赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

②独裁国家の現状――ロシア編

2024-04-04 00:00:00 | 政治見解



②独裁国家の現状――ロシア編 :240404情報

ロシアの首都モスクワ郊外でテロ事件、過激派組織IS=イスラミックステートとつながりのあるメディアがISによる犯行だと伝え、アメリカ政府などもISが関わったとの見方を示す中、ロシアは、ウクライナ側が関与したとする主張をことさら強めています。

ウクライナは関与を全面的に否定し、アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官もロシアの主張を「でたらめとプロパガンダだ」と強調しているにも関わらず、なぜ、プーチン政権は、ウクライナが関与したとする主張をことさら強めるのでしょうか。

ロシア事情通の北野幸伯氏の解説を、許可を得て掲載します。



モスクワテロ、見えてきた全体像

3月22日、モスクワ近郊のコンサートホールで起きたテロ。起きたことを時系列でみてみると・・・。

まず3月7日。アメリカは、クレムリンに、「モスクワでテロの可能性がある」と警告しました。『読売新聞オンライン』3月23日。

〈テロに関する情報については、在ロシア米国大使館が7日、モスクワで「コンサートを含む大規模な集会」を標的にしたテロを起こす計画の存在を公表していた。AP通信は、米側が露当局者と情報を共有したと伝えた。〉
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これ、ロシアメディアが3月8日に報道していたので、間違いありません。たとえば『プロエクティ』3月8日付。元記事をざっくり訳してみましょう。

〈3月7日夜、在ロシア米国大使館は今後2日間にモスクワでテロ攻撃の脅威があると警告した。「大使館は、コンサートを含むモスクワの大規模な集会を襲撃する過激派の計画に関する報告を監視している。米国国民は今後48時間、人混みを避けるよう勧告される」と米国大使館のウェブサイトには記載されている。さらに、国務省はロシアへの渡航の危険レベルを最大4に引き上げたとコメルサント紙は指摘した。
英国外務省はウェブサイトに米国の警告を掲載した。金曜朝、ラトビア外務省は同胞に対しロシアへの旅行を控えるよう呼び掛け、またこの国の国民に対してはできるだけ早く国境を離れるか、少なくとも大規模な集会を避けるよう呼び掛けた。
金曜日後半には、主に在ロシア米国外交使節団からの情報により、韓国、カナダ、ドイツ、チェコ共和国、スウェーデンも警告に加わった。
ロシア当局はこの情報についてコメントしていない。3月8日、モスクワでは国際女性デーにちなんだ多くのイベントが計画された。〉
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3月8日付の記事が残っている。つまり、アメリカは、確かにロシア政府に「大きなテロの準備が行われていること」を警告していたのです。そして、イギリス、ラトビア、韓国、カナダ、ドイツ、チェコ、スウェーデンがこの警告を真剣に受け止め、自国民に注意を促していました。

ところが、3月8日、9日にテロは起こりませんでした。理由はわかりませんが、「アメリカの警告が報道された」ことで、テロリストたちは、「ヤバイ!ばれてるぞ。延期だ!」となったのかもしれません。

一方、予告されたテロが起こらなかったことで、プーチンは何を感じたのでしょうか? これは、私の主観的な意見です。

アメリカが、「テロが起きる可能性がある」と警告したのは、3月8日、9日です。そして3月15日~17日には、ロシア大統領選挙が迫っている。テロは起きなかった。プーチンは、「大統領選前に、アメリカがフェイク情報でロシア国内を不安定化させたかった」と考えたことでしょう。

3月17日、プーチンは大統領選挙で圧勝しました。そして、3月19日。プーチンは、アメリカからの警告について発言しました。

『タス通信』3月19日付。ざっくり訳してみましょう。

〈『プーチン大統領、ロシアでのテロの可能性に関する西側の発言を脅迫だと非難』ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシア連邦におけるテロの可能性に関する西側諸国の発言は完全な脅迫だと非難した。
FSB理事会で国家元首は、「ロシアにおけるテロ攻撃の可能性について、西側の多くの政府機関が最近挑発的な発言をしたこと」を回想した。「これはすべてあからさまな脅迫であり、社会を脅迫して不安定化させようとする意図に似ている」とプーチン大統領は確信している。〉
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ところが、プーチンが「フェイクだ」と確信したアメリカ諜報機関の情報は、「本物」だった。テロリストは、攻撃を延期しただけで、中止はしていなかった。そして3月22日、テロが起こったのです。


▼犯人は、「イスラム国」(IS)

