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阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

コンプライアンス違反という「悪」を是正させる組織内の圧力が弱い、日本人の根本的な原因。山口周 東洋経済オンライン

2024年03月31日 | SNS・既存メディアからの引用記事

現在の日本に目を向けてみると、三菱自動車、東芝、神戸製鋼所、日産自動車など、わが国を代表する企業によるコンプライアンス違反という「悪」が次々に起こっています。

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自分も含め、多くの人は、現行のシステムがもたらす悪弊に思いを至すよりも、システムのルールを見抜いてその中で「うまくやる」ことをつい考えてしまうからです。

しかし、過去の歴史を振り返ってみれば、その時代その時代に支配的だったシステムがより良いシステムにリプレースされることで世界はより進化してきたという側面もあるわけで、

現在私たちが乗っかっているシステムも、いずれはより良いシステムにリプレースさせられるべきなのかもしれません。

仮にそのように考えると、究極的には世の中には次の2つの生き方があるということになります。

①現行のシステムを所与のものとして、その中でいかに「うまくやるか」について、思考も行動も集中させる、という生き方

②現行のシステムを所与のものとせず、そのシステム自体を良きものに変えていくことに、思考も行動も集中させる、という生き方

残念ながら、多くの人は①の生き方を選択しているように思います。書店のビジネス書のコーナーを眺めてみればわかるとおり、

ベストセラーと呼ばれる書籍はすべてもう嫌らしいくらいに上記の①の論点に沿って書かれたものです。

こういったベストセラーはだいたい、現行のシステムの中で「うまくやって大金を稼いだ人」によって書かれているため、

これを読んだ人が同様の思考様式や行動様式を採用することでシステムそのものは自己増殖/自己強化を果たしていくことになります。

しかし、本当にそういうシステムが継続的に維持されることはいいことなのでしょうか。

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人類史上でも類を見ない悪事は、それに見合うだけの「悪の怪物」が成したわけではなく、思考を停止し、ただシステムに乗っかって

これをクルクルとハムスターのように回すことだけに執心した小役人によって引き起こされたのだ、とするこの論考は、当時衝撃を持って受け止められました。

凡庸な人間こそが、極め付きの悪となりうる。「自分で考える」ことを放棄してしまった人は、誰でもアイヒマンのようになる可能性があるということです。

その可能性について考えるのは恐ろしいことかもしれませんが、しかし、だからこそ、人はその可能性をしっかりと見据え、思考停止してはならないのだ、

ということをアーレントは訴えているのです。私たちは人間にも悪魔にもなり得ますが、両者を分かつのは、ただ「システムを批判的に思考する」ことなのです。

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なぜ日本企業の従業員は「思考停止」してしまうのか?

一方、現在の日本に目を向けてみると、三菱自動車、東芝、神戸製鋼所、日産自動車など、わが国を代表する企業によるコンプライアンス違反という「悪」が次々に起こっています。

筆者は、これらのコンプライアンス違反を防止するために、多くの企業で取り組まれている罰則規定に始まるルール改定やオンブズマンなどの

告発制度の施行ではこの問題を解決できないだろうな、と考えています。

というのも、こういったコンプライアンス違反が起きる最も根本的な原因は、企業と従業員の力関係にあると思うからです。

コンプライアンス違反を犯そうとする組織があったとして、当然ながらそれを問題だと思う内部者はいたはずです。ではこのとき、

その内部者は具体的にどのようなアクションがとり得たでしょうか? 具体的には次の2つ、

・オピニオン

・エグジット

ということになります。

オピニオンというのは「これはおかしい、やめたほうがいい」と意見する、ということで、エグジットというのは「こんな取り組みには俺はかかわらないよ、

やーめた」といって仕事から遠ざかる、あるいは会社を退職するということです。

この「オピニオンとエグジット」というのは、従業員に限らず、組織がなにかおかしな方向に向かいそうになったときに、その組織の構成員やステークホルダーが取れる抵抗策と考えられます。

日本企業では、この2つの権利がほとんど行使できない

たとえば株主の場合であれば、経営陣の経営がおかしいと思えば、株主総会で「おかしいだろ、それ」とオピニオンを出すことができますし、

何度オピニオンを出しても経営が改善しないということであれば、株を売るということでエグジットすることができます。

顧客も同じで、売主のサービスや商品に文句があるのであれば、クレームという形でオピニオンを出しますし、

それでも状況が改まらなければ購買を中止するという形でエグジットすることができる。

したがって、健全な組織の運営にはステークホルダーに対して、この2つの権利を行使してもらう自由を与えたほうがいいわけですが……、

日本企業でこれがどうなっているかというと、ほとんど行使できないわけです。なぜ行使できないか? 従業員のその企業への依存度が高すぎるからです。

株主も顧客もエグジットが容易にできるのは、代替手段があるからです。株主であれば別の会社の株を買う、顧客であれば別の企業からサービスや商品を購入すればいい。

しかし従業員はそれがなかなかできない。その組織へオピニオンを出して上司や権力者から嫌われたら? 

ほかのオプションがあれば出世の見込みのない組織などさっさとヤメて別の組織に移ればいいわけですが、

シングルキャリアでほかのオプションを持たない人にとって、これは非常にリスキーな選択でしょう。エグジットも同様です。

要するに、雇用の流動性が低い、パラレルキャリアを持つ人が少ない。結果「システムを批判的に思考する」人がいなくなってしまう。

これが、日本でコンプライアンス違反という「悪」を是正させる組織内の圧力が弱い、根本的な原因なのです。

  引用元

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