Tranquility/Lee Konitz
(Verve MV1109. jp.reissue)
クール派を代表するサックスプレイヤーと言えば,一番にあがるのがコニッツでしょう。同じ白人アルトでも,ペッパーやフィル・ウッズとひと味違う演奏スタイルは,一般的に前2者に比べるととっつきにくく本邦ではアンダーレイテッドな存在ですよね。批評家達は,クールジャズの代表としてこぞってとりあげますのでジャズの変遷みたいな解説本には必ずと言っていいほどトリスターノ~コニッツなんて格好で取り上げられ名前先行イメージが拭えません。そもそもクールジャズってのがよくわかってない自分には,未だにドップリ踏み込めないアーチストの一人です。以前にアップしたインサイドHiFiは中でも大好きな一枚ですが,アルトに専念し、タイトル通りの平穏かつ落ち着いた印象のこのアルバムも捨て難い一枚だと思います。
メンバーは御得意のピアノレス,Lee Konitz(as), Billy Bauer(g), Henry Grimes(b), Dave Bailey(ds)といういかにもシブ好みのカルテットです。御得意のギターとの対位的な手法で展開される演奏がコニッツらしいクールな印象を与えてくれます。A面冒頭の自身のオリジナル”Stephanie"からコニッツらしいクールなプレイが聴かれ,個人的に一押しですね。スタンダード曲でのコニッツのプレイはエルビンとのモーションに聴かれるように,まるで原曲のテーマを破壊するかのよう印象があるのですが、ここでは比較的ストレートに吹奏しているところが個人的には二重丸です。"Memories of You"や”Sunday", "Nearnes Of You"等のスタンダードにおける決してエモーショナルに楽器を鳴らしきらないプレイでいかにもコニッツらしい印象です。
所有盤はグラモフォン時代の再発国内盤です。何とgatefold coverが採用されています。初めての国内盤再発時代の一枚です。ちょっと硬派の兄さん風のコニッツが渋いですね。
個人的にはベストはインサイドハイファイなんですが,この盤も捨て難い魅力がありますね。ご指摘のようにグライムス,べイリーというのは異色な印象です。先日アップしたマリガン/チェットのアルバムと同じですよね。コニッツ/マリガンというアルバムもありますから、このあたりの関係がヒントなのかも知れません。マリガンを介した奇妙な三角関係が存在するのかも知れませんね。