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JAL123便墜落事故-真相を追う- 圧力隔壁説の嘘(2)

圧力隔壁説は事故調査委員会が事故原因を「推定」する上で極めて重要な位置づけのものです。何故なら、この事故の推定シナリオは

 (隔壁修理ミスによる)圧力隔壁の破壊 →空気の噴出 →尾翼構造内の圧力上昇 →
 →垂直尾翼破壊 →油圧系統全壊 →操縦不能 →迷走 →墜落

とあるように、圧力隔壁の破壊がないと、事故の全容までもが否定されかねないからです。ですから、事故調は、圧力隔壁の破壊があれば必ず生じる「急減圧」(客室内の与圧が急激に低下する)が発生した点を強調しています。以下、隔壁破壊及び急減圧について、事故調がどのような見解に立っているか概要を見てみましょう。

1. 客室内に10m/sの空気の流れが発生した

計算のやり方によりますが、理論上は 数10m/sの流速が得られるようです。ここでは10m/sという事故調の数字について考えて見ましょう。10m/sといえば、台風の時に強い風だと感じるくらいの流速になります。この流速で空気が機内を流れたとすれば、紙のような軽いものは隔壁がある機体後方部に向かって激しく散乱するはずです。しかし、事故後に公開された、垂直尾翼異常後の機内写真では、そのような様子が全くみられません。また、生存者の証言にもそのような事実があったことは認められていません。

そもそも、地上付近では80m/s(約300km/h)以上のスピードで飛行するジャンボ機の尾翼が、いくら内側からの圧力とはいえ、10m/sの流速で生じる風圧によって破壊されたとはとても考えられません。また、機体後方部には圧力弁があり、高圧が生じればその弁が破壊され空気が排出される構造になっています。この圧力弁は墜落現場で発見されており、垂直尾翼破壊時には機能していなかったことが確認されています。

2. 白い霧が発生した

温度の低下によっておきる現象です。生存者の証言によるものですが、この霧は直ぐに消えたと証言は続きます。垂直尾翼を吹き飛ばすような事態が発生したのですから、多少の亀裂などは発生したのかもしれません。ですから、白い霧の発生は、緩やかな減圧を推測する理由になっても、急減圧の発生までを認める理由にはならないと思われます。

3. 室内温度の低下、酸素濃度の低下

この事故調の報告は、隔壁破壊ありきの推定であり、実際にこのような事態が機内で起きたことは、生存者の証言からは認められません。-40度の気が遠くなるような激しい寒気、極度の酸素不足の状態で、乗客は遺書を書き、操縦士はは同機を操縦し続けたというのでしょうか?このような極限状態で実際に何が起こるかは、複数の実験結果を含め藤田日出男氏の著書に詳しく解説されています。

4. 警報音、酸素マスクの落下

元日航パイロットの藤田氏によると、警報音だけでは、何の警報か断定できないし、下手な着陸の衝撃でも酸素マスクは落下することがあるとのこと。必ずしも急減圧が発生したことの証明にはならないようです。

5. 隔壁の破壊状況

圧力隔壁が客室内から外側に向かって折れ曲がっていることなどが、急減圧とそれに伴う激しい空気の流れを示しているとのことですが、これについては、御巣鷹の尾根に墜落した時に生じたものとも考えられます。なぜ垂直尾翼破壊時に生じたものであると断定するか、その根拠がいまひとつよくわかりません。それよりも図に示したように、航空安全推進連絡会議が記録した、垂直尾翼頭頂部の破壊状況のスケッチが、内側からの圧力でなく、まるで機外から力が加わっているように見える点を正しく説明すべきかと思います。


(図は、「御巣鷹の謎を追う」 米田憲司 宝島社 2005 p222 より引用)

 * * *

他にもいろいろと論じる点はありますが、詳しくは参考文献をご参照ください。結論として、事故調が主張(「推定」だけど)する「圧力隔壁説」は、ものの見事に否定されることが見て取れるでしょう。また、圧力隔壁が主原因でないとすれば、当然ながら
 1.垂直尾翼破壊の真の原因は何か?
 2.ボーイング社が認めた圧力隔壁の修理ミスは何だったのか?
が問題となります。この点を巡り諸説花咲くことになるのですが、次回はその辺りを見ていきましょう。


NON ENIM EST OCCULTUM QUOD NON MANIFESTETUR NEC ABSCONDITUM QUOD NON COGNOSCATUR ET IN PALAM VENIAT

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