『千年の祈り』 イーユン・リー著 篠森ゆりこ訳
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2005年に刊行された本書『千年の祈り』でいきなりフランク・オコナー国際短編賞を受賞して以来、アメリカで最も注目される小説家となったイーユン・リーのデビュー作。表題を含めて10篇の短編が収録されている。うち3篇がアメリカを舞台に中国人を描いた物語で、残りは中国を舞台にしている。
アメリカで英語で小説を発表しているアジア人作家といえば『停電の夜に』『その名にちなんで』のジュンパ・ラヒリがいるが、インドと中国という故国の違いはあってもこのふたりの作風はすごく似ている。年齢が近くてふたりとも女性ということもあるけど、視点が濃やかで対象へのアプローチが非常にソフトでありながらクール、というタッチがそっくりなのだ。ただラヒリがインド系二世であるのに対してリーは一世なので、故国を離れて故国を文学に描く必然性には微妙なズレはもちろんある。
ちなみにリーとぐりはちょうど同年代にあたる。文化大革命のことはほとんど記憶になくて、天安門事件は当事者になるにはちょっと年齢が足りなかった世代。物心つくころから急激な近代化に巻きこまれ、近年の愛国教育には染まらなかった世代。
そういう微妙な隙間感もそれぞれの作品に如実に感じる。「死を正しく語るには」に描かれたように父親が核開発者という特殊な家庭環境に育ったせいもあるかもしれない。でもなんとなく、あたしはいったいどっちなんだっけ?的な居心地の悪さは自然と共感できる。ロック世代でもなくゲーム世代でもない日本の70年代っ子と比較するのは違うかもしれないけど。
表題の「千年の祈り」は王穎 (ウェイン・ワン)監督が映画化してアメリカでは既に公開されてるけど(予告編)、ぐり的にお気に入りは「柿たち」かな。登場しない主人公以外の人物に名前がないっていう文体もおもしろいし、ストーリーもハードでいい。ゲイが主人公になっている作品も2篇(「ネブラスカの姫君」「息子」)あったけどなんか意味はあるのかしらん?
ほどよく甘くてほどよく辛くて、やわらかいんだけど歯ごたえもある、舌触りのいい短編小説集。この作家の本は日本ではまだこれ一冊しか出てないけど、また次が出たら是非読みたいです。
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2005年に刊行された本書『千年の祈り』でいきなりフランク・オコナー国際短編賞を受賞して以来、アメリカで最も注目される小説家となったイーユン・リーのデビュー作。表題を含めて10篇の短編が収録されている。うち3篇がアメリカを舞台に中国人を描いた物語で、残りは中国を舞台にしている。
アメリカで英語で小説を発表しているアジア人作家といえば『停電の夜に』『その名にちなんで』のジュンパ・ラヒリがいるが、インドと中国という故国の違いはあってもこのふたりの作風はすごく似ている。年齢が近くてふたりとも女性ということもあるけど、視点が濃やかで対象へのアプローチが非常にソフトでありながらクール、というタッチがそっくりなのだ。ただラヒリがインド系二世であるのに対してリーは一世なので、故国を離れて故国を文学に描く必然性には微妙なズレはもちろんある。
ちなみにリーとぐりはちょうど同年代にあたる。文化大革命のことはほとんど記憶になくて、天安門事件は当事者になるにはちょっと年齢が足りなかった世代。物心つくころから急激な近代化に巻きこまれ、近年の愛国教育には染まらなかった世代。
そういう微妙な隙間感もそれぞれの作品に如実に感じる。「死を正しく語るには」に描かれたように父親が核開発者という特殊な家庭環境に育ったせいもあるかもしれない。でもなんとなく、あたしはいったいどっちなんだっけ?的な居心地の悪さは自然と共感できる。ロック世代でもなくゲーム世代でもない日本の70年代っ子と比較するのは違うかもしれないけど。
表題の「千年の祈り」は王穎 (ウェイン・ワン)監督が映画化してアメリカでは既に公開されてるけど(予告編)、ぐり的にお気に入りは「柿たち」かな。登場しない主人公以外の人物に名前がないっていう文体もおもしろいし、ストーリーもハードでいい。ゲイが主人公になっている作品も2篇(「ネブラスカの姫君」「息子」)あったけどなんか意味はあるのかしらん?
ほどよく甘くてほどよく辛くて、やわらかいんだけど歯ごたえもある、舌触りのいい短編小説集。この作家の本は日本ではまだこれ一冊しか出てないけど、また次が出たら是非読みたいです。