幕末気象台

おりにふれて、幕末の日々の天気やエピソードを紹介します。

安政三年八月二十五日の台風,江戸では高潮がありました。

2019-09-08 14:25:59 | Weblog
 安政三年8月25~26日(西暦9月23~24日)に江戸付近を直撃した台風の江戸での被害記録を見ますと、以下のようになります。

朝より少々雨、、夜ニ入いよいよ雨強き処、戌刻過ヨリ大嵐と相成、地震後、、薄き土蔵建屋潰レ、築地御堂つふれあり処ともしれず誠ニ高汐凡九尺余、、近在之奉、前代相起り不申、【高木藤右衛門日記)【江戸】
雨、、暮束風、雲早シ夜四ツ時前より東南風甚敷、雨も添候て四ツ時過ニは固屋震候て居難き様ニ有之、下之曽木屋根不残吹、へき瓦も吹散、前之雪隠大抵滅れ、其外御住居長屋通用門より不残濡れ、御式台大破シ大ニかたふき、其外少々之痛処不知数、世上殊之外甚しく海辺ハ津波打候て葛飾御屋敷不残白浜と成、鶴歩も御蔵米二俵三俵位湿候由
麻布は都合御上屋敷同様之由、築地辺波甚敷御堂前え船上り候由、御堂丸ニ崩れ候由、其外所々破損夥シク、、同夜八ツ時頃か芝片門外明神前等焼失、、無間風西ノ方え替り候付海手迄焼貫候て六ツ時前相止、其外青山下谷辺ニも日照相見候、、右火事ニ付七ツ頃三丁板打候付、火事仕度ニて出勤六半時下る【久保松太郎日記】【江戸】

小雨終日、夜ニ入而より少シ風出、雷鳴ル、風追々強ク相成リ四ツ時前より大嵐二相成、風ノ強事近年二無之、大風所々ニ而家潰ル、、ケガ人即死モ所々有之、、右大嵐夜八ツ時頃より追々静ル【梅若実日記】【江戸】

小雨、、夜五時過より風雨、下刻大風雨、雷鳴あり、暫時止、雨風尚烈敷、仮や、本建の家々倒潰、未曾有の事也、怪我人あり、其上芝片門前其外共五ヶ所出火有之、、此方南壁崩る、屋根破損、所々兼ては、、此方宅ハ損之分也、西門跡御堂潰、其外所々大破【齊藤月岑日記】【江戸】

雨不止、、夜野分吹夜半頃止、川水大に増る所々橋落不通行のなる、江戸大風【景作日記】【中之条】夜大風にて大江戸大名、旗本屋敷数カ所破倒れ人死する事、去年地震よりも多きという、その外海嘯あがりたるよし風説あり、、新大橋並両国橋落、築地門つぶれ、、

などです。

東京近くに台風が来ますと、強風と短時間強雨を盛んに注意しておりますが、高潮につきましてはそれ程注意喚起がありません。
史料の赤線部分をごらんいただきますと分かりますように、高潮による被害も甚大です。
安政三年八月二十五日の台風では、およそ2m70cm位の高波があったようです。

安政三年の台風は月齢25日位であります。

満潮の時刻に、降水による河川の増水、南風の海水吹寄せ効果、台風の気圧低下による吸い上げ効果などが一致しますと大変です。

ただ、3m程度の高潮では、今の防潮堤はびくともしないのかもしれません。

たわごとでございます。




コメント (2)
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