世田谷事件と堀越事件と猿払事件の「事実関係の異同」を確認しておきましょう。
堀越事件と猿払事件で違う点は,「特定の地区の労働組合協議会事務局長である郵便局職員が,同労働組合協議会の決定に従って選挙用ポスターの掲示や配布をしたというものであるところ,これは,上記労働組合協議会の構成員である職員団体の活動の一環として行われ,公務員により組織される団体の活動としての性格を有する」かどうかです。猿払はそのような事情があり,堀越にはありません。その他の事情は,「当該公務員が管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地がなく,当該行為が勤務時間外に,国ないし職場の施設を利用せず,公務員の地位を利用することなく行われたことなど」は,ほぼ同じと言って良い事件です。
堀越事件と世田谷事件の違いは,「勤務時間外である休日に,国ないし職場の施設を利用せずに,それ自体は公務員としての地位を利用することなく行われたものであること,公務員により組織される団体の活動としての性格を有しないこと,公務員であることを明らかにすることなく,無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって,公務員による行為と認識し得る態様ではなかったことなどの事情」は同じですが,当該公務員が,「指揮命令や指導監督等を通じて他の多数の職員の職務の遂行に影響を及ぼすことのできる地位にあった」かどうかが決定的に異なります。世田谷事件では,当該公務員はそのような役職の地位にありました。
論文で出た場合,当てはめの際に見落としてはいけない部分ということになります。
「規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものである」が,
立法府の判断を尊重し,
「立法の規制目的が前示のような社会的理由ないし目的に出たとはいえないものとして公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、又は規制目的が公共の福祉に合致するものであつても規制手段が右目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであつて、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り」違憲無効とする。
これ全文ですが,後半部分がちょい長いですね。「立法府の判断を尊重し,手段としての必要性若しくは合理性に欠ける事が明らかかどうかという観点から審査すべき」,くらいに短縮するのが良いでしょう。