さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

まりひめに次ぐ県オリジナル品種 香り高く食味に優れた「紀の香」

2023-04-23 16:48:08 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、色鮮やかで大きな果実が特徴の、和歌山県オリジナル品種「まりひめ」を取り上げた。
今週は、まりひめに次ぐ、和歌山県オリジナル品種である「紀の香(きのか)」を紹介したい。


【写真】明るい赤色で中身は白い「紀の香」

紀の香は、県農業試験場が「かおり野」を母親、「こいのか」を父親として交配し、平成24年に育成を始めた品種。4年間の選抜を経て平成28年に品種登録されている。
名前は、紀州の香り高いいちごで、和歌山を代表する品種になることを願い、付けられたという。

特徴は収穫時期が11月中旬と早く、クリスマス商戦に十分対応できること。年間を通しての収穫量(年内収量)も「まりひめ」や「さちのか」より多く、収益性に優れている。また、炭そ病という病気に対する耐性がまりひめより強く、さちのかの同等で、育てやすいものとなっている。
果実の大きさはさちのかより大きく、まりひめより小さい。まりひめと比べ果実の色は明るい赤色。切ってみると赤いのは外周だけで、中は白い。

食してみると、名前の由来にもあるように香りがよく、適度な酸味があり、さわやかな食感。糖度はまりひめやさちのかと同等である。噛み応えを感じるほど果実はしっかりとしているが、硬すぎず、柔らかすぎない適度な硬さ。

まりひめと同様に栽培は和歌山県内に限られるが県内各地に広がり、まりひめに次ぐブランド品種として期待されている。

まりひめと比べると、存在感は低いかもしれないが、目にする機会が確実に増えている品種。
香り高く、甘味や酸味にも優れた紀の香を、ぜひご賞味いただきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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色鮮やかで大きな果実が特徴 県のオリジナル品種「まりひめ」

2023-04-16 17:01:16 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、しっかりとした甘味が特徴の「章姫(あきひめ)」を取り上げた。
今週は「章姫」と「さちのか」を交配してできた、和歌山県のオリジナル品種「まりひめ」を紹介したい。


【写真】色鮮やかで果実が大きい「まりひめ」

まりひめは、和歌山県農業試験場が育成した品種で、平成14年度に早生で豊産性のある章姫を母親とし、コクのある食味で日持ちが良いさちのかを父親とし交配。4年間の選抜と品種検討会、適応試験を経て、平成22年に品種登録された。
紀州の伝統工芸品である「紀州てまり」にちなみ、まりひめと命名したという。

まりひめの特徴は、開花が11月初旬頃、収穫開始が12月上旬頃と、さちのかと比べ2週間以上早いこと。さちのかの収穫は12月下旬でクリスマスの需要に対応することが難しいが、まりひめは収穫が早く、市場のニーズに応えられる。
また収穫量が多く、4月までの総収量はさちのかより2割以上で、農家の収益性にもつながっている。
サイズが大きいことも特徴で、販売可能な収穫量に占める13g以上の正形果収量の割合(上物率収量)は80%以上と高く、販売される果実の平均の重さは約19gと、さちのかの約15g程度と比べて大きくなっている。

果実の特性としては、肩部がやや丸みを帯びた円錐形をしており、低温期でも鮮やかに着色し光沢がある。
糖度はさちのかと同等で章姫より高い9度以上。酸度は章姫より高く、さちのかより低い。
果肉の固さは章姫より硬く、さちのかより柔らかくなっている。

まりひめの栽培は和歌山県内に限定。和歌山県いちご生産組合連合会から利用許諾を受け、195戸の農家が約20haのハウスで栽培。12月上旬から5月上旬頃まで出荷される。

県内では目にすることが多いが、県外での販売は少ない模様。
和歌山県が誇るブランド品種として広く親しまれることを期待したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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しっかりとした甘味が特徴 静岡生まれの人気品種「章姫」

2023-04-09 17:16:10 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、いちごの中でもビタミンCが豊富に含まれ、新たな農法の導入により品質の向上が図られている「さちのか」を取り上げた。
今週も12月頃から店頭に並ぶ「章姫(あきひめ)」を紹介したい。


【写真】果肉の紅白が美しい「章姫」

章姫は静岡県の農家が「久能早生(くのうわせ)」と「女峰(にょほう)」を交配し育成した品種。1992年に品種登録され、静岡県を中心に栽培が広がった。
名前の由来は育成した農家の方の名前に由来しているという。

特徴は果実が縦長の円錐形をしていること。一般的ないちごはふっくらとした印象であるが、章姫は縦長である。
果実は柔らかく口当たりがよい。果肉は外側には赤みがあり、中心にいくほど白くなる。果汁が豊富で酸味が少なくしっかりとした甘味もある。

果実が柔らかいことから長時間の輸送に向かず、春先になると果実の糖度と硬度の低下が見られることが課題とされている。
収穫の最盛期は2月から4月で、和歌山県内でも栽培されている。

昨今、章姫の苗が海外に持ち出され、別品種との交配により作られたいちごが栽培されるなど、国際的な問題が起きている。
日本で生まれた優良な新品種は、日本の農業の発展に貢献するもので、品種開発には多額のコストと労力がかけられている。

優良な新品種の流出を抑えることは、産地づくりを進める都道府県や高付加価値の農作物を出荷する農家にとって重要であることから、2022年4月に改正種苗法が施行。品種登録された品種を自家増殖する際は、育成者権を持つ育成者権者の許諾が必要となるなど、育成者と品種の流出を守る仕組みができている。

高い技術力とたゆまぬ努力から生まれる新品種。日本のブランドとして認められ、高い品質のいちごが世界中で親しまれることを期待したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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ビタミンCが豊富 栽培方法に工夫も「さちのか」

2023-04-02 21:19:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、いちごのシーズンの到来を告げる「とちおとめ」を取り上げた。
今週は12月頃から店頭に並ぶ「さちのか」を紹介したい。


【写真】酸味と甘みのバランスが良い「さちのか」

さちのかは、農水省野菜茶業試験場久留米支場で育成された品種。食味と香りに優れた「とよのか」と、果実が大きく着色に優れた「アイベリー」を交配。2000年に品種登録されている。

果皮の色は濃い赤色をしており、果形は長円錐で、果実の大きさは大きめ。果肉は硬めであることから、輸送性に優れ、日持ちもよい。
香りが強いものの穏やかな酸味で、甘みとのバランスがよく美味しくいただける。
果肉は淡紅色で中央部分も淡赤色をしている。熟しすぎると黒ずんだ赤色になる黒変が起きるため、日持ちはよいものの早めに食べるか、ジャムやピューレにするのがよい。

さちのかの特徴はビタミンCが豊富であること。100gあたりの含有量が約80㎎で、他のいちごと比べて多いとされる。健康志向の方にはおすすめの品種である。

収穫期は12月頃から翌年5月頃まで。最盛期は2月から3月にかけて。栽培は長崎県や佐賀県など九州地方が多いが、和歌山県内をはじめ全国各地で栽培され、スーパーなどで
広く販売されている。

さちのかを使い栽培方法を工夫し新たな名前で販売している例がある。
千葉県では、土壌の農薬や化学肥料に残留する有害物質を減らし、有用な微生物を活性化することができる、ステビア濃縮エキスを用いて栽培する「ステビア農法」が取り入れられ「紅つやか」の名で販売されている。
黒変を抑えることができ、着色をよくする効果があるなど、栽培方法の工夫により、高付加価値のいちごづくりが行われている。

店頭で目にすることが多いさちのか。ぜひ、御賞味いただきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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