さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

全国1位の生産量 150年の歴史を持つ「八朔」

2021-06-27 16:48:16 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、国内唯一の産地として希少性が高く、これから旬を迎える「バレンシアオレンジ」を取り上げた。
春柑橘のほとんどは旬を終える季節となったが、生産量が多く県を代表するものやユニークな品種を紹介していきたい。

まず紹介したいのが「八朔(はっさく)」。
古くから親しまれる春柑橘で、旬は1月~4月頃。2017年の農水省統計によると、和歌山県における八朔の収穫量は約2万5千トンで全国1位。シェアの7割以上を占める一大産地となっている。


【写真】外皮の厚みとほろ苦さが特徴の「八朔」

八朔は1860年頃、広島県尾道市の因島で発見された品種。自生していた寺の住職が「八朔の頃には食べられるだろう」と言ったことからその名が付いたという。
八朔とは八月の朔日(さくじつ)を指し、朔日とは1日の意味で、旧暦の8月1日にあたる。実際の旬とはかなり離れているがその名が定着。その名が広く知られるようになった。

果実の重さは400グラム程で大型。皮は厚くて剥きづらく、じょうのう(中袋)も厚い。酸味が強いことからほろ苦く、果汁が少ないことからパリッとした食感が特徴。
苦み成分であるナリンギンやリモニンを含み加熱すると苦みが増すことから加工品としては不向きとされる。

県内では主に紀の川市や有田川町で生産され、苦みを抑えた「さつき八朔」という品種も登場している。

古くから親しまれる八朔であるが、1980年頃の収穫量約20万トンをピークに現在は約3万トンまで数を減らしている。
他の春柑橘の台頭で致し方ないところであるが、品種の特徴を活かした味わい方で、いつまでも和歌山の特産品として残していきたいものである。

(次田尚弘/和歌山市)
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和歌山県は国内唯一の産地 これからが旬「バレンシアオレンジ」

2021-06-20 16:34:44 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、甘味と酸味の絶妙なバランスが魅力的な「甘夏ゼリー」の作り方を取り上げた。
6月も中盤を過ぎ、店頭に並ぶ春柑橘の姿は僅かとなったが、これから夏にかけて旬を迎える柑橘がある。
今週は「バレンシアオレンジ」を紹介したい。


【写真】和歌山県産のバレンシアオレンジ

バレンシアオレンジの原産地はアメリアのカルフォルニア州。その名はスペインのバレンシア地方に由来するが、元々この地方で栽培されていた柑橘と姿が似ていたことから、その名が付いたのだという。

特徴は開花から収穫まで400日もの期間を要すること。一般的な柑橘は200日前後であるため、栽培にかかる期間はその倍。
収穫間近の果実と開花後間もない果実が同じ木に共存する、珍しい品種である。

重さは200g程度で温州みかんより少し大きなサイズ。青みがかった表皮から、熟す前に収穫されたのではないかと思われがちだが、回青現象という春の時期に葉緑素を取り込むことで起きるもの。収穫前に青くなるという不思議な柑橘である。

味は甘味と香りが強く酸味は少なめ。皮が固く剥きづらいため、食べやすいよう、くし切りにするのがおすすめ。

バレンシアオレンジのほとんどは海外からの輸入で国産はごく僅か。
平成30年度産特産果樹生産動態等調査によると国内の主な産地は和歌山県のみで収穫量は約240t。県内の主要産地は湯浅町、田辺市、広川町となっている。

輸入品には輸送機関の長さから防腐剤が添加されることが多いが、国産品にはその心配がないのが嬉しいところ。
希少性が高い国産バレンシアオレンジ。冷やして食べても美味しい、この時期ならではの柑橘をぜひ。

(次田尚弘/和歌山市)
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甘味と酸味の絶妙なバランス 果汁たっぷり「甘夏ゼリー」

2021-06-13 14:00:06 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、甘夏をはじめ、和歌山県産の様々な柑橘を使った贅沢なエッセンシャルオイルを取り上げた。
食べてもよし、嗅いでもよしの甘夏。今週はこの時期にぴったりの食べ方である「甘夏ゼリー」を紹介したい。

作り方は簡単。まず、甘夏を水洗いし横半分に切り、しぼり機を使い果汁を取り出す。この時、甘夏の外皮を傷つけないよう注意されたい。
しぼり終えた甘夏をゼリーの器として使用するため、内部に残った薄皮はスプーンなどを使い綺麗に取っておく。

続いて小さな鍋に、取り出した果汁(甘夏4個で約350ml)に50mlの水、40gの砂糖を加え、これらが溶けるまで中火で熱する。
そこへ粉末のゼラチンを入れ、しっかりと溶かす。そして先に用意しておいた器へ流し込み、冷蔵庫で約2時間冷やせば出来上がり。

そのままスプーンで食べてもよいが、器を半分に切ることで柑橘らしい断面が現れ、ちょっとしたデザートとして料理に花を添えることができる。


【写真】簡単に作れる「甘夏ゼリー」

実際に食べてみると、すっきりとした爽やかな味わい。普通に甘夏を剥いて食べるよりも果汁の濃さを感じ、一口目は甘さを感じるものの後から来る酸味の味わいが絶妙で、ゼリーにすることで甘夏の良さが引き立つように思う。
驚いたのが甘夏を絞ったときの果汁の多さ。たっぷりの果汁がある甘夏ならではの楽しみ方である。

早くも真夏日を記録したこの時期。お子さんやお孫さんにも喜ばれる甘夏ゼリーを、ぜひ試してみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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県産柑橘100%の贅沢な精油 中野BC「FRAGRANT KISHU-WAKA」

2021-06-06 13:34:37 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号より「甘夏」の魅力を取り上げている。
今週は、和歌山県産の甘夏を使った香り豊かなエッセンシャルオイルを紹介したい。

製造・販売するのは、海南市藤白の酒造メーカー、中野BC株式会社。2015年から「エッセンシャルオイル FRAGRANT KISHU-WAKA」の販売を開始。


【写真】甘夏の果皮から作られた精油

きっかけは、有田市で柑橘の栽培や加工を手掛ける株式会社伊藤農園が、これまで廃棄していた、ジュース造りで搾り終わった果皮を活用できないかと同社へ持ち掛け実現したもの。
甘夏の他に、三宝柑、温州みかん、柚子、レモン、仏手柑を販売。

柑橘から精油を取り出すのは容易ではない。果皮を圧搾するのが一般的だが、同社は冷凍した果皮を粉砕し、焼酎づくりのノウハウを活かした水蒸気蒸留法で抽出。
20種類もの県産の柑橘の中から香り豊かなものを選抜し商品化。甘夏の場合、5mlの精油を取り出すために約56個もの果実を使用し、贅沢なエッセンシャルオイルが完成した。

使ってみると甘夏ならでは爽快な香りと甘さが部屋中に広がり、心を落ち着かせてくれる。
甘夏に含まれる成分「リモネン」には、血行を促進する作用や緊張を和らげる鎮静作用、空気を殺菌する作用があるとされ、癒し効果は抜群。

同社の売店やウェブサイト、キーノ和歌山などで販売。5ml入りで税込2200円(仏手柑は税込3850円)。
観光課の妹尾さんは「1年中、柑橘の香りを楽しめます。様々な柑橘のアロマで癒されませんか」と話す。

同社が培った醸造技術と伊藤農園の蜜柑栽培の技術。廃棄を防ぎ、地域性が高く新たな価値あるものを生み出そうとする強い思いから生まれた商品。
いつでもどこでも、和歌山の柑橘に触れられるエッセンシャルオイル。ぜひ、使ってみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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