◆塩分のはたらき
塩化ナトリウム、すなわち塩は、体が正常機能するためにはかかせない
必須ミネラルです。その役目は、大きく下記3つ。
- 体液のph調整
- 体液はph7.35~7.45の弱アルカリ性が理想ですが、体が代謝を行う際
- には酸性の物質ができやすいため、アルカリ性のナトリウムがその中和
- のために働きます。
- 消化液の成分
- ナトリウムは胃や腸内の消化液の重要な成分です。タンパク質の分解や
- ミネラルの吸収を促進します。
- 筋肉を動かす
- 体内のナトリウムとカリウムが細胞内外で入れ替わる際に電気を出し、
- この刺激によって、筋肉の弛緩・収縮が行われます。
◆不足すると
水分も不足:めまい
体は、塩分を含むミネラル・電解質の濃度を一定に保とうとします。塩分が少なく
なれば濃度を下げないよう、排出などで水分量を減らす調整をします。
体内の水分量が減ると血圧が下がり、脳への酸素供給が不足、めまいといった
症状が現れることがあります。
消化液の不足:食欲減退、倦怠感、脱力感
成分となるナトリウムの不足によって消化液も不足、これが食欲減退をまねく
ことがあります。結果としてエネルギーが足りなくなって倦怠感、脱力感を感じる
ことも。
筋肉の異常:心筋梗塞の恐れ
筋肉を動かすための電気信号の発生に支障がでるため、筋肉痙攣を起こす
ことがあります。これが心臓の筋肉に起こった場合は心筋梗塞のひきがねと
なる可能性もでてきます。
◆過剰となると
塩分を過剰に摂取すると、不足時と同様、濃度を一定にする働きによって、体内
の水分を増やそうとする作用がおこります。ここからさまざまな症状が起こって
きます。
のどが渇く
体内濃度をもどすために、より水分を摂取しようとします。
むくむ
水分を保持するために尿や汗による排出を抑えるようになります。
しかしこうして溜めこんだ水分も過剰となれば細胞からあふれ、細胞の周囲に
溜まって、むくみの原因ともなります。
血圧の上昇
水分が増える、すなわち血管内の血液量が増え、血圧の上昇を促すことに
なります。慢性的にこの状態が続くと、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞といった
深刻な病気に発展しかねません。
腎臓疾患
過剰なナトリウムの排出のために過度に働き、負担がかかります。
不整脈、心疾患
塩分不足と同様、過剰の場合も筋肉への電気信号の異常が不整脈や
心疾患へつながる恐れがあります。
カルシウムの排出
多過ぎるナトリウムは、体内のカルシウムと結合して排出されます。
この作用が過剰に働けば、歯や骨の重要な成分であるカルシウムが不足する
結果となります。
◆食塩感受性
腎臓のナトリウム排泄機能が正常であれば、余分なナトリウムは4~5日で
排泄されます。しかしこの機能が弱い、もしくは低下すれば、血圧へも影響
しやすくなるわけです。この状態を「食塩感受性が高い」と表現し、対策と
して「減塩」が有効です。反対に排泄機能が十分働いている場合は
「食塩非感受性」とされ、この場合は高血圧であっても減塩が有効な対策
とはなりません。
どちらの高血圧かを知るには高塩分食と低塩分食を1週間ずつ交互に
実践して血圧の変化を観察する検査が必要となります。
とはいえ、塩分の過剰な摂取はいずれにせよ体に害を及ぼします。
特に日本人は習慣的にも、「減塩」を心がける必要があるでしょう。
■日本人の問題点
必要量は2~3グラム、日本の日常は9~11グラム
体の機能を保つために必要な塩分量は、1日2~3グラムとされています。
これは本来、素材となる食物だけで摂取が可能な量であり、食塩をプラスする
必要はありません。事実、アマゾンやニューギニアなどで自然に近い生活を
おくり、素材以外から食塩を摂る習慣のない種族にも塩分不足による症状は
みられず、また高血圧もないといわれます。
またWHOの推奨摂取量は、1日6グラム未満です。
これに対し、醤油や味噌など塩分の多い調味料を多用する日本人の摂取量は、
1日9~11グラム、明らかに過剰な状態となっています。
日本でも、調味料や食料自体が少なく貴重であった時代にはこれほどまで
過剰になることはなかったと思われますが、すべてが豊富になった現代では、
むしろ減らすことが大変困難にまでなっています。