さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

日本最古の神社「花の窟」 三重県熊野市 3

2016-02-28 13:42:12 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号に続き、熊野市について取り上げる。
今週は舞台を伊勢路が続く沿岸部に移し、世界遺産に登録されている「花の窟(いわや)神社」を紹介したい。


【写真】「花の窟神社」

「花の窟神社」は熊野市の北東部の沿岸に位置する。
奈良時代に記された「日本書紀」で、「国うみの舞台」として記録に残る日本最古の神社。
祭神は、神々の母「イザナミノミコト」と、火の神「カグツチノミコト」。
「カグツチノミコト」を産んだ際に亡くなった「イザナミノミコト」が葬られた御陵で、御神体は高さ45メートルの巨大な岩(窟)とされている。

また、古くから近隣の人々が「イザナミノミコト」を弔い、季節の花々を備えて祭られてきた自然崇拝の地といわれ、神社の名である「花の窟」の由来とされている。

例大祭は2月2日(春季)と10月2日(秋季)に行われる。
神々に舞を奉納し、約170メートルの大縄を御神体である岩(窟)の上部から境内にある松の御神木に渡す神事。
「花の窟ののお綱かけ神事」として三重県の無形民俗文化財にも指定されている。
季節の花(春にはツバキの花、秋にはケイトウの花)を大縄に結ぶ習わしが特徴。

筆者が訪れると女性の参拝客が多い印象。
御神体である巨大な岩(窟)が、神社のほど近くにある熊野灘の波の音を深く轟かせるさまは、ここでしか味わえない、神聖で心を落ち着かせるものがある。
神社の脇を走る国道42号を渡れば、七里御浜が広がる。
そこからは御神体の全体を拝むことができるので、ぜひ浜辺も散策してほしい。

アクセスはJR熊野市駅から新宮駅行きのバスで約2分。「花の窟」で下車。国道42号に面し、駐車場もある。
この地ならではの自然崇拝の文化に触れてみては。

(次田尚弘/熊野市)
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地域が育む棚田の景観 三重県熊野市 2

2016-02-21 13:46:54 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
今週は、熊野市丸山地区(旧・紀和町)にある美しい棚田を紹介したい。

熊野市丸山地区は、前号で紹介のウォータージェット船「田戸乗船場」から南東へ約8キロに位置する集落。
そこに、1340枚の棚田が広がる「丸山千枚田(まるやませんまいだ)」がある。


【写真】丸山千枚田(展望台から全景を望む)

丸山千枚田は、白倉山の斜面を利用した棚田群で、広さは約7ha。高低差約160メートルの谷間に棚田が形成され、最も小さい棚田は僅か0.5平方メートル。
日本の棚田百選に選ばれ、石積みされた棚田の法面と稲が作り出す縞模様が実に美しく、棚田の全景が見える展望台からの風景は観る者を魅了させる。

丸山千枚田は1601年(慶長6年)に2千枚を超える田で形成させていたとされるが、昭和40年以降、稲作転換や過疎化による農作放棄が広がり、平成5年には5百枚余りまで減少したという。

棚田という貴重な農耕文化を後世に伝えねばならないと、平成5年、丸山地区の住民全員が参加する保存会が結成され、棚田の復元と保全活動を開始。
結成から4年で8百枚余りの復元に成功し、現在は1340枚となっている。
これらの活動は「熊野市丸山千枚田条例」として制定され、市民が一体となり棚田の保護に努めているという。

棚田の維持には多額の費用がかかるとされ、棚田のオーナー制度が設けられている。
会費は、棚田の景観維持と保全に充てられ、オーナーは手作業による田植えや稲刈り体験、定期的に開催される地域のイベントに参加できる。
募集は2月中旬から3月末まで。

丸山千枚田へのアクセスは、和歌山県側(国道169号)、三重県側(国道42号)から、いずれも国道311号を経由し、県道40号へ。地域の力で守られる棚田の魅力に触れてみては。

(次田尚弘/熊野市)
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3県が織りなす「瀞峡」の造形美 三重県熊野市

