ブログ日和。

映画と、『ER緊急救命室』『ザ・ホワイトハウス』などの海外ドラマと、世間に対してのツッコミを徒然に書いていきます。

『キャピタリズム~マネーは踊る~』

2010-02-15 12:57:29 | 映画
マイケル・ムーアの最新作だけど、今作は、怒りを笑いにして政治家や経営者にぶつけると言うより、嘆きの色合いが強い。延々1時間半、近年のアメリカ資本主義がいかに中産階級を壊してきたかの物語。「父の時代は良かった。でもいまや町は荒涼とした風景だ」的な。

サブプライムローンの問題で家を失う人々や、「金融工学」に流れる科学者たち、閉鎖された工場で働き続ける従業員などなど。いくつかの人々の語りの中で、特にやりきれない気持ちになったのが、民間の子どもの矯正施設。この経営者と判事とが談合していて、ちょっとのこと(ケンカをした、万引きした程度のこと)で、この施設に子どもをぶち込む。入所した人数分だけ運営費が出るから、彼らは万々歳。まあ、そのことが明るみに出てたから、彼らがぶち込まれることになるんだろうけどさ。これは子どもの人生を弄んだとしかいえず、許せない。

そんな資本主義への懐疑は、2008年秋に発生した世界不況に対する公的資金の投入を議決したアメリカ連邦議会と政府に対して頂点に達する。ある民主党の女性議員は、中間選挙前の駆け込み的な法案提出に憤っていた。結局、選挙に勝ちたいがための寝返りもあり、成立してしまう。そんな中、彼女は、議会の演説で家を失った人たちに「あなたの家はあなたの物なのだから、住み続けて構わない」と叫んだ。彼女の発言を通して、ムーアの言いたいことは、大企業だけを救済して、なんで庶民が苦しんでも救わないのかという、当たり前のこと。

これを受けてムーアは、企業の本社に行き「金返せ!」と言いながら、「立ち入り禁止」のテープで建物を一周する。あれ、これだけ?正直、ガッカリした。彼にはもっと過激なことを求めていたのに。一通りのことをしてつぶやく。「もう自分一人では戦えない、みんなと一緒に立ち上がらないと」と。そうなんだけどさあ。原題のサブタイトル「Love story」に引きずられすぎじゃない?

もしかして、こんなことを主張する映画でさえ、資本主義のルールに則らないといけないことに気が付いた?単なるガス抜きになってるんじゃないかって、考えちゃった?オバマの言う「正しい戦争」にしっくりこないけど、一回、持ち上げちゃったから批判しにくい?

じゃあ、僕も言おう。「ムーア、金返せ!」