建君とのライブ配信でもテーマになった「読みやすい答案」についてですが、過去投稿でいいのがありましたので、手を入れて再掲します。
自分の答案を読み返す際に,「主語・述語が対応しているか」,「主語が何か明確か」,「指示語の内容が明確に読み取れるか」,「自分の設定した問いに応えているか」,「規範で挙げた考慮要素につき全て当てはめた上で結論を出しているか」などの「形式面」の確認をすると良いと思います。
頭では分かっていても,書き進めるうちにこれらの要素が不十分になってしまうことが往々にしてあるからです。急いでいるせいもあるのでしょうが、結構多いのが「主語がハッキリしない」という答案です。答案を書く上で重要なことは,「第三者たる読み手が読み取れるかどうか」であって,「自分はこういうつもりで書いた」というのは言い訳になりません。というか言い訳の機会もなく低評価が付いて終わりです。これらは「読みにくい答案」,「論旨不明瞭な答案」という低評価答案になってしまうのです。
本試験の過去問では、刑事訴訟法で「身柄拘束の違法性如何」と言う問題がありました(第6回)。「逮捕状に基づく逮捕が違法かどうか→逮捕状の疎明資料は違法収集証拠になっていないか→疎明資料の収集手続は別件捜索差押ではなかったか」,という形で論点が入れ子構造になっていた問題です。ここで問われているのは「逮捕状に基づく本件逮捕が違法か適法か」です。
この問題を解く上で、まずガツッと書くのは「捜索差押の適法性如何」なのですが,別件捜索差押か否かを検討した後に,「したがって,本件捜索差押は違法であると考える。よって,違法である」と書いてしまうと,「よって違法である」のは「何か」と言えば,素直に読めば「本件捜索差押」になりますよね。これを「よって『本件逮捕が』違法である」と読んでくれる人はまぁ,いないでしょう。だとするとこの答案は,「本件身柄拘束の違法如何」という設問に形式的に応えていない形で終わっていることになってしまいます。これは極端な例ですが,このようなついやってしまう「端折り」は多くの人の答案で見かけます。
また,論旨不明瞭な答案や一読して分かりにくい答案の場合,採点者としてはどうしても読み返すことになりますが,この「読み返す」というのが受験生にとって曲者になります。一読で理解できなかったため、読み手は「どれどれ」という具合に「ジックリ」読んでしまいます。ジックリ読まれると,細かいところも読み込まれてしまう危険性があります。「あれ、ここ変だな」と気づいてしまうわけです。「何を言っているのか」と確認しながら読むので「本当にそう言えるかね」なんて厳し目に見てしまいがちなのです。そのため,ボロが出やすくなります。そう言う意味でも「論旨不明瞭な読み返し必須の答案」は危険なのです。また夏場に他人の書きなぐった!?答案を数百通も読まされるわけですから、機嫌も悪くなるのも否めないですよね(厳し目に読みたくなる理由でもあります 笑)。
読み手の立場に立って、「読みやすい答案」を心がけたいですね。