さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

レモンの常識を覆す 食べられる「スイートレモネード」

2024-04-28 14:00:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、甘味と酸味のバランスが絶妙で、赤い果肉が特徴の「スタールビー」を取り上げた。希少な存在である国産のグレープフルーツ。今週は県内で栽培されている国産レモンの一種「スイートレモネード」を紹介したい。


【写真】食べるレモン「スイートレモネード」

スイートレモネードは「食べるレモン」と呼ばれる品種。果重は100g程度。糖度は高いもので10度に達し、酸度は一般的なレモン(25度程度)よりも極めて低い5度程度。

食してみると、甘味と酸味のバランスに優れ、レモン特有の風味もあり、その名のとおり「レモネード」の味わい。レモネードはレモンに蜂蜜などを入れて作るのが一般的だが、スイートレモネードは果汁と共に果肉も楽しめる果実となっている。果皮は容易に手で剥くことができ、みかんのようにそのまま食べられる。

ワックスや防腐剤が添加されていないため、皮ごと薄くスライスし食べ物に添えることや、ジャムやマーマレードに加工することも可能。

原産はニュージーランド。自然に落ちた種が成長し、種子親を超える特性をもつものに成長し、偶然発見された「偶発実生(ぐうはつみしょう)」。日本で栽培が始まった時期は定かではないが、静岡県を中心に栽培。以前、筆者が居住していた沼津市では「沼津ブランド」に認定され、搾った果汁を瓶詰めにした飲料として販売。地域の新しい産業としての期待も大きい。

5月から6月頃に開花し、収穫期は翌年の1月から5月頃まで。収穫できる期間が長いことから、店頭に並ぶ期間も比較的長い。筆者は紀の川市で栽培されたものを産直市場で購入した。

食べるレモンという、常識を覆すような新しい柑橘。店頭で見ることがあれば、試しに食べてみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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甘味と酸味の絶妙なバランス 赤い果肉が特徴「スタールビー」

2024-04-21 15:48:50 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、高糖度が特徴の新品種で、柑橘産業の振興が期待される「あすみ」を取り上げた。
今週は、今の時期に旬を迎える柑橘で、味わいが良好な、国産のグレープフルーツ「スタールビー」を紹介したい。


【写真】赤くて瑞々しい果肉が美しい「スタールビー」

スタールビーは1930年頃、アメリカで発見された品種。日本国内に入った時期は定かではないが、僅かながら日本でも栽培されている。
以前、このコーナーで紹介した国産グレープフルーツ(紀の川市で栽培)は果肉が白い「ホワイト・マーシュ」と呼ばれる品種。今回、果肉が赤い「スタールビー」を県内の産直市場で見つけた。栽培地は田辺市。

果重は300g程度と大きめ。温暖な地域でも日本のように厳しい寒さがある地域は腰高の球体になる傾向があり、海岸部などの温暖な地域や施設栽培される際はやや扁平な扁球形となる。
果皮の厚さにも地域性があり、寒さがある地域ほど厚みが増え1cmを超えるものも。暖地では5mm程度と薄くなる。果皮の色にも差があり暖地ほど橙色に近くなる。筆者が購入した県内産のものは1cmに満たない厚みであった。

特徴は鮮やかな赤い果肉とみずみずしさ。赤い果肉には、抗酸化性が強く、動脈硬化の予防に効果があるとされるリコピンが多く含まれているという。

食してみるとグレープフルーツ特有の酸っぱさよりも甘さが先行。それでいて、程よい苦みが残り、甘味と酸味のバランスが取れた絶妙な味わいである。果汁の多さも嬉しい点である。

食べ方は、半分にカットしスプーンですくって食べるのが一般的だが、スマイルカットにして食べやすくすることも。果汁を搾り、焼酎と炭酸水で割ったスカッシュとして楽しむこともできる。

旬は4月下旬から7月中旬。ぜひ味わってみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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高糖度が特徴の新品種 柑橘産業の振興に期待「あすみ」

