全の責任を負わされたシャーマンであったのではないかと思われる。担当の船に事故が起こるとヤマタイのシャーマンが、殺されたと同様に、アメリカ・インディアンのシャーマンが、頼まれた病気が治せなかったり、不漁であったりした時に、たどらなければならなかった運命も、まったく同じ死であった。(アメリカ・インディアン 青木晴夫 講談社現代新書 P123)

※ (アメリカ・インディアンのクリーク族は)戦争中に形勢が悪くなって、タスタナギ(武官の最高位の者)が敵の手中に落ちそうになると、近くの味方の兵隊が彼を殺し、頭の皮をはぎとった。そして退却し、会議を開いて後任を決めた。反対に戦争が勝利に終わって無事帰ってくると、みなタスタナギの着ていたものをはぎとって、ズタズタに切りきざみ、お守りとしてみなが分けて取ったそうである。こういったタスタナギに対する処置も、インディアンの霊に対する考えから出ている。タスタナギは、その町の兵士たちの霊力の最高司令官である。だからその霊の統制力が敵の手に渡る前に、タスタナギを殺して霊的敗北を阻止しなくてはいけない。それを保証するためには霊の宿る場所の象徴である、頭の皮をはぎとる必要がある。また逆に戦争で勝利をおさめた時には、敵にうち勝ったタスタナギの霊力にあやかるため、彼の衣服を切り分けて持つ。(アメリカ・インディアン 青木晴夫 講談社現代新書 P72)
 


 もともとメソポタミアは多神教でした。都市ごとに守護神がいて、はその神を祭る最高の神官でもありました。しかし都市同士が戦い合い、次第に大きな国家を形成すると、戦いに勝った民族の神が最高神になっていきます。
 そういう点ではすでに一神教的要素があります。しかしこの時にはまだ、一神教のように
他の神を排除することはありませんでした。

 彼らは、前1595年頃、いまのトルコにあったヒッタイトと戦って敗れます。彼らヒッタイトは、それまでのセム系ではなく、北方から南下してきたインド・ヨーロッパ語族の白人です。インドのアーリア人と同じですね。いまのヨーロッパ人とも同じです。
 これがケンカ強い。をもってるからです。木剣と鉄剣といったら、鉄もってるのが断然強いですよね。それから馬に戦車をひかせて戦います。ヒッタイトはこの2つを持っている。

続く。


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