永子の窓

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蜻蛉日記を読んできて 解説①

2016年10月18日 | Weblog
解説① 「蜻蛉日記下巻」上村悦子著より  2016.10.18

「今は自分に新しく子宝を得ることをあきらめて養女をすることを決心して、知人にも頼んだところ彼女の希望する「いやしからざらむ人の女子」の条件を満たす女子が見つかった。

 兼家が参議兼忠女(かねただのむすめ)にかつて生ませた子どもで、作者がこの子を養女にしたことはきわめて賢明である。父は兼家、母は陽成院の子孫で参議参議兼忠女(かねただのむすめ)であるから、彼女が立派に教養をつけてやれば后がねとして十分期待できる。まったくねがってもない最適の女子であるので、作者も早速この女の子を養女にしようと決めたのは当然である。(中略)
 
 天禄二年七月一日参議兼忠が逝去して身寄りも無く未婚の女子があとに残った。好色家の兼家が見逃すはずが無く、何くれと好意を示して、やがて求婚し、その女も兼家に身をまかせたのであろうが、それほど魅力のある女性でもないうえ、だいぶ年も老けていて消極的だったし、第一兼家もほんの一時的な浮気であったため、二人の関係は長続きしなかった。しかしその女は早くも懐妊していたのにあきらめがよいのか、兼家の足が絶えると、やがて兄の僧を頼って志賀の方に行ってしまい、そこでお産をし、もうけた女児とひっそり暮していたのである。兼家はそのことを耳にして、『ありしところに女子生みたなり。さぞとなむいふなる。さもあらむ。ここに取りてやはおきたらぬ』と言っている。一夫多妻下の無責任極まる父親の姿丸出しである。(中略)」つづく。