さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

紀州の柑橘をふんだんに使用 昔ながらの味わい「四季のジャム」

2021-09-26 16:42:16 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、三宝柑を使った乾燥ゼリーで信州銘菓の「みすゞ飴」を取り上げた。
今週も同店が販売する三宝柑を使った商品「四季のジャム」を紹介したい。


【写真】四季のジャム(三宝柑)

四季のジャムは、四季折々の国産果実を完熟で収穫し手作りされたもの。
昭和初期から販売が始まり、長野県下に現存するジャム製造メーカーとして屈指の歴史を持つという。
長野県産のイチゴやブルーベリー、すもも、ぶどうなどを使い、実に20種類を超えるジャムを製造。
三宝柑はその種類のひとつで、ジャムタイプとマーマレードタイプが販売されている。

使用されている三宝柑は和歌山県田辺市で1月中旬から2月上旬にかけて収穫されたもの。
販売は収穫期に限らず通年。内容量は160g入りのSサイズから580g入りのLサイズまで3種類。Lサイズは大容量でお得感がある。

味は三宝柑本来の柑橘風味が口いっぱいに広がり、甘すぎず、苦みはほとんど感じられない。
ジャムづくりは果実の廃物利用であってはならないという飯島商店の信念と、上白糖よりも高純度な最高級の白双糖を使用するというこだわり。
昔ながらの製法を守り糖度60%以上という市場では珍しい高糖度のジャムに作り上げられていることも、その味に強く関係している。

三宝柑の他にも、和歌山県産のバレンシアオレンジや、南高梅を使ったジャムもあり、紀州の味わいが凝縮された製品が沢山。同店のウェブサイトから通信販売で購入可能。
筆者はこのジャムと出会ってから朝食で必ず食べるようにしている。4人家族だがLサイズを20日余りで食べてしまう勢い。91歳の祖父も食欲が増すと喜んで食べる。

高品質で昔ながらの安心できる味。ぜひご賞味いただきたい。

(次田尚弘/上田市)
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三宝柑を使った乾燥ゼリー 信州銘菓「みすゞ飴」のこだわり

2021-09-19 19:32:12 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、和歌山県固有の柑橘「三宝柑」を加工した菓子などを販売し、苗木を全額補助する取り組みを行う長野県上田市の菓子店、株式会社飯島商店を取り上げた。
今週は同店の看板商品である「みすゞ飴」を紹介したい。

みすゞ飴は明治時代末期に開発され、果実を寒天、グラニュー糖、水飴で固めた乾燥ゼリー菓子。
横幅約4㎝、高さと奥行がそれぞれ約2㎝の直方体をしている。セロファンで包まれ、両端をねじる形で販売されており、どこか懐かしさを覚える。

三宝柑の他に、アンズ、ウメ、ブドウ、モモ、リンゴの合計6種類があり、それぞれ異なる配色であることからとてもカラフル。複数の種類を箱詰めして販売され、箱を開けた時の美しい色合いに思わず声を上げてしまう。


【写真】みすゞ飴(左上が三宝柑)

「みすゞ」の名は、信濃の国の枕詞である「みすゞかる」に由来するという。果物栽培が盛んな信州を代表する菓子として、初代社長が命名した。

無着色、無香料にこだわり、厳選された国産の高品質な果物を使用することで、着色料や香料を使わず、果物本来の味を提供している。
また、機械による大量生産は行わず、職人の手作りであり、飴の断面が機械的に切り取られたものではなく、人の手で切り分けられたものであることから、人の手の温もりさえ感じさせてくれる。

実際に食べてみると、寒天特有の弾力があり、果物そのものの味が口いっぱいに広がる。嫌な甘さや強い香りはなく、子供にも安心して食べさせられる。

京阪神の百貨店の菓子売場で取り扱いがある他、同店のウェブサイトから通信販売で求めることも可能。
三宝柑を使った信州伝統の味、みすゞ飴をぜひご賞味あれ。

(次田尚弘/上田市)
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信州から紀州の柑橘を守る 菓子店「飯島商店」の取り組み