2024-04-14 13:34:35 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、食味が優れ高級品種として知られる、愛媛県のオリジナル品種「まどんな」を取り上げた。深い甘さが特徴のまどんなに続き、今週は抜群の糖度を誇る「あすみ」を紹介したい。


【写真】強い甘さと香りが魅力の「あすみ」

あすみは、「上田温州」と「八朔」の交配種である「スイートスプリング」に「トロビタオレンジ」を交配した「カンキツ興津46号」と、「清見」と「ポンカン」の交配種である「はるみ」を掛け合わせたもの。

1992年に育成が始まり、2014年に品種登録されている。名前は親の品種である、はるみの子どもであることと、明日の柑橘産業を担ってほしいという思いに由来するという。

果実の重さは150g~200gで、一般的な温州みかんと比べやや大きめ。扁球形で頭頂部がやや膨らんでおり、色は濃い橙色をしている。

特徴は何と言ってもその甘さ。栽培環境によるところもあるが、糖度が17%に達するものがあるほど。親の品種から受け継いだ、オレンジのようなさわやかな香りがあり食味がよい。果皮は薄いため剥きやすい。じょうのうも薄いことから容易に食べられる。種は少しある程度であまり気にならない。みかんに含まれ健康によいとされるβ-クリプトキサンチンが一般的な温州みかんよりも多く含まれる。

この品種は、かいよう病への耐性が低いため露地栽培よりもハウス栽培に向いており、筆者が購入したものもハウス栽培であった。
主な収穫期は1月下旬から3月上旬頃。比較的新しい品種で、まだ栽培が盛んになっていないため、農水省が公表する統計上、その生産量の記載はないが、全国で栽培可能。筆者は2月中旬に県内の産直市場で購入した。

高糖度で魅力的なあすみ。その名のとおり、明日の柑橘産業を担う品種として期待したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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地域で進むオリジナル品種 食味が優れた高級品種「まどんな」

2024-04-07 19:23:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、貯蔵技術を活かしブランド化が進む、濃い味と香りが特徴の「麗紅(れいこう)」を取り上げた。
今週は、旬は過ぎているが、麗紅に引けを取らないほどの深い甘さが特徴の「まどんな」を紹介したい。


【写真】果皮が薄く、果汁たっぷりの「まどんな」

まどんなは、1990年から愛媛県の果樹試験場で育成が行われ、2005年3月に品種登録された。品種名は「愛媛果試第28号」。販売時、JAから出荷されるものには登録商標の「紅まどんな」の名で販売。名前の由来は、愛媛県松山市が舞台の夏目漱石の小説「坊ちゃん」に登場する「マドンナ」にあるという。

「南香(なんこう)」と「天草(あまくさ)」を交配してできた品種で、果重は250g程度と大きめ。ヘタの方がやや盛り上がっているのが特徴。外皮が薄くて柔らかく、デリケートであるため、雨が当たらないよう、ビニールハウスなどで施設栽培されることが多い。外皮と果実が密着しているため、手では剥きづらく、ナイフでスマイルカットに切って食べるのがおすすめ。じょうのうも薄く、種はほとんど入っていないため、食べやすい。

魅力は何といっても糖度の高さと果汁の多さ。紅まどんなは糖度10.5度以上、酸度1.2度未満という基準を満たす必要がある。
贈答品として好まれ、価格は2Lサイズ5kgで8千円程度。1個あたり400円程度に相当する高級な品種といえる。

農水省統計(2020年)によると収穫量は4200t。愛媛県では、県が育成・登録した品種を種苗法に基づく育成者権保護の観点から、県外での栽培を認めておらず、愛媛県独自のオリジナル品種となっている。

近年、栽培地域を限定しブランド化を図る動きが進む。地域の特性を活かした魅力ある柑橘が生まれ、農業の振興につながることを期待したい。

(次田尚弘/和歌山市)
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