さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

早生温州の代表格 発見から100年「宮川早生」

2021-08-29 13:36:38 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、県オリジナル品種として期待が集まる極早生みかん「YN26」を取り上げた。
今週は、ゆら早生の親品種で、早生みかんとして長い歴史を持つ「宮川早生」を紹介したい。


【写真】極早生よりも果皮が黄色く甘味が高い「宮川早生」

宮川早生は1915年(大正4年)頃、現在の福岡県柳川市にあった宮川氏の敷地で、温州みかんの枝替わりとして発見された品種。
発見から100年を超える歴史をもち、早生温州(わせうんしゅう)の代表格として知られる。

愛媛県内においては早生温州栽培の約8割が宮川早生で、露地栽培みかんの全栽培面積の約3割を占める。
和歌山県内でも栽培が盛んで、昨今は、ゆら早生やYN26を目にする機会が増えつつも、早生を代表する品種として店頭に並ぶ。

ハウス栽培されたものは6月頃から販売が始まり、贈答品として箱に綺麗に並べられたものが見られる。極早生に比べ、果皮が黄色く、緑の部分が少ないのが特徴で、高級品として扱われる。
露地物の出荷時期は11月上旬頃からで、極早生の後に出回る。

果実の大きさは、ゆら早生と比べ、ほぼ同じかやや大きめ。果皮は手で容易に剥くことができ、じょうのうは温州みかんの中で最も薄いといわれ、食べやすさは抜群。
極早生よりも酸味が低く、甘味が高いことから、酸っぱさが苦手で甘いみかんが好きという方におすすめで、子供から大人まで幅広く親しまれる。
ハウス栽培のものは1玉100円から150円程度。

早生温州の古株として日本の秋を彩る品種。極早生と食べ比べてみるのも面白い。

(次田尚弘/和歌山市)
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期待集まる、県オリジナル品種 極早生のトップバッター「YN26」

2021-08-22 16:30:03 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、糖度が高く香り豊かな極早生みかん「ゆら早生」を取り上げた。
今週は、ゆら早生を親とする新品種「YN26(ワイエヌニジュウロク)」を紹介したい。


【写真】収穫が早く甘味が強い「YN26」

YN26は平成13年に県果樹試験場で、ゆら早生と紅まどかを交配させてできた、ウンシュウミカンの新品種。着色や減酸が早く、早期の収穫が可能。
ゆら早生よりも成熟が早く、露地栽培でも9月中旬には収穫でき、ハウス栽培であれば8月上旬から出回る。
平成24年に品種登録されてから約10年。ゆら早生よりも一足早く、極早生みかんのトップバッターとして期待が集まる、県のオリジナル品種である。

見た目は、ゆら早生と瓜二つだが、外皮の着色がやや早く黄色の部分が多め。皮に張りが出るほど実がよく膨らみ、ゆら早生よりも外皮が剥きづらい印象。
じょうのうは薄くて食べやすく、糖度が高く減酸が早いことから、極早生みかんに見られる酸っぱさはなく、甘味が優勢。酸味が苦手な方には、ゆら早生よりもこちらをおすすめしたい。

YN26には、ゆら早生や宮川早生のような名称がなく、新品種の研究段階で機械的に付けられたであろう名称のまま。
ネット通販などではこの名称で販売されているケースが多いが、市場では生産者が独自に名付けた愛称で出回っている。

例えば、ゆら早生よりも早く収穫できることから「ゆらのさきがけ」、産地である紀州と親品種の名前をかけた「紀のゆらら」、ゆら早生の子供であることから「由良子」と名付けられるなど、生産者それぞれの思いが込められている。

ハウス栽培のものは、1玉100円から150円程度で販売。極早生みかんの新しい味を試してみては。

(次田尚弘/和歌山市)
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秋を感じる極早生みかん 糖度高く香り豊かな「ゆら早生」

