さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

名古屋の朝は「小倉トースト」 和歌山と同率、喫茶店の人口割合

2018-06-24 13:49:35 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、食べ方が特徴的な「ひつまぶし」が生まれた理由のひとつに、豆味噌の醸造工程で生まれるたまり醤油が使われ、暑い気候を乗り切るためのアイデア料理であることを取り上げた。
今週も話題は名古屋めし。昨今、名古屋発祥のチェーン店の出店により県内でも目にすることが増えた「小倉トースト」。生まれた経緯と、喫茶店に関連する和歌山市の日本一を紹介したい。


【写真】小倉トースト

小倉トーストは名古屋の朝に欠かせない存在。モーニングを注文するとサービスで提供される。トーストに塩バターを塗りその上に小倉あんをかけて食べる。

生まれたのは大正10年頃のこと。中心地・栄にあった、ぜんざいが人気の店が事の始まり。当時、流行であったバタートーストを、当時の大学生らがぜんざいにくぐらせて食べていた。それを見た店主が小倉トーストを思いつき、メニューにしたところ大ヒット。昭和30年頃には名古屋市内の多くの喫茶店で提供されるようになったという。

喫茶店でモーニングを楽しむという文化は、市民が喫茶店を好む証。平成26年の総務省統計局の資料によると、人口1千人あたりの喫茶店数は、愛知県が第3位。

筆者が驚いたのが、和歌山県が同率で第3位であること。さらに、県庁所在地および政令指定都市の喫茶店の総数に占める、個人経営の割合の第1位が和歌山市、第2位が堺市である。
言われてみれば、小さくともそれぞれに個性があり、マスターがこだわりを持って提供してくれるところが多く感じる。

古くから茶の文化が盛んであったからなのか、その理由は定かではないが、店ごとに異なる魅力に触れられる喫茶店。
和歌山市民にはその味わいに触れるチャンスがある。

(次田尚弘/名古屋市)
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気候に合わせたアイデア料理 たまり醤油が決め手「ひつまぶし」

2018-06-17 17:04:37 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、名古屋めしの代表格である「きしめん」の語源が、紀州徳川家が持参した「紀州麺」にある可能性を取り上げた。
今週は、食べ方が特徴的な「ひつまぶし」を紹介したい。


【写真】たまり醤油が使われた「ひつまぶし」

ひつまぶしは、うなぎの蒲焼きを短冊状に刻み、おひつに入れたご飯の上に敷き詰めるのが基本の形。茶碗によそい、1杯目はそのまま、2杯目は薬味をちらし、3杯目はお茶漬けにする。1つの料理で3度、美味しさを楽しめる特徴的な料理。

名古屋で親しまれ現代に受け継がれる理由は、身近に手に入る食材であることに加え、その地域の気候にも関係。
岡崎で豆味噌(赤みそ)の醸造工程で生まれる「たまり醤油」が、蒲焼きに使われている。
たまり醤油は濃いうま味の強さが特徴。これをベースにすることから、うなぎを刻んでも食べ応えがあり、お茶漬けにしてもその風味が消えることが無い。

また、地域特有の夏の蒸し暑さも関係。うなぎは夏バテ対策に有効な栄養食といわれ、さらに、たまり醤油にはナトリウムとマグネシウムが豊富に含まれる。
疲労回復にはビタミンと、ナトリウムやマグネシウムなどのミネラルの摂取が有効。
それらが凝縮され、食欲が減退したときでも異なる味で小分けに食事ができることもアイデアのひとつ。地域ならではの先人の知恵だ。

たまり醤油は鎌倉時代、紀州湯浅で金山寺味噌を作る工程で見つかったもの。
紀州に目を向けると、近海で獲れるしらすに梅干しとシソ、たまり醤油をかけた「しらす丼」がある。
しらすの栄養に加え、梅干しのクエン酸は殺菌作用があり、シソは胃液の分泌を促すことから、夏バテ対策に効き目があるはず。
先人から育まれた地域に根差す栄養食で今年の夏も乗り切りたい。

(次田尚弘/名古屋市)