2016-02-14 19:36:37 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
今週は南牟婁郡御浜町のお隣「熊野市」を紹介したい。
熊野市は人口約1万8千人の市。市の東部は熊野灘に面し、西部は和歌山県との県境に接する。

和歌山県との境は熊野川と北山川で、本宮や北山村のすぐ対岸に位置するため和歌山との結びつきが強い。
熊野灘に面する七里御浜は「伊勢路(浜街道)」、熊野川は「中辺路(川の参詣道)」にあたることから、市の両端が熊野古道に面することになる。
海・山それぞれの魅力に恵まれた熊野市を、まずは和歌山県境側から紹介したい。

和歌山の観光名所としても馴染み深い「瀞峡(どろきょう)」は、和歌山県・三重県・奈良県の山々と、その境を流れる北山川が織りなす大渓谷。
青く澄んだ空、深い緑の山々、壮大な断崖、コバルトブルーの川のコントラストは実に美しく、四季によってその表情を変える姿は観る者を圧倒させる。

熊野交通が運営するウォータージェット船の立ち寄り地となる「田戸乗船場」近くは、和歌山県・三重県・奈良県の県境が交わる地点で「三県境(さんけんきょう)」と呼ばれる。


【写真】「三県境」(熊野市から瀞峡を望む)

「三県境」は43都道府県に存在するが、和歌山県の北山村全域と新宮市の一部が飛び地であるため、この3県で構成される県境は合計5カ所あり、全国的にも珍しい。

田戸乗船場の河原から山へと続く階段を数分上ると、三県境を記す看板があり瀞峡を一望できる。
川の水面より高い目線で見る瀞峡の姿は、絵葉書にしたいほど美しい。

田戸乗船場へはウォータージェット船でのアクセスが便利。約20分間の下船休憩時間に訪れるのもよし。
車でのアクセスは、奈良県側の「瀞郵便局(十津川村神下)」が目印。
3県が織りなす大渓谷の造形美に触れてみては。

(次田尚弘/熊野市)
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東紀州の「さんま寿司」 三重県南牟婁郡御浜町 2

2016-02-07 14:17:56 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号より御浜町を取り上げている。
同町の沿岸部にある七里御浜(しちりみはま)は、熊野古道伊勢路の「浜街道」として親しまれてきた。
浜街道が続く東紀州(尾鷲市以南)では、熊野灘で獲れる「秋刀魚」を使った郷土料理「さんま寿司」が有名。
今週はさんま寿司の魅力を紹介したい。


【写真】東紀州(紀南)の「さんま寿司」

さんま寿司の発祥は、熊野灘に面した東紀州といわれる。
親潮に乗って南下する秋刀魚は、北海道や三陸で獲れるものと比べやや小ぶり。
脂分は適度な量となっており、丸干や寿司への加工に適している。
また、蜜柑や柚子などの柑橘(かんきつ)類が豊富なため、それらを使い秋刀魚の臭みを消すことができ、薬味としても適している。

東紀州ではさんま寿司をハレの料理として親しまれてきた。
頭と尾が付いたままの秋刀魚にはめでたさがあるとされ、正月料理に欠かせないという。

地域性が現れるのが、秋刀魚の開き方。熊野市以南(紀南)のこの地域では背開きで、尾鷲市以北(紀北)では腹開き。
代官所があった熊野市では腹開きは切腹を連想させるとされ、腹開きや頭を落とすことは避けられてきたという。
秋刀魚の背は黒く、その部分が寿司の両端にあれば背開き、寿司の中央にあれば腹開き、といった具合だ。
薬味も異なり、紀南は柑橘酢をベース、紀北はカラシが用いられるなど、見た目は似ていても、よくよく比べると大きな違いがあるのも魅力のひとつ。

御浜町はじめ、さんま寿司を食べられるお店は多数。
秋刀魚の漬け具合や酸味も店によって様々。
道の駅などにある産直市場では家庭料理に近いものが販売されており、これもお薦め。

代々受け継がれてきた郷土料理の味に触れられるさんま寿司をぜひご賞味あれ。

(次田尚弘/御浜町)
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