永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(牛車の降り方)

2008年05月07日 | Weblog
牛車の降り方

前から降りる。

 ふつうは前から降りる。まず車から牛を放ち、自分で前の御簾を巻き上げると、役人が車の前に突き出した前板というステップに履き物を置いてくれる。車が揺れるので両袖の傍建(ほうだて)という添え木に手を懸(か)けて履き物を履き、前の轅の間に置かれた榻を踏み台にして地面に降りるのである。

◆牛車の乗り方、降り方の写真は風俗博物館より。

源氏物語を読んできて(牛車の乗り方)

2008年05月07日 | Weblog
牛車の乗り方作法

乗るときは後から

 牛車の乗降に際しては作法があった。
寝殿から車に乗るときは、中門廊の車寄(くるまよせ)に、牛をはずした車を後ろ向きに引き込む。車寄は廊の妻戸(つまど)に面しているので、妻戸を開けて牛車の後方から乗り込むのである。榻(しじ)という四脚の台を踏み台にして、車体の入口から外側へ付き出た踏板とよばれるステップに足を乗せる。横に立つ役の者が、入口に懸かった御簾(みす)をかかげてくれるので、その下をくぐって乗り込むのである。対(たい)の屋(や)の妻戸の前に、直接牛車を寄せて乗ることもある。

源氏物語を読んできて(物の怪など)

2008年05月07日 | Weblog
物の怪

 人に取り憑いて苦しませ、病気を引き起こし、場合によっては殺してしまうと信じられていた死霊などをまとめて物の怪といいます。しかし、少しでも原因不明の異変があれば物の怪の仕業にしてしまう傾向が強かったようです。                                               
                                     生霊(いきすだま)

 生きている人の体から抜け出て人に取り憑き、災いを引き起こす魂のことをいいます。

加持祈祷(かじきとう)

 物の怪を鎮めるために修験者(しゅげんしゃ)に頼んで調伏(ちょうぶく:護摩をたき霊などを退治する)してもらう密教の修法のことで、修験者は病人に取り憑いている物の怪を他の人に移してその正体を名乗らせたりして調伏していました。出産の時にも盛んに行われました。

◆参考:「信仰と宗教」より
◆写真は鬼女になった六條御息所=「能・葵」より

源氏物語を読んできて(42)

2008年05月07日 | Weblog
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【葵】の巻 (5)

 源氏が忍んで通われているご婦人たちは、こんな折りは、数のうちに入らないわが身を嘆いています。朝顔の君は、並々でない源氏からの好意に心ひかれないことはありませんが、
「いとど、近くで見えむ、までは思しよらず」
――今以上、打ち解けてお逢いしようとまでは、お思いにならない――

 源氏は、かの六條御息所と左大臣方の車争いのことをお聞きになります。葵の上ご自身ではなく、供人のしでかしたこととは思うものの、つんつんとした葵の上のご気風のままに、思慮のない者がさせたことだろうと、御息所を気の毒に思い、尋ねますが、気安くは対面してもらえません。
源氏は「なぞや、かくかたみにそばそばしからで、おはせかし」
――何ということだ。御息所も葵の上もお互いに、こう角を立てずにいてくれたらよいものを――とやりきれない。

 賀茂の祭の当日

 源氏は二条院の紫の上を伴ってお出かけになります。美しく装われた姫君の御髪をかきなでつつ、
うた「はかりなき千尋のそこの海松(みる)ぶさの生ひゆくすゑはわれのみぞ見む」
――底知れぬ千尋の海底の海松ぶさのようなあなたの髪がのびてゆく将来は、わたし一人が見守りますよ――
可愛らしさから美しさに変わっていくのを、ますます楽しみにしていきます。

 六條御息所は、あの車争い以後、もの思いの多い日を送っていらっしゃいます。一旦は無情な源氏と思い、振り切って伊勢に下ろうと思ったものの、やはり心細く、世間でも、さぞもの笑いになると思われ、起きても寝ても
「御心地も浮きたるやうに思されて、なやましうし給ふ」
――気持ちがだんだんからだから離れていくようで、定まらず、お悩みつづけておられます。――
(生霊を暗示させる)

 伊勢に下ることについても、源氏は賛成も反対もせず
「数ならぬ身を、見ま憂く思し棄てむも道理なれど、今はなほいふかひなきにても、御覧じはてむや、浅からぬにはあらむと聞えかかづらひ給へば……」
――私のようなつまらない者を、見るのも嫌とお振り捨てになるのも当然ながら、やはり、今はつまらない者としてでも、最後まで見て下さるのこそ、浅くないお心というものでしょうなどと、見当違いに、からんで申されるので……――

 かの御禊の日の一件とも併せて、すべてにひどく辛い思いに追いこまれていらっしゃいます。

◆写真は半蔀車(はじとみぐるま)半分が蔀の窓付。手前が開いています。

ではまた。