さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

気候変動の影響で栽培が進む イタリア原産「ブラッドオレンジ」

2021-07-25 16:45:25 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、一風変わった春柑橘として、レモンのような見た目が特徴の「はるか」を取り上げた。
今週は、外観は一般的な柑橘と変わり無いが、果肉が驚きの色をしている「ブラッドオレンジ」を紹介したい。


【写真】赤い果肉が特徴の「ブラッドオレンジ」

ブラッドオレンジ(タロッコ)はイタリア原産で、果肉が血(ブラッド)で染められたように赤いことから名付けられた。
特徴的である果肉の色は、柑橘類の果実には珍しいアントシアニンと呼ばれる色素によるもの。
抗酸化物質として知られ、ブルーベリーなどにも含まれているポリフェノールの一種である。

サイズは温州ミカンより少し大きめ。甘味が強く、果汁も多いことから、一般的なオレンジと同じようにナイフで八つ切りにして食べるのがおすすめ。

イタリア原産のブラッドオレンジが日本で栽培されるようになったのは、ここ十数年のこと。
1970年代に日本に持ち込まれたが、イタリアと比べ日本は栽培の適温とされる気温が2度程度低く、栽培に適さなかった。
しかし、2004年頃には地球温暖化が原因とみられる高温により、日本でも栽培が可能となった。
愛媛県では、高温により温州ミカンに浮き皮が発生し、品質低下が見られるようになったことから、ブラッドオレンジの栽培へ転換する農家が増え、国産のブラッドオレンジが出回るようになった。

農水省が公表する2018年の統計では、主な生産地は、愛媛県(258t)、大分県(14t)、香川県(2.7t)。
ごく僅かではあるが和歌山県内でも生産されており、筆者は産直市場で購入した。旬は3月から5月頃。

地球温暖化による影響で栽培できるようになった新たな春柑橘。気候変動により、適温が高い柑橘が育つ現状は複雑だ。

(次田尚弘/和歌山市)
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スプーンで食べる柑橘 レモンのような見た目「はるか」

2021-07-18 16:52:29 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、柑橘の魅力を余すことなく活用できる「オレンジピール」の作り方を取り上げた。今週より一風変わった春柑橘の数々を紹介したい。

まずは「はるか」という品種。柚子が変異して出来たとされる「日向夏(ひゅうがなつ)」が更に自然交雑したもので、昭和55年に福岡県で発見され、平成8年に品種登録された。


【写真】レモンのような色と形の「はるか」

一般的な柑橘で見られる橙色ではなくレモンに近い黄色で、ゴツゴツした外皮から、レモンのような酸っぱさを連想するが、実際には酸味が少なく爽やかな甘さ。旬は2月から4月頃。

特徴的であるのがその食べ方。外皮の分厚さから手で剥くのは難しく、果実の中心部分に種が多いことから、まるで桃を切るときのようにナイフを使い、果実の中心部分を細く残すように縦に切る。
さらに果実を回し、複数回(8回程度)に分けて切り進めると、種が多く集まった円柱型の中心部分と、種が無い実の部分に分かれる。
最後に実の部分を横に切り、半月の形に仕上げれば、食べやすくなる。

他にも、果実を横半分に切り、断面から実をスプーンで食べるという方法もある。
筆者が購入したはるかの包装には「スプーンで食べる柑橘」と謳われており、試しにスプーンで食べてみることにした。
見た目によらず、実は柔らかく水分が豊富で、プルっとした食感。

スプーンで食べるという一般的な柑橘とは違った食べ方が楽しめる「はるか」。農水省統計(2017年)によると、収穫量の1位は広島県(735t)で、和歌山県は4位(107t)。
県内でも流通しているので、来シーズン、柑橘売り場で見つけ試してみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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柑橘の魅力を余すことなく活用 香りと甘さが融合「オレンジピール」

2021-07-11 13:38:23 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では八朔の特徴を活かした加工品のひとつである「フルーツビール」の魅力と作り方を取り上げた。
八朔の果実は熱を加えると苦みが増すためジャムなどへの加工は不向きだが、分厚く香ばしい香りがする果皮を活用した加工品がある。
今週は柑橘の香りと甘さが融合したお菓子「オレンジピール」とその作り方を紹介したい。


【写真】「オレンジピール」の作り方

ピールとは柑橘の果皮を砂糖水で煮詰め、それを乾燥させたドライフルーツの一種。
作り方は剥いた果皮の内果皮(白い部分)をできるだけ包丁で切り落としたうえで、5mm幅の短冊切りにする。

次に沸騰したお湯に果皮を入れ1分程度ゆで、流水で流し水気を切る。これを2回繰り返す。続いて、鍋に水と上白糖を入れ中火にかけ、上白糖が溶けたタイミングで果皮を入れ、砂糖水が半分程度になるまで10分程度煮詰める。柑橘2個分の果皮を調理する場合、水100mlにつき上白糖100gが適量。

煮詰まった果皮をクッキングシート上に1つずつ並べ粗熱を取り、ポリ袋に果皮を入れ、グラニュー糖をふり混ぜ(30g程度)、全体にまぶす。最後にラップをかけず冷蔵庫で30分程度冷やし、皿に盛り付ければ完成。

市販されているピールと比べ、湿度が残り柔らかい食感であるが、柑橘の爽やかな香りと砂糖の甘味が口いっぱいに広がり、苦みは感じられない。
柑橘の素材そのものを体感できるお菓子で、子供から大人まで楽しめること間違いなし。

柑橘を余すことなく、ほぼ全てを利用し美味しく食すことができる方法のひとつ。ぜひ、ご家庭でピールを作ってみては。

(次田尚弘/和歌山市)
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八朔の特徴を活かした加工品 「フルーツビール」の魅力と作り方

2021-07-04 13:30:14 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、和歌山県が全国1位の生産量を誇り、150年以上の歴史を持つ「八朔」の歴史と生産量の変化を取り上げた。
酸味が強くほろ苦さがあることから、近年、生産量を伸ばしてきた他の春柑橘の台頭を許し、ピーク時の6分の1程度まで減っている。
発祥の地である広島県などでは、歴史ある八朔を後世に残そうと、特徴を活かした加工品の開発に乗り出している。
今週は、八朔を使ったフルーツビールと、その作り方を紹介したい。


【写真】琥珀色に濁る「フルーツビール」

フルーツビールとは、発酵後のビールにフルーツの果汁を加え貯蔵タンクで熟成させたもので、アルコール度数が低めに設定された発泡酒。柑橘に加え、桃、マスカット、イチゴなど種類は様々。
八朔は特徴である爽やかな香りとほろ苦さがビールとマッチしていることから、フルーツビールの原料としてふさわしいという。

フルーツビールの場合、貯蔵タンクで熟成するという工程があるが、市販のビールを使い家庭で作ることも可能。ビールのなかでも、上面発酵酵母を使った「エールビール」と呼ばれるものがおすすめ。
エールビールのフルーティーな香りが八朔の爽やかさで更に引き立ち、ほろ苦さが後味を良くしてくれる。
果汁を絞って入れるのもよし、輪切りに切ったものを10分程度浮かべ、サワーのようにするのもよし。ビールと果汁の比率は味見をしながら好みに合わせて調整してほしい。

広島県では特産のレモンと八朔の果汁を使ったサワーを開発し、全国のコンビニチェーンで販売されるなど、八朔を使ったお酒を楽しむ機会が増えてきた。
まもなく夏の到来。冷えたビールやサワーが美味しい季節。柑橘を使った爽やかなお酒を探してみては。

(次田尚弘/和歌山市)
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