自遊空間、 ぶらぶら歩き。

日々見たこと、聞いたこと、読んだこと、考えたこと

錦繍(新潮社)~宮本輝さん

2010-01-29 | 

宮本輝さんの「錦繍」は小川洋子さんの「心と響き合う読書案内」に取り上げられていた1冊です。

紅葉の蔵王の狭いゴンドラ・リフトの中で2人は再会します。
10年前まで、2人は仲のいい夫婦でした。
女性の方はハンディキャップを持って生れた8歳の男の子を連れ、男性の方はこの10年の荒んだ生活が風体に表れていました。

住いのある香枦園にもどった女性はどうしても手紙を出さずにはいられませんでした。なぜ自分の知らない女と無理心中したのか? 1人生き残ったこの10年をどうやって暮らしてきたのかと。

14通の手紙を通じて物語は進みます。
段落の少ない、文字数の多い長い手紙ですが、のめり込むように読めます。

「・・・モーツァルトの39番シンフォニィに耳を傾けることにいたします。さようなら。お体、どうかくれぐれもお大切に。さようなら」が、女性からの最後の手紙の最後のことばです。


錦繍の初出は昭和56年12月の「新潮」。ほぼ、30年前です。
手紙が恋人たちの重要なアイテムだった時代ですね。

それにしても、別れた時が25歳と27歳。再会したのが35歳と37歳です。
世の人間は今よりずっと大人びていました。


 

コメント
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