新旧司法試験における論証

2014-12-11 17:28:40 | 司法試験関連

コメント欄にご質問があったので、こちらでお答えします。新旧司法試験における、「論証」の立ち位置についてです(ご質問内容は、「旧司法試験と新司法試験では求められている論証の長さが異なる印象を感じております。具体的には旧司法試験では必要性及び許容性を常に書く必要があったのに対し、新司法試験では必ずしも求められていないように感じます。先生ご自身は論証についてどのようにお考えでしょうか」というものです)。

旧司法試験は、各論点につき、規範定立までの論証部分が勝負となる試験でした。当然、「問題提起→反対説の紹介→批判→自説の理由付け→規範」、という「セット」を如何に書ききれるかが勝負の試験になります。この「セット」部分は、「事前に準備ができる」ものなので、論点の抽出さえできれば(まぁ、これが難しいわけですが)、あとは事前に準備したものの「吐き出し」になります。この「吐き出し」作業で猛威を振るったのが、伊藤塾長考案の「論証パターン」です。

法務省が、この「猛威」を警戒し、新司法試験においては、「事前準備がしにくい部分」で勝負させるように方向転換してきました。「本件事案の特殊性」、「事実の評価」勝負の試験となったのです。いわゆるL3です。

そのため、規範部分は長々と書いても仕方がない(というより書いてられないが正確)、ということになりました。もちろん、民訴や会社法、行政法で目立つ、制度趣旨なり原則を導く理由付けなりから、例外的扱いを導く能力を試すような場合は別です(「例外的扱い」を認める手法は大きく2つあり、一つは趣旨・原則を導く根拠から認めるパターン、2つ目が必要性と許容性から導くパターン。両者はまぁ似たようなものですが、前者は判例射程を問うたり、通説的な処理とは異なる処理をさせるときによく使うパターンです。広い意味での「例外処理」ですね。後者は刑訴などでよく使いますね)。

また、新司法試験は、「基本的な法的素養はあることを前提に(法科大学院で身につけているという前提)、法曹としての適性を見る試験」、という性格付けを与えられたので、抽象的に法的素養があることを確認することを第1の目的とはしていないと言えます。抽象論よりも具体的な事件を解決できるかどうかを見ようとしています。そのため、判例等を自説とする場合は、最悪結論のみでも構わないと言えます。特に争いがないような場合に、抽象論を長々と書くとセンスを疑われます。逆に、どの立場を取るかで結論がかわりうるような時はやや丁寧に書いた方が良いでしょう。

但し、予備試験は別です。予備試験は、「法科大学院卒業者と同等の基本的な法的素養があるかどうかを試す試験」、という性格付けをされているので、旧司法試験に近いのです。ですから出題範囲も広くなりますし、抽象的な議論ができるかどうかが主戦場となります。新司法試験は、「法曹としての適性を試すのに便宜な範囲」から集中的に出題されるのとは対照的ですね。

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2014年シーズンエンド

2014-12-11 16:28:41 | 司法試験関連

昨日の講義をもちまして、短答突破実践力完成講義も全講義終了となり、これで2014年吉野クラスのカリキュラムは全て終わったことになります。受講生のみなさん、10ヶ月間、本当にお疲れ様でした!!!

まぁ、「お疲れ様でした」とは言ったものの、講義は聞くよりも聞いてからの方がはるかに重要です。「聞きっぱなし」は「危機っぱなし」状態になります。きちんと言われたことを実践できるようにやりきってくださいね。

なお、24時間で憲法・民法・刑法の文字通り短答プロパーだけをガッツリ集中してやったので、内容的には十分すぎると思います。あとは覚えるだけ。さぁ、。やりきりましょう!

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