幕末気象台

おりにふれて、幕末の日々の天気やエピソードを紹介します。

文久元年九月三日(新暦10月4日)の大風

2021-03-27 12:03:56 | Weblog
悠長ではございますが、今回は文久元年九月三日の大風について考えてみたいと思います。
早速、九月一日以降の荒天の記録を辿りますと

文久元年 9月1日 曇天北東風昨夜中降雨【銚子】 暁雨朝止忽晴大風【郡山】 68度、朝小雨ふる、五ツ時より止、四ツ時よりてり立、夕七ツ少し過より雷雨つよし、暮六ツ半時止、四ツ時快晴星出る【水戸】

文久元年 9月2日 朝より晴冷気【相馬】 曇、冷気也、、夕少地しん、、夜中雨ふる【江戸】北風曇天【新島島役所日記】半晴夜雨降【流山】天気西風【銚子】【武蔵村山】58度、、朝より快晴さむし、終日天気よし、夜ニ入くもる、八ツ過より大雨降【水戸】

文久元年 9月3日 夜より風吹段々強ク成、当年無覚大風ニて、、舟三艘痛、、【鯵ヶ沢】】飯過より大雨也【花巻市矢沢地区】 朝雨今暁六ツ時少々前大雷三落程大雨雨終日【相馬】 陰晴不定雨なし、、夕方より風烈し至暁休、先百年以来稀成豊収なるべし【富津】 くもり時々晴ル夕より大風【世田谷】 風雨ニ相成困り入【巻町】 天気少々間ニばらばら、、夜雨大ぶり【豊田市】 60度、宵より雨ふる、五ツ時より雨止、四ツ時より快晴ニ成ル、夕方より又々くもり南風吹【水戸】


文久元年 9月4日 夜大アレ、雨降【秋田県 院内】 晴、、夜中風吹ク【土佐市】

となっております。九月三日に関東から東北にかけて風が強くなっており、被害の報告は青森県の鯵ヶ沢で大風で船三艘が被害を受けたことが書かれています。
他では、特別な荒天の記録はなかったので、台風は関東から東北にかけて太平洋を北上したのでしょうか。
九月四日にはほとんどの地点で天気が回復しており、この大風が台風なのかどうかはっきりしません。

定点で記録がある新島と銚子の記録を記載してみます。


九月一日  始北風雨天【新島島役所日記】 曇天北東風昨夜中降雨【玄蕃日記】【銚子】
  二日  北風曇天【新島島役所日記】  天気西風【玄蕃日記】【銚子】
  三日  南風天気【新島島役所日記】  天気北東風【玄蕃日記】【銚子】
  四日  西風天気【新島島役所日記】  天気北東風【玄蕃日記】【銚子】
  五日  北風曇天【新島島役所日記】  天気北東風【玄蕃日記】【銚子】  

というわけで、私の頭ではどうしようもありません。頓首

  後は白波ばかりなり

      
 




    
      

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

文久元年八月四日の台風

2021-03-14 11:54:05 | Weblog
まず、文久元年八月四日の台風、または台風と思しきものを調べたいと思います。

まず文久元年八月四日(西暦1861年9月8日)あたりの気象状況を見ますと、

八月二日には、
       風雨天、洪水【肝付 高山】
       雨波ますます高くして、、五ツ時頃より八ツ迄之間大ニ暑し,七ツ頃又雨、夜ニ入大風雨、夜半頃より暁まて風雨戸を撲【土佐市】
       坤風天気【新島】
 とありまして、日本列島南海上の浪高しと言ったところでしょうか。

翌、三日の強風域は、
       雨天、今晩風戻強【肝付 高山】
      朝雨夕雨過、、夜二更南方沖鳴、西方雲起、、四更頃より大風、雨ハ不甚【蓮池】

       陰天、小雨細々ふる、晩方日輪顕れ、高かかりし波も次第ニ和く、夜ニ入大風雨【土佐市】
     曇、夜風尤甚し雨添【萩】   
       坤風天気【新島】
       天気よし、、朝少々冷気なり、風ふく、残暑甚し【江戸】
 でありまして、晩方に鹿児島県南部、夜には四国南部、萩で強風、翌日の午前1~2時から熊本県蓮池市で大風
 となっております。

四日になりますと
       雨天、、晩八ツ時過より今昼九ツ時迄風烈し、但大風ニ不至して鎮ル【鳥栖】
       曇、南風強、降雨、暫時岡水流、、今朝雨模様ニて四ツ時分風替り雨降出暫時岡水流、、存の外雨少く八ツ時分より相止ミ、夜分に相成晴上り、甚残念【小倉】
       風雨、明六ツ時より昼九ツ時分迄雨、夫より晴 【小倉】
       雨四ツ頃より風添、晩方烈しく成る、波又高く、、七ツ半頃より少々穏ニ成る、西南ノ雲少し退く七ツ、夜ニ入雨なし【土佐市】
     終日暴風添、、夕雨止、風交西ニ変る、大分穏便也、柿棗大く落、米俵ニ付五匁位上り候由【萩】
       曇天今暁より南風強シ、、昼前より雨、益風強く屋根樹木等損し、夕八ツ過風静る【広島】
       晴天少風在巳刻より折々小雨【池田】
       双天九ツ後曇風荒吹夜交天【京都】 
     辰巳南風強し、、昼前通雨晴る【豊田】
       大風、、夜ニ入風雨厳敷、誠ニ上々御しめり【駒ケ根市】
       坤風今朝少々雨天気【新島】
       テンキヨシ、風はげし【江戸】
      天気よし、風、朝少し冷気也【江戸】
      晴天、風【江戸】
      晴天、昼後より南風強し【生麦】        
      晴、大南風【流山】
       晴暑し、されと風あり【中之条】
       天気西南風【銚子】
       78度、90度、朝より快晴、四ツ時比より南風吹出、終日風つよし、夜中も終夜風つよし【水戸】
      晴、同暑厳敷、、夕刻小風【巻町】 
      晩初メ南下り風吹夫より段々強く成雨ふり、朝五ツ頃ニ止ミ夫より朝夕涼く成【鯵ヶ沢】
 との記録があり、

 鳥栖市では三日の午後十時頃から四日の昼十二時頃まで風がはげしかったようです。
 小倉では、朝から南風が強く、午前十時ごろに風向が変わり、昼頃まで強かったった様子です。 
 四ツ時分風替りとありますので、おそらく午前十時ごろ台風は小倉付近を通過し、風は南風から西よりの風になったと思われます。    
 土佐市では、午前十時頃より、午後五時頃まで風が強く、浪も高かったようです。
 萩市では、終日暴風で、夕方には風が西風に変わったとあります。(夕方ころ台風は萩市付近を通過の模様)
 また、萩市では、柿やナツメの実が落とされ、稲作にも被害が及んだようです。
 広島市では、暁から南風が強く、午後二時過ぎに強風は治まりましたが、屋根や樹木に被害があり、広島新川荷上場や草津新地で高汐も
 あった様子です。
 台風の影響は、近畿、東海、関東、北陸、東北に及び各地で南寄りの強風がふきました。 

気象状況からみて、文久元年八月四日の大風は、台風と見てよいと思われます。
台風の進路は九州西部を北上し、中国地方から日本海に抜けたと考えられます。
台風の影響は広い範囲に及びましたが、勢力はそれ程強くはなく、雨域も小さかったように思います。

翌五日になると
    今暁風雨烈敷中にも風烈敷相覚得申候、明方ヨリ止申候【函館】
 とあり、わずかに函館に影響が残った様子です。

さて、ペリカンは飛んでいたのでしょうか。

  
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする