さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

貯蔵技術は県外でも 静岡の代表品種「青島温州」

2024-02-25 16:43:50 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、凝縮された甘味が特徴で、蔵出しに適している「晩生みかん」について取り上げた。晩生は「おくて」と読み、12月から翌1月にかけて収穫されるみかんの総称で、様々な品種がある。
今週は晩生品種のひとつである「青島温州(あおしまうんしゅう)」を紹介したい。


【写真】コクのある甘味が特徴の「青島温州」

青島温州は静岡県で栽培されるみかんの代表品種。糖度が高く、風味が良いという特徴を持つ。収穫は11月下旬に始まる晩生品種に分類され、下津みかんと同様に貯蔵された後、早いものでは12月中旬から翌3月にかけて出荷される。

栽培の仕方や貯蔵の行程には、静岡ならではの工夫がある。青島温州が栽培される三ケ日地域の土壌は赤土で、ミネラルが多く酸性。土の特徴を活かし、果皮が丈夫で、じょうのうが厚い、貯蔵に適したみかんに育つ。

収穫後は一定の期間、風にさらし、水分を3~5%飛ばすという。貯蔵に先立ち行うこの工程を「予措(よそ)」と呼ぶ。水分を減らすことで果肉がしまるとされる。予措の後は「ロジ」と呼ばれる浅めの木箱に並べられ貯蔵される。ロジは土壁で作られた貯蔵庫で、天井や床下にある換気口を利用した空気の入れ替えや温度調整、打ち水による湿度調整など、長年の経験に基づいた細かなコントロールが行われている。

果実の大きさは130~150g程度と大きめ。じょうのうがやや分厚いが、果汁が多くて果肉が柔らかい特徴をもち、蔵出しであるが故に味にコクがある。糖度は12~13度。

農水省統計によると、青島温州は国内で栽培されるみかんの栽培面積のうち、約12%を占め、宮川早生、興津早生に次ぐ品種である。

和歌山県内でも栽培され、この時期、果物売り場に並ぶ。貯蔵により旨味が増した晩生みかん。色々な品種の味わいを楽しんでほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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凝縮された甘味 蔵出しに適した「晩生みかん」

2024-02-18 14:51:30 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、今の時期に最盛期を迎え、伝統的な農法が日本農業遺産に認定されている「蔵出しみかん」の歴史を取り上げた。
今週は、蔵出しみかんの特徴と味わいを紹介したい。


【写真】外皮、じょうのうの分厚さが特徴の「蔵出しみかん」

蔵出しみかんは、年末の時期に出回る一般的な早生から中生に分類されるみかんと違い、12月から1月にかけて収穫される晩生の品種。外見は一般的なみかんのように張りがある
わけではなく、外皮が少し柔らかくなっている。
中身を見ると、じょうのう(袋)が分厚く、白い繊維束(筋)が多く、外皮が分厚いのが特徴。収穫後1~2ヶ月程度の期間、貯蔵をするため、このような晩生品種が適している。

一定期間貯蔵し出荷する理由は前号で紹介のとおり、一般的なみかんと出荷時期をずらすことにより高単価で販売できるという優位性は勿論のこと、味にも違いがある。貯蔵することで水分が蒸発し、それにより甘味が濃縮され、酸の消費も進むことで、まろやかな味わいになる。

食してみると、年末に出回る一般的なみかんと比べ、とれたてのフレッシュさは感じづらいが、甘さが際立つ。酸味が強めの早生品種を好む方には物足りなさがあるかもしれないが、甘さや、まろやかさが好きな方にはおすすめである。

店頭に並ぶ蔵出しみかんは、糖度ごとに分類され、異なる箱に入れられて販売。糖度12度を超えるものは薄紫、糖度13度を超えるものは黒というように、光センサーを用いて選りすぐりのみかんが販売されている。黒い箱であれば、特選等級のM寸が5kg程度で約5千円。年末に流通するみかんと比べればやや高価と感じるかもしれない。