名古屋の取材に同行した際にセントレア空港で食べた「ひつまぶし」。


店員さんから聞いた通り1杯目はそのまま、2杯目は薬味をちらし、3杯目はお茶漬けにして、1つの料理で3度美味しさを楽しめました。
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語源は紀州麺にあり? 名古屋めしの代表格「きしめん」

2018-06-10 14:00:48 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、地域が育む食文化として知られる「名古屋めし」の歴史を取り上げた。
代表例として挙げられる鶏料理や味噌をベースにしたカツや煮込みうどん、養殖される鰻や近海で獲れるエビなど、ご当地が誇る食材が採用されるケースが多いが、平たい麺が特徴の「きしめん」は何が起源なのか。今週はその歴史を紹介したい。

きしめんは、幅広で平たい形状のうどんとして「平打ちうどん」とも呼ばれ、幅4.5mm以上、厚さ2mm未満の帯状に成形したものとしてJAS(日本農林規格)の表示基準で定められている。
群馬県では「ひもかわ」、岡山県では「しのうどん」として全国各地で親しまれている。


【写真】平麺が特徴の「きしめん」

名古屋限定の食材ではないきしめんであるが、名古屋めしで最も歴史のあるもの。その由来は尾張徳川家の時代に遡る。

諸説あるが、ひとつは「雉(きじ)肉」を入れた「きじめん」として尾張徳川家のみが食することを許された特別なものであったというもの。
もうひとつは、紀州徳川家が尾張に土産として持参した麺を「紀州麺」として尾張徳川家が喜び、その名を短縮してきしめんと呼ばれるようになったとか。

庶民に普及した理由は、雉肉ではなく油揚げを使えば庶民が食べてよしと藩主が認めた、あるいは、面積が広く早く茹でられることから燃料代を節約できるようにと倹約のために推奨された、濃厚な味を好む地域であり表面積が広い麺はつゆの乗りがよくなる、など、ご当地らしい理由の数々。

元々の起源がどこにあるのか、今となっては特定できないが、徳川家に関係することに違いはなさそう。
名古屋めしの代表格であるきしめんをぜひご賞味あれ。

(次田尚弘/名古屋市)
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徳川宗春にその精神あり? 地域が育む食文化「名古屋めし」

2018-06-03 16:46:55 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、政策で対立するも吉宗との親交があった、尾張藩7代藩主・宗春の生涯を取り上げた。
尾張発展の立役者である宗春の精神は、今なお、名古屋の人々に受け継がれている。
先に取り上げた「金シャチ横丁」では、名古屋で生まれ親しまれている「名古屋めし」と新しい食文化を発信する試みが行われている。
今週は、名古屋めしの歴史を紹介したい。

名古屋めしとは、主に名古屋市を中心とした中京圏で提供される名物料理の数々をさす造語。
一般的な料理に地域特有のアレンジを加えたもので、味付けが濃厚であることや、強いインパクトを持っていることで知られる。

名古屋は古くから養鶏が盛んであったことから、名古屋コーチンを用いた日本料理が代表的であったとされる。
しかし、戦災の混乱でその食文化は衰退し、一方で屋台街が栄えるようになる。
そこで、岡崎市を中心に製造され中京圏で親しまれる「豆味噌(八丁味噌などの赤みそ)」をベースとした料理が生まれ、地域に浸透していった。

数十年の時を経た2000年頃。名古屋市の外食チェーン店が東京進出し、名古屋の料理を提供。御当地料理に「名古屋めし」と名付けたことがその名の始まりという。

その後、手羽先の唐揚げの有名店など、名古屋の企業が東京へ進出する際に「名古屋めし」とうたい、首都圏でその名が広がった。
2005年に愛知県内で開催された国際博覧会「愛・地球博」で名古屋が注目されたことも後押しし、その名が全国的に知られるようになった。


【写真】名古屋コーチンを使った親子丼

代表例は、名古屋コーチンなどの鶏料理、手羽先の唐揚げ、味噌カツや味噌煮込みうどん、きしめん、ひつまぶし、エビフライ、小倉トーストなど様々。
そこには地域が育んだ食文化の数々が隠されている。

(次田尚弘/名古屋市)
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