練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『さくら』 西加奈子

2007-05-07 | 読書
とっても静かで淡々と、それからとっても悲しい話だった。

まったくこんなに愛情深い家庭があっていいのだろうか、
とわが身に照らし合わせて恥ずかしくなるほどの愛あふれる長谷川一家。
前半はそのあまりの愛の深さに感動しながら読んだのだけれど、
後半は深い愛情と反比例するようなとてつもない不幸に涙が止まらなかった。

神様はいると思う、と言いながら死んでいったお兄ちゃん。
でも、本当に神様っているのかな?と思うような理不尽な悲劇。

幸せなだけの人生なんてない、人より大きな幸せを味わった人はその分不幸も大きい、なんていうけれど、そうなのかな?
悪いことをしていれば必ず神様から天罰が下されるし、
いいことをしていれば必ず天国に行ける、とか言うけれど、本当かな?

きっと幸せ、不幸せ、っていうことはそんな神様の手が下されないような、ましてや私たちちっぽけな人間にはどうすることもできないような大きな流れの中で現れては消えてゆくできごとに過ぎない、ってこの本を読んで思った。
でも、必ず誰にでも平等に与えられている事実は、人は必ずいつかは死ぬ、っていうこと。自分も、自分の周りの誰でも。
その時期は選ぶことなんてできないし、前もって知ることもできない。

ぎゅうぎゅう詰めの軽自動車の中でミキが泣きながら叫んだ言葉。
「もし好きな人ができたら、その人いつまでおれるか分からん。だから迷わず好きって言う」
ただの告白宣言ではない。いろんなしあわせと大きな不幸を経験したあとのミキのこの言葉は胸にず~~んときた。
ホントはもっともっと長いせりふでとにかく、なにがあってもやっぱり人を好きになって人を大切に思って大事に思って、家族でも恋人でも誰でも、その人がこの世に生まれてきたことは「美しく貴い」ことなんだって感じていたい、というミキ(美貴)のこのセリフに涙が止まらなかった。

なんだかすごく家族の絆とか愛情とかを強く感じた話だった。