海南市下津町で受け継がれてきた特別な味。旬の今、その魅力を感じてほしい。

(次田尚弘/海南市)
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日本農業遺産に認定 最盛期迎える「蔵出しみかん」

2024-02-11 13:30:30 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、酸味が少なく強い甘味が特徴の「津之望(つののぞみ)」を取り上げた。
今の時期に出荷の最盛期を迎えているのが、海南市下津町が誇る「蔵出しみかん」。今週はこの地域で受け継がれてきた伝統的な農法について紹介したい。


みかんを貯蔵する蔵

蔵出しみかんの特徴は、12月中に収穫されたみかんを、1ヶ月以上かけて、各農家にある土壁の蔵の中で熟成させて出荷するという点。熟成させることで糖度を高めるほか、収穫時の効率性を高めることや、他の産地が出荷しない時期に高単価で販売できるというメリットがある。

みかんを貯蔵する蔵は、長年、この地域で受け継がれている特有の技術で、畑の土や、近くにある雑木林の竹や木を利用して建設。傾斜地に雑木林を作り、伝統的な石積みの技術で耕作面積を増やすなど、この地域ならではの工夫がされている。

ランドスケープの観点からも、山頂から海に至るまでの急な傾斜地に段々畑のように畑や集落を配するなど、厳しい環境でありながら、先人の知恵により持続可能な農業システムが構成されている。

これらの仕組みが評価され、平成31年2月に「下津蔵出しみかんシステム」として日本農業遺産に認定。日本農業遺産とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた地域を、農林水産大臣が認定する制度。
県内では他に、有田地域、高野・花園・清水地域が認定されている。

令和5年1月には、有田地域と一体となった、和歌山県有田・下津地域として、世界農業遺産への申請承認を受け、10月に申請書類を提出。今後、審議が行われるという。

海南市内では蔵出しみかんの販売を知らせる幟が多数立てられ、今が最盛期。生産量は約3500tで販売は3月まで続く。

(次田尚弘/海南市)


【写真】海南市内で見られる幟
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和歌山県が全国1位のシェア 酸味が少なく甘味が強い「津之望」

2024-02-06 14:11:12 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、濃厚なオレンジの風味が特徴で、甘味が強く食べやすい「津之輝(つのかがやき)」を取り上げた。
今週は名前が似ており、食べ頃を迎えている「津之望(つののぞみ)」を紹介したい。


【写真】果汁たっぷりの「津之望」

津之望は平成23年に品種登録された、津之輝よりも少し新しい柑橘。開発されたのは昭和49年のこと。約40年の月日を経て、世に送り出された品種である。育成されたのは津之輝と同じ、長崎県にある農研機構の果樹試験場。育成地である「口之津」という地域の名前と、柑橘における農業振興の希望の意味を込めて名付けられたという。

果実のサイズは200g程度。果皮は薄く、容易に手で剥くことができる。じょうのうも薄く食べやすいが、果肉に種が入ることが多いため注意が必要。オレンジのように、ナイフでスマイルカットに切れば、種を気にすることなく食べることができる。

食してみると果汁の多さに気付く。「清見」と「アンコール」を交配したもので、津之輝と比べ、温州みかんの系統を含まないことから、酸味が弱く、甘さが先行する特徴がある。果肉は濃いオレンジ色をしており柔らかい。

12月下旬には糖度が12度を超え、クエン酸の含有率は1%となることから、年内の収穫が可能。早ければ年末から店頭に並び、年を越して2月上旬まで出回る。
糖度が高いものでは15度を超えるものも。柑橘に酸味を求める方にとっては少々物足りない味わいかもしれないが、果汁の多さや甘さを重視する方にはおすすめしたい逸品である。

農水省の統計によると、収穫量の第1位は和歌山県(約32t)、第2位は長崎県(約19t)となっており、和歌山県は全国の約6割のシェアを誇る。
今が食べ頃の津之望。ぜひ、味わってみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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