赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

イスラエルvs イラン―イランの本音 

2024-04-24 00:00:00 | 政治見解



イスラエルvs イラン―イランの本音 :240424情報


昨日は『中東紛争の裏事情 イランーイスラエルを巡る米中露の思惑』でをお届けしましたが、今日はイランの本気度について、国際政治学者の解説を掲載します。4月16日の収録です。


4月13日の夜にイランがイスラエルに対して大攻撃を仕掛けました。爆弾を積んだドローン170機が弾道ミサイル120発、巡航ミサイル30発を発射したそうです。すわ、中東大戦争だと思ったのですが、イスラエルが高度な防空システム「アイアンドーム」で飛来してきたミサイルとドローンを撃ち落としました。結果的にほぼ全てが迎撃されたということで、なかなか見事な迎撃ぶりだったのです。

しかし、これには裏があってウォールストリートジャーナルは「イスラエルのイラン攻撃撃退、アメリカはアラブ諸国の支援あってこそ」という記事を載せています。これによるとサウジやアラブ首長国連邦などの国は、事前にイスラエルやアメリカに対して「いつかこういう攻撃が来る」という情報を掴んで流してくれたそうです。それで非常にパーフェクトと言ってもいい迎撃態勢がとれました。

それは結構なことですけど、何故そのようなことができたのかと言うと、これはイランがあえて情報をリークしたからです。イランがあえてサウジやUAEにも情報をリークしていて、そうすれば彼らは必ずアメリカやイスラエルに知らせるということがわかっていました。それを前提にリークしたということです。

この辺りは中東情勢のことや戦略問題がわかっていないと理解しにくいと思いますので詳しく説明します。

イラン側の今の指導部はイスラエルと、全面的な大戦争はしたくないのです。仮にやってしまっても、イスラエルに大打撃を与えることはできるでしょう。しかし、そうなった場合は現在のイランの政権体制が崩れてしまって、国家崩壊してしまう危険があります。しかも経済的にも軟弱で、現政権に対する国民の怨嗟の声も非常に大きいのです。これも力を押さえつけているという気がします。

経済の方が崩れ始めてきていて、イランはレアルというお金の単位を使っているのですけど、2018年に1ドル4万レアルだったのが、最近は1ドル65万レアルとなっていて大暴落を引き起こしているのです。このようなひどい状況で戦争をやってしまったら、経済崩壊も去ることながら政権崩壊では済まずに体制崩壊・国家崩壊になってしまいます。

しかし、自分のところの革命防衛隊の重要人物が殺されたから報復はしないといけません。そうしないとイランの国家としてのメンツが立たないです。それで初めて、イランもイスラエルに直接ミサイルを撃ち込みました。今まで代理組織のハマスやヒズボラなどを使ってやっていたのが直接やったのです。あるいはフーシ派を使ってやっていたのですが、直接イスラエルと対立するという体制に初めてなりました。

そこで一歩踏み込んだわけですが、イランも大戦争はしたくないのです。イスラエル側に大打撃が出てイスラエルが本気で反撃してくると困るので、事前に情報をリークしておいて、アメリカ側から伝わるようにしておいた上で、イランは自分のメンツを保つために攻撃をしました。いわゆる「大人の対応をした」ということです。これに対してイスラエル側も「お互い様」という大人の対応をしてくれたら、中東大戦争は避けられたことになります。

しかし、イスラエルのネタニヤフ政権は国内での人気はないのですが、戦時内閣なのでネタニヤフ首相を引きずり下ろすことは中々できません。ネタニヤフとしては、次の総選挙をやられたら自分が首相の座から引きずり下ろされて、下手をすると汚職問題も出てきて牢屋行きとなってしまいます。そういう人なので彼は強硬策をとりたいのです。

しかし、イスラエルはそれで国論が一致しているわけではありません。私はイスラエルも自制的な態度をとると思いますが、それが確定ではないということです。


ガザ地区南部に対する侵攻はやるのではないでしょうか。そのやり方も問題になってきます。

そこでイラン側とすれば大人の対応をとったけど、イスラエル側がどのように出るかということです。しかし、大きな山はここで越えられたのではないかなと私は考えています。イラン側のメッセージを見ますと「これ以上はやりたくない。限定的な攻撃をやった」と言っているのです。一応イランもそれなりの実力は見せました。

イランが撃ち込んだ30発のミサイルのうちの1発の巡航ミサイルが、イスラエルのネバティム空軍基地の攻撃を成功させています。これはイスラエルが三つ持っている大きな空軍基地のうちの一つです。そこに着弾して滑走路なども使えない状態になっているのではないかと思いますので、それなりにイランも本気を出せばダメージを与えられるという実力が示せたと思います。

なぜ無人機170機、弾道ミサイル120発、巡航ミサイル30発という数字が出てきたかと言うと、初めにわざとゆっくり飛んでいる無人機をどんどん飛ばすのです。それでイスラエルが持っている迎撃用ミサイルの囮にします。それをどんどん使わせてしまって、隙のあるところで弾道ミサイルを撃ち込んで、最後に低空を飛んでいく巡航ミサイルで、きちんと敵のターゲットに当たるようになっています。



今回、イランは軍事目標に対して攻撃を仕掛けて死者も出ていますけど、民間人が住んでいるようなところに対して攻撃を意図的には仕掛けていません。その辺りが限定的だとイラン側が言っているところです。そのアイアンドーム潰しの方法は我々なりに持っているということも示したと言って良いでしょう。

このメッセージをイスラエルが正確に読めば、優れたストラテジスト(投資戦略を立案する専門家)が沢山いる国ですから、それにネタニヤフ首相が従ってくれたら、これで急に上がったテンションも徐々に下がっていくでしょう。そして、中東大戦争へと拡大する危機に近づいたけど、その危機は避けられたことになると思います。



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