◆学んで、すぐ寝れば記憶力アップ!
「覚えたことを脳に定着させる方法は、大きく3つあります。まずは、何度も繰り返し
学習すること。次に、感情を伴って記憶すること。すごくびっくりしたり、うれしかった
り、怖かったりしたことはイヤでも覚えていますよね。そして最後が、睡眠をうまく
活用することです」と国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所成人精神
保健研究部精神機能研究室の栗山健一室長は話す。
そもそも睡眠の目的は体と脳を休めることだが、それに加え、その日に覚えたことを
整理し、記憶として強化する働きもあるという。「覚えた後にしっかり睡眠を取る
ことで、脳に記憶を“焼き付ける”ことができるのです」(栗山室長)。
睡眠をうまく利用した1日の送り方
◆朝の過ごし方
最近は“朝活”がはやっていますが、生体リズムの観点からいうと、朝の学習やスキル
磨きは必ずしも効率的とはいえません」と栗山室長は指摘する。
朝は「睡眠慣性」といって、目覚めた後もしばらくは眠気を引きずり、頭のアイドリング
状態が続いている。この眠気が消えて頭がしっかり働くまでに、通常、2時間程度
かかる。
「ですから、朝一番に何か仕事をするなら、フルに頭脳を駆使する必要の少ない作業。
例えば、単純な入力作業とか、あまり考えずに気楽に処理できるようなメールの送信
など、いわゆる“やっつけ仕事”がお勧め。難しいことには、頭がフルに働き出してから
着手する方が賢明です。もちろん、朝から絶好調という人は別です。睡眠慣性には
個人差があり、30分程度で解消される人がいることも分かっています」(栗山室長)
目覚めから2時間経つと、極端な睡眠不足でない限り、眠気は消え、脳は好調モードに
突入する。難しい仕事や厄介な案件は、この時間帯にこそ取り組むといいだろう。
◆午後の睡魔は避けられない
「食事を取った影響というより、むしろ生体リズムとして人間の体は昼の1~3時
くらいには眠くなるようにできている。多くの野生動物はまとめて寝る習慣がなく
1日の中で数回に分けて眠りますが、人間も近代までは1日数回に分けて眠る多相性
(たそうせい)睡眠の習慣を持っていました。ところが、150年ほど前にガス灯や
電灯といった人工光が発達し、それ以降、夜にまとめて眠る習慣が確立したのです。
午後の眠気は、それ以前の習慣の名残りと考えられます。また、ビジネスパーソン
の多くは慢性的に睡眠不足ぎみでしょうから、その影響ももちろんあります」と
栗山室長。
昼間の眠気対策としてぜひ活用したいのが「昼寝」だ。「短時間の睡眠によって、
頭を効果的にリフレッシュできる。ただし、長すぎる昼寝は逆に昼寝後のパフォー
マンスを落とし、夜の睡眠の質を低下させることにもつながりますから、せいぜい
15分、長くても30分までに抑えるべきです」(栗山室長)。
寝過ごさないためには、バイブレーターを使う携帯電話の目覚まし機能などを活用
するのもいいだろう。
◆声を出す学習や練習が上達の秘けつ
「1日の中で一番眠気が少なく、脳が活性化されるのは夕方から夜にかけてで、
特に就寝の1~2時間前は(晩酌を控えれば)最も脳の高次処理に適した時間帯。
生体リズムから言うと、本当はこの時間こそが仕事や学習に向いています。
もちろん、その後にしっかり眠ることで、覚えたことも記憶として定着しやすく
なります」(栗山室長)。
という訳で、仕事が終わった後はステップアップのために語学学校に通ったり、
資格取得のための勉強に充てたりするのが理想的。また、ゴルフやテニスなどの
教室に行ったり、自主練習をしたりするのもいいという。
(2014年11月17日 日経Gooday)