さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

代謝の促進、疲労回復に有効 多様なアレンジも魅力の「甘夏」

2021-05-30 13:46:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、糖度15度超えの甘味が魅力の「カラマンダリン」を取り上げた。
まもなく6月。春柑橘のなかで、最後まで店頭に並ぶのが「甘夏(あまなつ)」。
今週は甘夏を紹介したい。


【写真】甘酸っぱさが特徴の「甘夏」

甘夏は、昭和10年頃、大分県で発見された品種。夏みかんとして育てられていた果樹の中で、その樹だけ酸が抜けるのが早いことが目に留まり、栽培が広がったとされる。
正式名称は発見者の名にちなみ「川野夏橙(かわのなつだいだい)という。

果実の重さは300gから500gでずっしりした重み。外皮が分厚く手で剥きづらいが香りがよく、ぷちぷちとした果肉と甘酸っぱさが特徴。
生食の他に、サラダにトッピングして爽やかに食べたり、ほろ苦さをアクセントにしたスイーツにしたりと用途は様々。
食べる以外にも、外皮を搾り精油されたエッセンシャル(アロマ)オイルが販売されるなど、多様なアレンジができることも魅力。

甘夏にはビタミンB1が豊富に含まれることから、糖質の代謝を促す効果があり、さらに甘酸っぱさの中にクエン酸が含まれることから疲労回復が期待されるなど、この時期の急な気温の変化や高い湿度で疲れた体に有効な柑橘でもある。

農水省統計(2017年)によると、主な生産地は、鹿児島県(33%)、熊本県(21%)、愛媛県(19%)、和歌山県(8%)、静岡県(4%)。
最盛期の1980年代に年間30万トンもの収穫量があったが、現在は3万トン程度にまで減少。一説には、似た味わいのグレープフルーツの輸入自由化が原因とされる。

古くから親しまれてきた味。アレンジ次第で楽しみ方が多様な甘夏は、6月下旬頃まで店頭に並ぶ。

(次田尚弘/和歌山市)
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熟成期間が長く、今が旬の春柑橘 糖度15度超えの甘味「カラマンダリン」

2021-05-23 16:31:33 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、後世に残したい和歌山の郷土料理である、三宝柑を使った「茶わん蒸し」の作り方を取り上げた。
今年は早くも梅雨入りを迎え、ほとんどの春柑橘が旬を終えたが、これからの時期もまだまだ楽しめる春柑橘がある。
今週は今が旬の「カラマンダリン」を紹介したい。


【写真】甘味が強く果汁が多い「カラマンダリン」

カラマンダリンの歴史は大正時代まで遡る。大正4年(1915年)、アメリカの大学で、日本の温州ミカンにキングマンダリンを交配してできた品種で、昭和10年(1935年)に発表。
日本では昭和30年(1955年)に愛知県の果樹試験場などで栽培が開始された。

当初は酸が高く商品価値が無いとされていたが、春の終わりに収穫されず放置された果実を食べる野鳥の姿を見た職員が改めて調査したところ、甘味が強くなっていることを発見。
春の終わりに楽しめる「春みかん」として、各地に広がったという。

見た目は温州みかんに似ており、重さは150g程度。4月頃まで果実が樹に成っており、熟成期間が極めて長いことから、果汁が濃厚で水分が豊富。
収穫後1ヶ月程度、減酸のために貯蔵したあと出荷されるため、4月下旬から6月下旬に楽しめる。

主な生産地と収穫量(果樹生産動態等調査、平成30年)は、愛媛県(1515t)、和歌山県(480t)、三重県(420t)。県内の主な生産地は湯浅町、有田市、海南市、由良町など。

春柑橘を食べる今季最後のチャンス。糖度15度を超える甘さが自慢の春みかん。ぜひご賞味を。

(次田尚弘/和歌山市)
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後世に残したい郷土料理 三宝柑を使った「茶わん蒸し」

2021-05-16 16:34:50 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
外不出の春柑橘として200年の歴史を持つ「三宝柑」。
前号では、豊かな香りと上品な味わいが楽しめる「三宝柑マーマレード」を取り上げた。
マーマレードの他にも、茶わん蒸しなどの料理の器としての活用法もある。
今週は三宝柑を使った茶わん蒸しを紹介したい。

まず、三宝柑の上部を包丁で横に切る。中心に近い位置で切ってしまうと、入れられる具材の量が少なくなってしまうので注意が必要。
続いて上下に分かれた三宝柑の下の部分をくり抜く作業。外皮と実の間にナイフを入れ1周させる。そのうえで、大きめのスプーンを底まで差し込み、実を取り出していく。
この際、外皮を破ってしまうと具材が漏れ出してしまうので慎重に行いたい。

