『消えたフェルメールを探して 絵画探偵ハロルド・スミス』
1990年春、セントパトリックデーの深夜、ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から13点合計5億ドル相当の美術品が強奪された。被害を受けたのはレンブラントやマネ、ドガの傑作と、フェルメールの『合奏』。17世紀の画家フェルメールの画業生活は短く、長く市場から忘れられていたこともあって現段階で実在が確認されている作品はたった35点しかない。稀少価値は高く、『合奏』はこれまでに盗難に遭った美術品の中でも最も高額な作品といわれている。
『合奏』のファンだという監督自らが美術品捜索のスペシャリスト、ハロルド・スミスにアクセス、捜査の現場に密着したドキュメンタリー。
ここ数年で日本でも公開本数が増えつつある(そしてこのブログでのレビュー本数も増えている)ドキュメンタリー映画だが、美術品にまつわる作品はけっこう珍しいんじゃないかなあ。しかも主人公となる絵画は盗品。レアだ。
それにしても熱い映画です。なにしろ監督が愛してやまない作品が盗まれたまま戻ってこないのだから、思い入れもひとしおだろう。ぶっちゃけ観ててついてけないなと感じるパートもけっこう多い。ぐりの真後ろの男性客なんかくすくす笑い通しだった(うるせえよ)。隣の席の女性客は携帯見まくり(出てけ)。アップリンクでこんな観客の態度が悪い上映は初めてです。
それでもぐりは監督や映画に登場する人たちの熱狂には共感を覚える。映画にはたくさんの関係者が登場する。美術館員、ジャーナリスト、作家、警察関係者、元美術品泥棒、そしてイザベラ・スチュワート・ガードナー本人と彼女の画商の往復書簡。彼らは魂の底からフェルメールを、『合奏』を、芸術品を、美術館を熱烈に愛してやまない。人によってはそんな愛はどこか滑稽にうつるかもしれない。でも愛は愛だ。うるわしいではないか。ぐりは美しいと思う。
もうひとりの主人公ハロルド・スミスのパーソナリティが特異なのが、この映画をさらにチャーミングにひきたてている。
50年間も皮膚ガンと戦う彼は黒いアイパッチに帽子に義鼻といういでたちで世界中をとびまわっている。撮影当時既に75歳だがかくしゃくとして、どんな相手もくつろがせつつ情報を引き出すという特殊な技能を発揮する。
しかし美術品専門の保険調査員て職業があるなんて、ほとんど世の中には知られてないんじゃないかな?ぐりは大学で博物館学をとってたので習いましたけれど。彼らのコネクションは捜査関係者やキュレーター、美術家、鑑定士や修復師、コレクターなど多岐にわたる。まるで推理小説の舞台そのままのリアルワールド、考えただけでワクワクするような世界である。かっこいい。クールじゃ。
欲をいえばこのアーティスティックかつスリリングかつセレブーなコネクションをもっとうまく見せてくれれば、映画としてさらにカラフルになったんではないかなという気はする。『合奏』周辺人物のみで世界が完結しちゃってて、なんだか観てて息がつまるとゆーか、どっかアングラな感じがしてしまってるのが惜しかったです。
1990年春、セントパトリックデーの深夜、ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から13点合計5億ドル相当の美術品が強奪された。被害を受けたのはレンブラントやマネ、ドガの傑作と、フェルメールの『合奏』。17世紀の画家フェルメールの画業生活は短く、長く市場から忘れられていたこともあって現段階で実在が確認されている作品はたった35点しかない。稀少価値は高く、『合奏』はこれまでに盗難に遭った美術品の中でも最も高額な作品といわれている。
『合奏』のファンだという監督自らが美術品捜索のスペシャリスト、ハロルド・スミスにアクセス、捜査の現場に密着したドキュメンタリー。
ここ数年で日本でも公開本数が増えつつある(そしてこのブログでのレビュー本数も増えている)ドキュメンタリー映画だが、美術品にまつわる作品はけっこう珍しいんじゃないかなあ。しかも主人公となる絵画は盗品。レアだ。
それにしても熱い映画です。なにしろ監督が愛してやまない作品が盗まれたまま戻ってこないのだから、思い入れもひとしおだろう。ぶっちゃけ観ててついてけないなと感じるパートもけっこう多い。ぐりの真後ろの男性客なんかくすくす笑い通しだった(うるせえよ)。隣の席の女性客は携帯見まくり(出てけ)。アップリンクでこんな観客の態度が悪い上映は初めてです。
それでもぐりは監督や映画に登場する人たちの熱狂には共感を覚える。映画にはたくさんの関係者が登場する。美術館員、ジャーナリスト、作家、警察関係者、元美術品泥棒、そしてイザベラ・スチュワート・ガードナー本人と彼女の画商の往復書簡。彼らは魂の底からフェルメールを、『合奏』を、芸術品を、美術館を熱烈に愛してやまない。人によってはそんな愛はどこか滑稽にうつるかもしれない。でも愛は愛だ。うるわしいではないか。ぐりは美しいと思う。
もうひとりの主人公ハロルド・スミスのパーソナリティが特異なのが、この映画をさらにチャーミングにひきたてている。
50年間も皮膚ガンと戦う彼は黒いアイパッチに帽子に義鼻といういでたちで世界中をとびまわっている。撮影当時既に75歳だがかくしゃくとして、どんな相手もくつろがせつつ情報を引き出すという特殊な技能を発揮する。
しかし美術品専門の保険調査員て職業があるなんて、ほとんど世の中には知られてないんじゃないかな?ぐりは大学で博物館学をとってたので習いましたけれど。彼らのコネクションは捜査関係者やキュレーター、美術家、鑑定士や修復師、コレクターなど多岐にわたる。まるで推理小説の舞台そのままのリアルワールド、考えただけでワクワクするような世界である。かっこいい。クールじゃ。
欲をいえばこのアーティスティックかつスリリングかつセレブーなコネクションをもっとうまく見せてくれれば、映画としてさらにカラフルになったんではないかなという気はする。『合奏』周辺人物のみで世界が完結しちゃってて、なんだか観てて息がつまるとゆーか、どっかアングラな感じがしてしまってるのが惜しかったです。