さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

硫黄で燻蒸し製造 羊羹のような食感「あんぽ柿」

2023-02-26 16:39:39 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、甘さが抜群の「干し柿」の作り方を取り上げた。干し柿と似た存在で美味しく食べることができる「あんぽ柿」。
今週はあんぽ柿について紹介したい。


【写真】オレンジ色が美しい「あんぽ柿」

あんぽ柿は鮮やかなオレンジ色が特徴。干し柿に似ているが製造工程が異なる。
発祥の地は福島県とされ、柿を天日で乾燥させる「天干し柿(あまぼしがき)」が変化して現在の名になったとされる。

干し柿との違いは、硫黄を使い燻蒸(くんじょう)し乾燥させる点。燻蒸とは薬剤で燻(いぶ)すことをいう。
これはアメリカで干しぶどうを作る際に用いる工程を参考に取り入れられたもの。硫黄を使用しているが柿を乾燥させる際に揮発するため成分が残留することはない。

乾燥させる際も干し柿は30%程度の含水率で仕上げるのに対し、あんぽ柿は約50%となっており、しっとりとした食感が残るよう工夫されている。

あんぽ柿に使われる柿は、以前取り上げた「平核無柿(ひらたねなしがき)」や「蜂屋柿(はちやがき)」。
筆者が和歌山県内で購入したあんぽ柿は、平核無柿を使ったものであった。生産と出荷の最盛期は11月から翌2月にかけて。東北では降雪で畑に出られない農閑期の収入源となっている。

食し方は様々。販売されているまま食し、まるで羊羹のような食感と甘さを感じるのが一般的であるが、別の食材とアレンジして食べることもおすすめ。
マフィンなどの菓子にトッピングする方法や、生ハムやチーズと一緒におつまみにすることができる。

柿のシーズンが終わったあとも、その旨さの余韻を楽しむことができるあんぽ柿。ぜひ、様々な料理にアレンジし楽しんでほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

手間暇かけた自家製の味 甘さ抜群「干し柿」の作り方

2023-02-19 13:33:55 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号まで2回に渡り、干し柿にすることで脱渋を行い、美味しく食べることができる「愛宕柿」と「蜂屋柿」を取り上げた。
今週は干し柿の作り方を紹介したい。


【写真】干し柿を作る工程

干し柿は下処理を始めてから食べられるまでに3~4週間を要し、想像以上に手間暇をかける必要がある。

まず柿のヘタとその周囲の皮を、円を描くように剥き、続いて柿の頭頂部から下に向け縦に皮を剥く。次に長さ60cm程度のビニール紐を準備し、柿が2個で1組になるよう、柿の頭頂部に付いた枝の部分に紐の両端を結ぶ。
そして、殺菌するため、沸騰した鍋に5秒程度柿を入れ引き上げる。この処理を行うことでカビの発生を抑えることができる。
殺菌が終わると、家の軒下など日当たり、風通しのよいところに干す。雨があたるとカビが発生する原因となるため注意が必要。また、柿同士がくっつかないよう上下にずらして干すのがポイント。

そのまま1週間程度干し、外皮が固くなると、親指と人差し指を使い、押すようにして軽く揉む。
作り始めから約3週間で、柿がしぼみ、色が黒っぽくなってくる。これで干し柿の完成。

柔らかくなった実は非常に甘く、生で食べる柿とは違うもっちりとした食感。手間暇をかけて作るからこそ味わえる、自家製干し柿ならではの特権である。

前号でも記載したが、干し柿にする柿はできるだけ大きめのサイズを選ぶことをおすすめしたい。干し柿にすることで実が小さくしぼみ、小さい柿であると食べられる部分が僅かになってしまうからだ。

手間はかかるが、自分の目の前で徐々に出来上がっていく姿を見て、食べ頃を好みで調整することもできる自家製の干し柿。来シーズンはぜひ試してみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

100年以上の伝統を持つ 干し柿の最高級品「蜂屋柿」

2023-02-05 16:52:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号に続き、今週も干し柿にして食べるのが一般的である「蜂屋柿(はちやがき)」を紹介したい。


【写真】抜群の甘さと食べ応えがある「蜂屋柿」

蜂屋柿は岐阜県美濃加茂市蜂屋町で栽培が始まったとされる大玉の柿。釣鐘のような形をしており、果実の下へ行くほど先が尖っているのが特徴。
一般的には250g程度であるが、筆者が手に入れたものは300g程と大きめ。表皮はやや濃い橙色で、果肉はオレンジで種は無い。

前号で取り上げた愛宕柿と同様、袋詰めされたパッケージには「渋柿」と書かれ、干し柿にするためのビニール紐が同梱され販売されている。
筆者は愛宕柿と一緒に干し柿にしたが、食するためにかかる期間は同じく約3週間。愛宕柿と比べて大きなサイズで、乾燥しても大きな仕上がり。干し柿にした時の果肉の部分が多く、愛宕柿よりも食べやすい。甘味も強く、いくつでも食べられてしまう旨味がある。

美濃加茂市では蜂屋柿を使った干し柿が伝統品となっており「堂上蜂屋柿」の名称で販売されている。
サイズにより「誉」「雅」「寿」「秀」「優」の5段階に分けられ、最高ランクの誉は乾燥後の重さが1粒90g以上で、形や質が優れたものにだけ付けられる称号で最高級品。
1900年のパリ万国博で銀杯、1904年のセントルイス万国博で金杯を受賞した歴史を持つ。

平成24年の農水省統計によると、栽培面積の第1位が福島県(281.1ha)、第2位が長野県(25.0ha)、第3位が宮城県(23.6ha)、第4位が岐阜県(17.9ha)、第5位が群馬県(6.6ha)となっている。
統計上、和歌山県は現れないが、筆者はかつらぎ町の産直市場で購入。少ない量ながら県内でも栽培されている。
干し柿にする時は、できるだけ大きなサイズのものをおすすめしたい。

(次田尚弘/和歌山市)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする