さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

似た環境でも異なる食文化 B級グルメ「浜松餃子」

2017-08-27 14:04:37 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、果汁100%のミカンジュースを使った「みかんハイボール」の魅力とその作り方を取り上げた。
今週は作り方を教えてくれた居酒屋が勧める「浜松餃子」とその文化を紹介したい。

餃子と言えば宇都宮を想像される方が多いかもしれないが、総務省の家計調査によるとここ3年間の餃子購入額のトップは浜松市(1世帯あたり4818円で、宇都宮市は4651円)。
安価で庶民的な地域の食文化であるB級グルメとして知られている。

浜松餃子はキャベツや白菜などの野菜が中心で、餃子独特の臭みが無いのが特徴。
付け合せとして皿に盛られる「茹でもやし」も旨味を惹きたてる。


【写真】野菜たっぷりの「浜松餃子」

歴史を紐解くと、戦後すぐ浜松市では養豚業が盛んであったことから豚肉や脂が手に入りやすく、浜松市および近隣の愛知県でキャベツが豊富に収穫されたことから、野菜中心の浜松餃子が生まれたという。

一度により多くの餃子を焼くため、フライパン上に円形に並べて焼く方法が一般的となり、その中央に箸休めとして茹でもやしが添えられたことが現代まで受け継がれている。
さらに、外食を好まず屋台で餃子を買い自宅へ持ち帰り家族で食べるという文化が、餃子の購入量が多くなるきっかけであるという。

蜜柑で共通する和歌山において、なぜ餃子の文化は生まれなかったのか。
和歌山では中華料理という切り口ではなく、近隣から手に入りやすかった豚骨や鶏がら、そして醤油への親しみと手軽さから、豚骨醤油の独特なスープが生まれ、屋台の中華そばへと発展。今や全国に知られる和歌山ラーメンとなった。

似た環境にありながらも、そのご当地において、組み合わせやすい食材で市民に受け入れられ広まる味は様々。
故に各地の食文化に触れることは面白い。

(次田尚弘/浜松市)
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年間を通して魅力を伝える カクテル感覚の「みかんハイボール」

2017-08-20 13:30:54 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では浜松市の三ヶ日地区特産の「青島みかん」の特徴と旨味を惹き出す工夫を取り上げた。
この地域では丹精込めて作ったミカンの良さを年間を通して消費者に味わってもらおうと、商品開発や宣伝に余念がない。今週はその事例を紹介したい。

三ヶ日地区での取材を終え浜松市内で宿泊した際、近くの居酒屋で出会ったのが「三ヶ日みかんハイボール」。聞けば、前号で紹介の果汁100%のジュースを使っているという。
ハイボール人気が始まった数年前、地元のJAや飲料メーカーが協力しご当地のミカンを使用したハイボールを生み出し、静岡県内の飲食店で提供できるよう積極的な活動が行われたという。

実際に飲んでみるとジュースをストレートで飲むのとは違い、一口目に感じる酸味に炭酸のキレが相まって爽快。
氷とソーダ、ウイスキーで割っているのにミカンの濃い甘みが感じられ、お酒であることを忘れてしまうほど飲みやすい。「色が綺麗で柑橘の香りが特徴なのでカクテル感覚で飲めるんです」と店員さん。

作り方を教えてもらった。
①ジョッキに氷をいっぱいに入れる 
②ウイスキーを注ぎ十数回混ぜる 
③炭酸水を注ぐ 
④ミカンジュースを注いで軽く混ぜる というもので、ウイスキー:炭酸水:ジュースの比率は1:3:1が目安だという。


【写真】「みかんハイボール」の作り方

和歌山県産のミカンジュースで表現できないか検証してみると、一口目の酸味は薄いものの美味しくいただくことができた。
ジャバラジュースを混ぜれば更に美味しくなるのではと気づいた筆者。
まだまだ暑いこの夏を、色々なみかんハイボールで乗り切りたい。

(次田尚弘/浜松市)
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三ヶ日特産の「青島みかん」 特徴と旨味を惹き出す工夫

2017-08-13 16:36:38 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、浜松市でみかん栽培が盛んな三ヶ日地区と和歌山有田地区の交流と絆を取り上げた。今週は三ヶ日みかんの品種と特徴について紹介したい。

三ヶ日で主に栽培されているみかんは「青島」という品種。大玉でありながら高い糖度が自慢で貯蔵性に優れる。

一般的なみかんは外側の皮の色づき(着色)と果実の中身(内容)の成熟が同時に進行するが、青島は内容先熟型という皮の着色よりも内容の成熟が早いため、一般的に食べ頃とされる着色の8割程度の青みが残る状態で収穫される。

収穫後、皮の着色が進むまで貯蔵した後に出荷される。その間果物の皮(果皮)の呼吸を抑え貯蔵性を高めるため、1~2週間程度みかんに強制的に風を当て、果皮や果汁に含まれる水分の約5%を減らす「貯蔵予措(ちょぞうよさ)」という技法が用いられている。

さらに、貯蔵予措が完了した後、ロジ箱と呼ばれる木箱に詰め土壁の貯蔵庫で一定期間眠らせることで、果実の酸が分解され糖度が増すという。

筆者が取材に訪れたのは5月。みかんのシーズンではなかったが、期間限定醸造の果汁100%のジュースを手に入れることができた。
濃縮還元(果実に熱や圧力を加え濃縮保存した後、水で果汁に戻したもの)ではく、成熟期に搾ったストレート果汁で、内容量280ミリリットルの缶に約5個分のみかんが入っているという。


【写真】青島みかんを使ったジュース

実際に飲んでみると、一口目にジャバラ(和歌山県北山村特産)に近い独特の渋みを感じる。
コクのある甘みにほのかな酸味があり非常に濃厚。青島みかんそのものの風味が詰められた逸品だ。
ジュースは静岡県内の店舗の他、ネット通販でも購入できる。

(次田尚弘/浜松市)
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互いを知り、高め合う 三ヶ日と和歌山有田の交流と絆

2017-08-06 13:37:37 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号より浜名湖北岸の三ヶ日地区で盛んなみかん栽培の歴史を後世に伝える「みかんの里資料館」について取り上げている。

同資料館の管理を行う男性職員が語ってくれた、三ヶ日地区と和歌山有田地区の交流を紹介したい。

今から約30年前。みかん農家を営む男性のもとに、地元の商工会から「和歌山でみかん栽培が盛んな有田地区の農家と交流会をするが参加しないか」と誘いがあったという。

温州みかんの出荷量で競い合う立場にある静岡と和歌山。
ブランド力の高い有田へ行っても、どうせ静岡から何をしに来たのかと思われるのだろうと乗り気ではなかったが、有田は三ヶ日と地形が似ていることもあり何か得るものがあればと和歌山への訪問を決めた。

和歌山を訪れてみると、敵対心を感じることなど全くなく、よく来てくれたと歓迎を受け、害虫対策から高値をつけるための品質管理に至るまで、包み隠さず教えてくれた。

有田の方々は品質の高いみかんを作りたいという思いに溢れ、お酒を交わしながら互いに本音で話すことができた。
温かい心をもち、熱心な人たちだと感動したことが忘れられないと力説してくれた。

同資料館の裏手にある広場へ行ってごらんと男性はいう。そこには青々と茂った紀州みかんの木が2本植わっていた。
三ヶ日のみかん栽培の原点といえる紀州みかんを、今も大切に育て、秋になると資料館を訪れる子供たちが収穫し食べてもらう。歴史を伝える教材としても大切な存在であるという。


【写真】資料館で育つ「紀州みかん」

偶然、江戸中期に始まった両県の御縁。同じ思いをもつ者同士が更なる高嶺をめざす。互いを知り、交流することで生まれた絆が、日本の温州みかんの価値向上につながっている。

(次田尚弘/浜松市)
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