2021-09-12 13:34:02 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
最盛期と比べ生産量が8分の1にまで減少した「三宝柑」であるが、その味わいを評価し、菓子に加工し積極的な販売を行う菓子店がある。

和歌山市から北東へ約360kmにある長野県上田市。長野県の東部に位置し、千曲川が流れる自然豊かな地。真田昌幸が築城した上田城が市の中心部にある。

北陸新幹線が通る上田駅の程近くに、創業から200年を超える老舗の菓子店がある。株式会社飯島商店。重厚な作りの立派な洋館で、和歌山県産の三宝柑を使った様々な菓子が販売されている。


【写真】飯島商店 上田本店

きっかけは昭和52年に遡る。ジャムの原料として使用していた夏柑が不作で、他の柑橘が無いか青果問屋で議論をしている際、偶然居合わせた和歌山県民から三宝柑を紹介された。実際に現地を訪れ、ジャムに適していると判断したという。

その際、農家から、三宝柑は伐採推奨品目に指定され、伐採することで奨励金がもらえるため、長く取引することは難しいと言われた。
それを聞いた先代の社長が、この味わいと歴史的価値を踏まえ品種保存に取り組まねば三宝柑は絶滅し、重大な損失になると危惧。
農家に伐採を待ってもらい、消費量を増やそうと、次々に商品を開発。ジャムをはじめ、同社の看板商品である「みすゞ飴」のラインナップに加えられ、羊羹やゼリー、ピールなど、魅力を余すことなく使った商品は、どれも素晴らしい味わいである。

店内では三宝柑の商品を求める客が多く、遠く離れた信州の地で、三宝柑の名が自然に飛び交う光景に、筆者は胸に熱いものが込み上げてきた。

同社は現在も和歌山県内の農家に三宝柑の苗木を全額補助する取り組みを続けている。
食から柑橘の品種を守る。持続可能な柑橘栽培の先進事例がここにある。

(次田尚弘/上田市)




みすゞ飴・三宝柑ゼリー
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持続可能な柑橘栽培の未来 消費者ニーズ・気候変動から考える

2021-09-05 16:35:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
25週にわたり紹介してきた、県内で収穫される様々な柑橘。その背景や収穫量の推移、味わい、加工品などを見ると柑橘を取り巻く環境の変化を感じさせられる。

和歌山市で発見された「三宝柑」は200年もの歴史をもつ柑橘。藩外へ持ち出すことを禁じた徳川治宝の命から、現在も、出荷される三宝柑のほとんどが県内で栽培されているという事実がある。
しかし、栽培効率や消費者に好まれる味に適応しづらく、最盛期に4千トンあった生産量も現在は5百トン程度。新しい春柑橘への切り替えで、三宝柑の木が伐採されることも少なくないといい、紀州の伝統を受け継ぐ柑橘の継承に不安が残る。

気候変動に目を向けると、イタリア原産の「ブラッドオレンジ」が、近年国内でも栽培されるようになった。国内に持ち込まれた1970年代、日本はイタリアと比べ栽培適温が2度程低く国内での栽培は適さないとされたが、2004年頃から国内で栽培可能となった。
技術の向上や品種改良が背景にあるのかもしれないが、栽培に適した温度を満たすようになったのは、地球温暖化もひとつの原因といえよう。


【写真】紀州伝統「三宝柑」㊧とイタリア原産「ブラッドオレンジ」㊨

消費者のニーズは一時として同じことはなく常に変化していくものであり、それに合わせて栽培する品種の選択や量を適応させていくのは農業を営むうえで必要なこと。
しかし、気候変動で思わぬものが栽培できるようになり、その裏で栽培が適さなくなるものもある。
伝統や歴史は理解されつつも効率性から別の品種へ置き換えざるを得ないこともある。

技術の発展や日々の研鑽により新しい品種が生まれ、様々な味わいを楽しめることを喜びつつも、様々な背景から消えゆくかもしれない品種に目を向け、持続可能な農業のあり方を考えていくことも大切だと思う。

(次田尚弘/和歌山市)
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