80歳代男性、胃癌のため胃切除術を数年前に受けています。

 

 

 

胆管結石を発症し食事ができませんでした。

 

 

 

普通は内視鏡で結石を取ることが多いですが、胃の手術後のため、開腹手術で結石を取る方法と執りました。

 

 

 

癒着が思いのほか強く、近くの大腸も一部切除する必要があり、大腸切除術を追加しました。

 

 

 

手術後の経過は順調でしたが、大腸吻合部から少し便が漏れてしまいました。縫合不全という合併症です。

 

 

 

しかし想定内の合併症でしたので、お腹の中に挿入していた管をつたって、重症には至りません。

 

 

 

予定していたよりも、長い期間食事を休む方針となりました。

 

 

 

得意の糖質制限点滴に、脂肪製剤を追加する方法にしてみました。

 

論理的裏づけではないかな。糖質制限点滴と脂肪製剤は理屈に合っているはず。

 

493)ケトン体治療(その3):MCTオイルとケトンサプリメント

 

 

KetoCaNaは、βヒドロキシ酪酸のカルシウム/ナトリウム塩の粉末で、クエン酸が入って飲みやすくはなっていますが、カルシウムとナトリウムが多いので摂取量に制限があります。これはβヒドロキシ酪酸11.7g当たりナトリウム1.3g、カルシウム1.15gが入っています。
KetoForseはβヒドロキシ酪酸のナトリウム/カリウム塩の液体です。これもβヒドロキシ酪酸11.7g当たりナトリウム1.6g、カリウム1.6gが入っています
したがって、1日あたりβヒドロキシ酪酸を20〜30グラム程度の摂取が限界です。(この量でカルシウムやナトリウムやカリウムが1日3〜5グラムの摂取になる)
このケトンサプリメントはスポーツ選手向けに販売されています。ラベルには「強度の運動の15分くらい前に摂取する(Consume 15 minutes prior to cardio intensive exercise)」と記載されています。心臓はケトン体をエネルギー源として利用していますので、心臓に負担のかかる強度の運動をする前にケトンサプリメントを摂取すると運動機能が向上するということです。ケトン体と心機能に関しては473話で解説しています。
中鎖脂肪酸(MCTオイル)の多いケトン食にこのケトンサプリメントを併用すると、比較的楽に血中ケトン体を上げることができます。βヒドロキシ酪酸の血中濃度を高く維持する時間を延ばすことができます。
MCTオイルとケトン・サプリメントを併用すると、同じレベルの血中ケトン体濃度に達するのに必要なMCTオイルの服用量を減らせるので、腹痛や下痢の副作用を軽減できます。
また、カルシウムやナトリウムやカリウムの尿中排泄が増えると尿がアルカリ性になるので、尿中のケトン体が増えて酸性になるのを防ぐ効果はあります。
古典的なケトン食は高脂肪食ですので、実施がかなり困難ですが、MCTオイルとケトンサプリメントを併用すると、食事の苦痛が少なくなり、βヒドロキシ酪酸の血中濃度を2〜3mM程度に維持できます。