器の形になった三宝柑の内部に具材を入れていく。
主な生産地である湯浅地区などでは、同じ時期に旬を迎えるシラウオを入れることもあるというが、筆者は一般的な茶わん蒸しの具材を入れた。

卵のだし汁を注ぎ込めば、いよいよ蒸し器の出番。蒸し器に入れ、紙の落し蓋を乗せて25分程度蒸す。
陶器の茶わん蒸しと違い、火の通り加減の確認が難しい。定期的に竹串を刺し、確認しながら完成のタイミングを待つ。
蒸し上がれば、三つ葉などを添え、最初に切り取ってあった三宝柑の上部で蓋をして完成。


【写真】三宝柑を使った「茶わん蒸し」の作り方

食べてみて一口目に感じるのは、三宝柑ならではの香りと風味。
だしの中に柑橘の風味が溶け込み、最後まで飽きの来ない味わい。
手間がかかる料理ではあるが、三宝柑の魅力をふんだんに活かした、和歌山ならではの郷土料理を後世に残していきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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豊かな香りと上品な味わい 簡単に作れる「三宝柑マーマレード」

2021-05-09 16:50:20 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、藩外不出の春柑橘として200年の歴史を持つ「三宝柑」を取り上げた。
近年、多様な春柑橘の出現で生産量が最盛期の8分の1程度まで減少している三宝柑。
甘味はデコポンなどに劣るが、香りの良さを活かし、マーマレードなどの加工品や茶わん蒸しなどの料理の器として活用できるのが三宝柑の魅力。
今週は「三宝柑マーマレード」の作り方を紹介したい。

作り方は簡単。まず、三宝柑をよく水洗いし皮を剥き、千切りにする(皮を5片程度に分け平にすると切りやすい)。
千切りにした皮を沸騰したお湯で5分程度煮沸し、茹でこぼしザルに上げる。これを2回繰り返し、アク抜きを行う。

この間に、果実の小袋(じょうのう)と種を取り果肉を取り出しておく。アク抜きが終わった皮と果肉、砂糖を鍋に入れ20分程度煮詰めれば完成。
砂糖の量は好みだが、筆者は三宝柑1個(250g)あたり60gとした(甘めがお好みの場合はもう少し増やしてもよい)。


【写真】三宝柑を余すところなく使ったマーマレードの作り方

出来上がったマーマレードを食べてみた。三宝柑ならではの香りが広がり、見た目の皮の分厚さから想像する固さはない。
また、酸味や苦みを感じることはなく、上品な味わいに仕上がった。食パンやヨーグルトに添えるなど、様々な食べ物との相性もよい。
筆者は三宝柑1個を調理したが、そこそこのボリュームを維持。作りすぎに注意されたい。

果実を食する以外の楽しみ方ができる三宝柑。まもなくシーズンは終わるが、ぜひ試してみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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藩外不出の春柑橘 200年続く、紀州の伝統「三宝柑」

2021-05-02 16:41:50 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、和歌山県有田郡で生まれた新品種で、清見と文旦を交配させた「春峰(しゅんぽう)」を取り上げた。
今週も、和歌山県で生まれた伝統的な春柑橘である「三宝柑(さんぽうかん、さんぼうかん)」を紹介したい。

【写真】頭頂部の凸と外皮の分厚さが特徴の「三宝柑」

三宝柑は和歌山市の生まれ。江戸時代の紀州藩士・野中為之助の邸宅(現在の和歌山市今福付近)にあった原木に由来する。
文政(1818年-1829年)の頃、野中氏が時の紀州藩主・徳川治宝に珍しい柑橘が出来たと献上したところ、治宝自身が気に入り「三宝柑」と命名。
献上する際、三方(さんぽう)と呼ばれる台に載せていたことが、名付けの理由という。

以降、治宝は三宝柑を藩外へ持ち出すことを禁じ、栽培にも制限をかけたことから、農水省が公表している平成30年産特産果樹生産動態等調査(2021年2月公表値)では、200年経った現在でも、他県での生産はごく僅かであることから、和歌山県以外の実績値は記載されていない。
主な生産地は湯浅町、広川町、田辺市。なかでも、湯浅町の栖原地区で栽培される三宝柑は最高級品といわれている。

サイズは300g~400gと大きめ。2月から4月が最盛期とされ、5月頃まで店頭に並ぶ。
甘味は強くないが香りがよく、マーマレードなどの加工品や、中身をくり抜いて茶わん蒸しなどの料理の器として使用されるなど、様々なアレンジができるのも魅力のひとつ。

生産量は約500tあるが、最盛期(1980年頃)の約4000tと比べると大きく減少。
他の春柑橘の出現で致し方ないのかもしれないが、紀州伝統の春柑橘を後世に受け継いでいきたいものである。

(次田尚弘/和歌山市)
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