私は犯人について「三つの可能性」を挙げました。すなわち、
・IS
・ウクライナ
・プーチンの自作自演
あれから二日たち、どうやらISで確定みたいです。というのも、IS系のメディアが、犯人自身が撮影した動画を公開しているからです。

『日テレニュース』3月24日付。〈ロシアのコンサート会場で起きた銃乱射事件で犯行声明を出している過激派組織「イスラム国」に関連するメディアが23日、襲撃時に撮影したとする映像を新たに公開しました。過激派組織「イスラム国」系の通信社がSNSに投稿した映像では、襲撃グループがコンサートホールとみられる場所で銃を乱射するなどの様子が映されています。この中では、メンバーが「容赦なく殺せ」と指示したり、「異教徒たちは倒された」と叫ぶ声も記録されていました。〉
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『中央日報』3月25日付。〈ISは23日、自分たちが運営する通信社アマクを通じて犯行映像の一部を公開した。動画によるとテロリストが観客を1カ所に追い詰めて銃撃を加えるために非常階段に火を付けるなど緻密に犯行を計画した情況が明らかになった。〉
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ISは、プーチンを憎んでいます。2011年にシリア内戦が起こった時、ISは、「反アサド派」に属していました。それが2014年6月、イラク第2の都市で油田のあるモスルを陥落させ、シリア、イラクにまたがる広大な領域を支配するようになった。
2014年8月、オバマ・アメリカは、IS空爆を開始。しかし、ISはアメリカと同じく「反アサド」なので、本気で空爆できない。そこに登場したのがプーチンです。

プーチンの目的は「アサド政権を守ること」ですから、IS殲滅に容赦がありません。2015年9月から、熾烈な空爆を繰り返し、ISに壊滅的な打撃を与えたのです。まさにロシア軍によって、ISは衰退したのです。それで、ISはプーチンを憎んでいます。

IS。2014年、2015年は、誰でも知っていましたが、最近忘れていた人がほとんどだと思います。それで、「ISがモスクワでテロ!」というニュースを聞いた時、「唐突感」「違和感」を持った人が多かったことでしょう。確かにISは、プーチンにボコされて、衰退しました。

しかし、その後も活動を続けています。『中央日報』3月25日。〈イスラム極端主義武装勢力のイスラム国(IS)のアフガニスタン支部イスラム国ホラサン州(ISIS-K)は22日、テレグラムを通じた声明で「(IS戦闘員が)攻撃を加えて数百人を殺して負傷させた」と明らかにした。最近数年間にわたってプーチン大統領を批判してきたISIS-Kは今年1月、イラン革命防衛隊傘下コッズ部隊司令官だったソレイマニ氏の4周忌追悼式の爆弾テロによって80人余りを殺害するなど数件のテロを起こしている。〉
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▼しかし、プーチンは「ウクライナがやった」とプロパガンダする

あらゆる状況から、今回のテロは「IS」がやったことに間違いありません。しかし、それで恥ずかしい状態に置かれているのがプーチンです。というのも、プーチンは、3月19日の演説の中で、アメリカの警告を「脅迫だ!」と一蹴したからです。

ところが、実際にテロが起こってしまった。誰の責任ですか? そう、アメリカ諜報の警告を笑い飛ばしたプーチンの失態です。

ですが、大丈夫。プーチンは、国内メディアを完全に支配しているので、自分の権威が失墜しないよう、どうにでもすることができるのです。それだけでなく、プーチンは、今回のテロを、自分の政治目的達成のために利用すらします。

どうやって?

ISが、「俺たちがやった!」と宣言し、証拠動画を提示しているにもかかわらず、「あれは、ウクライナがやった!」と根拠のない主張をしています。

『読売新聞オンライン』3月23日。〈プーチン氏は23日の演説で、容疑者らが「ウクライナに向けて逃亡しようとした」と指摘し、「ウクライナとの国境を越えるための『窓口』が用意されていた」と述べた。ウクライナ側がテロに関与した可能性を示唆するかのような主張を展開した。〉
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なんというか。 真の諜報員というか、彼にとって事実は、どうでもいいのです。重要なのは、「いかに現状を、
自分の都合のいいように利用するか」です。


▼これから起こってくること

クレムリンは、これからどう動くのでしょうか? 国内では、「IS説」を意図的に隠し、「ウクライナ説」を拡散していきます。そして、外国においても、「ウクライナ説」と「ISの背後にアメリカがいる説」を拡散していくことでしょう。

だから皆さん、じっくり日本の言論空間をウォッチしていてください。「ウクライナ説」「ISの背後にアメリカがいる説」はクレムリンが、流布している「フェイク情報」です。




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