2021-08-08 13:36:17 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、世界最大級の柑橘で1玉2千円を超える「晩白柚」を取り上げた。
暦の上では立秋を迎え、果物店や産直市場ではハウスみかんの販売が盛んになってきた。
今週は日高郡由良町で発見され、ハウスみかんの定番ともいえる存在となってきた「ゆら早生(わせ)」を紹介したい。


【写真】ハウス栽培の「ゆら早生」

ゆら早生は「宮川早生」から枝変わりした品種で、主に9月末から10月にかけて出回る「極早生みかん」のひとつ。昭和60年に生まれ、地元の農家の手により改良が加えられてきた。

いわゆる「運動会みかん」と呼ばれる果皮に青みが残り、小玉で酸っぱいイメージがある極早生みかんであるが、由良早生は糖度が高くほのかな酸っぱさの中にしっかりした甘味が広がる品種。
果皮はやや硬めであるが、これまで取り上げてきた春柑橘とは比べ物にならないほど薄い。じょうのうも薄く、剥かずに気軽に食べられるのも魅力。

輪切りにしてみると、みずみずしいオレンジ色の果肉と、柑橘特有の酸っぱい香りが広がる。
果実は5~6㎝で温州みかんのSサイズ程度が主で、小さい方が糖度が高く、濃い味を楽しむことができる。冷蔵庫で冷やして食べるのもおすすめ。

通常の露地栽培のものは9月下旬頃から出回るが、今の時期に店頭に並んでいるのはハウス栽培のもの。露地栽培と比べ生産量が限られていることもあり、1玉あたり100円~150円と高級品。
お中元やお盆の供え物としての需要もあり、この時期に流通が盛んになる。

秋を感じさせてくれる極早生みかん。暑さが厳しい毎日であるが、一足早く、涼しい秋の頃を想像しながら食べてみては。

(次田尚弘/和歌山市)
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世界最大級の柑橘 1玉2千円超えも「晩白柚」

2021-08-01 13:38:36 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、気候変動の影響で栽培が進む、イタリア原産の「ブラッドオレンジ」を取り上げた。
今週は「柑橘の王様」「世界最大級の柑橘」と呼ばれる、一風変わった春柑橘「晩白柚(ばんぺいゆ)」を紹介したい。


【写真】直径15㎝を超える県内産の「晩白柚」

晩白柚はマレー半島原産の柑橘でザボンの一種。直径20㎝、重さは2㎏程度とサイズが極めて大きいが、果肉は八朔などと変わらない程度の大きさで、皮が分厚いことが特徴。
糖度は12度程度と甘味があるが果汁が少ないため、サクサクとした食感である。

歴史は古く、1930年に台湾から鹿児島県の果樹試験場に株が入り、熊本県の八代地方が栽培に適しているとされ、品種改良の後、今や八代市の特産品となっている。
今年6月には5㎏を超える歴代最大の晩白柚が収穫され、ギネス記録を更新。柑橘の王様の名に相応しい記録が生まれている。

旬は2月から3月頃だが、ハウス栽培のものは12月上旬に旬を迎える。
目を見張るような立派さから、お歳暮の品として採用され、ハウス栽培のものは1玉あたり2千円を超える高級柑橘である。

果肉より分厚い皮の方が多い晩白柚は、皮を砂糖で煮てマーマレード状にする「ザボン漬け」に加工されることが多い。
表皮の下にある白いスポンジ状のアルベドと呼ばれる部分は、栄養価が高く、砂糖の甘味との相性がよく、さらにその分厚さから、加工品としての利用価値も高い。

2017年の農水省統計によると、主な産地は熊本県(839t)、鹿児島県(28t)、大分県(8t)と九州地方での栽培が主であるが、和歌山県内でも栽培されている。

1玉2千円を超える高級柑橘。余すことなく活用できる晩白柚は、工夫次第で大きな可能性を秘めている。

(次田尚弘/和歌山市)
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