永久追放処分?

2013-08-02 03:03:09 | 雑感
A-Rodの球界永久追放処分の可能性が現実味を帯びてきた。米フロリダ州マイアミ近郊のクリニック「バイオジェネシス」(すでに閉鎖)から、検出が難しいとされるヒト成長ホルモンを含めた、競技力向上のための禁止薬物の提供を受けていた、というのが事の発端である。

彼は09年に01~03年に禁止薬物(ステロイド系)を使用していたことを告白したが、その後は一貫して薬物疑惑を否定してきた。そのため今度は「2度目」扱いとなっている。MLBの基準では「3度目の使用」が「ストライクアウト」、永久追放処分とされる。では何故、球界最高年棒を誇り、本塁打歴代5位、打点歴代6位のスーパースターに対してMLBはこんなにも強硬な態度に出ようとしているのか。

それは、彼が「嘘つき」だからである。

今回の調査は大規模なもので、既に2011年ナ・リーグMVPのライアン・ブラウンは、MLBから65試合の出場停止処分を科せ...られ、受け入れている。ブラウンはMLBの調査に協力したため、先行して処分が発表された。しかしA-Rodは、嘘の証言で捜査を妨害し、目撃者を脅迫して証拠文書を購入、証拠隠滅を図ったことが捜査機関側で確認された、と報道されている。その他にも決定的な証拠を既にMLBは入手済みのようである。にもかかわらず、ロドリゲスの弁護士を務めるデビッド・コーンウェルは、どんな処分に対しても不服申し立てを行う方針であると明らかにし、徹底抗戦の構えを崩していない。

この態度に対してコミッショナーを務めるバド・セリグは、スポーツの健全性を守るため、滅多に使用されない強権を行使し、同選手を永久追放するのではないか、とアメリカのメディアが一斉に報道したのである。

アメリカ人は本当に「嘘」を嫌う。また手続きの適正さに対する侵害行為も許さない。ロドリゲスは今回、この2つの「虎の尾」を踏んでしまっているため、強権発動が噂されているのである。

他方で水面下では、ロドリゲス・サイドは、MLBと処分の軽減に関する交渉に入った、とも報道されている。長期間の出場停止処分で妥協しようとしている模様だ。しかし、この場合でも最悪、来シーズン全休ないし2,3年にわたる出場停止処分になる可能性がある、と言われている。38歳で怪我の治療から復帰しようとしているロドリゲスにとっては事実上の「引退勧告」である。

ロドリゲスと10年2億7500万ドルと言う史上最高額の契約を結んでいるヤンキースも既に愛想を尽かしており、如何にして残額の支払いをしないで済むかしか考えていないのは事実だ。ヤンキースはロドリゲスに対し、今後多くの記録を「ヤンキースの選手として」塗り替えていくことを重視し、マイルストーンを達成するたびに巨額の報酬を支払うと言う、多くのインセンティブ条項も設けていた。しかし彼は既にNYでは単なる厄介者になってしまったのだ

どちらにしろ、彼の選手生命はほぼ終わってしまったようなものだ。個人的には彼が21歳と言う若さで首位打者を獲得しセンセーショナルなデビューを飾って以来、ずっと応援してきたので哀しいことこの上ない。彼は間違いなく天才だったのだ。

シアトル・マリナーズで2番アレックス・ロドリゲス、3番ケン・グリフィーJrという最強のデュオを組んでいた。ベーブ・ルースとルー・ゲーリッグ、ミッキー・マントルとロジャー・マリスのデュオを見ることはできなかったが、「俺はロドリゲスとグリフィーのデュオをリアルタイムで見ているのだ!」と誇らしげに感じたものだった。それほど彼は無限の可能性を秘めていたスラッガーであり、全ての記録を塗り替える資格があるとみなされていた。

ロドリゲスは、「21世紀のベーブ・ルース」には彼がなるはずだったのだ。実際問題、ここ3年の急激な衰えがあるにしろ(これ自体も早いのだが)、本塁打と打点の記録を塗り替える可能性は非常に高かったのだ。本当に口惜しい。3000本安打もあと99本である。プライベートでも、マドンナやキャメロン・ディアズと浮名を流し、公私共にスパースターであり続けた。

それほどの天才が何故「薬」に手を出したのか。理由はただ一つ、「歪んだプライド」である。自分以上のバッターの存在を彼は決して認めることができなかった。特にデレク・ジーターに対する「複雑な感情」は様々な憶測を呼んだ。「個人記録では我こそがリアル・ナンバー・ワンであること」に彼は自分の存在意義を見出していた。とにかく図抜けた成績と巨額の契約に拘り続けた。しかし、その結末は彼が想像していたものでは決してなかった。

これだけ重たい処分の噂が流れる中、ロドリゲスは「準備はできた。いつでも試合に出られる。チームのワールド・シリーズ出場に貢献できる」という発言を繰り返していた。状況がまるで分かっていないかのような言動が目についた7月だった。自分は当代随一のスーパースターであり、処分などをありえない、とでも言うかのような態度を今でも取り続けている。

本当に勘違いしているのか、それとももう諦めているのかは本人以外には分からないが、彼の性格上、最後まで徹底抗戦するのではないか、と言われている。その時には永久追放処分が恐らく現実化してしまうだろう。これ以上、晩節を汚すような真似だけはして欲しくない。
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