中国政府は1月8日、入国者に対するPCR 検査、集中隔離措置を廃止、これまで厳しく規制してきた省を跨いだ移動、国家間の移動を原則自由とした。この制度変更によって、春節休暇となる1月21日(土)から1月29日(日)にかけて、3年ぶりの“人民大移動”が発生する見込みだ。
旅行大国の海外旅行解禁とあって、世界の旅行関係者は特需の発生に大きな期待を寄せているものの、そのビジネス環境は各国政府の対応の違いによって大きく明暗を分けている。
春節目前にして、受け入れに消極的な国のひとつが韓国だ。韓国では中国からの旅行客に対して、事前のPCR検査陰性証明の取得を義務付けた上で韓国到着後、厳格なPCR検査を実施している。
検査終了後は狭い空間に押し込められ、結果が出るまで5時間も待たされたそうだ。陽性となれば1週間隔離されることになるが、費用は自己負担、その上隔離先はベッドすらないような劣悪な環境だったという。
中国のSNSでは、韓国に到着後、中国人旅行客だけが首から黄色いプレートをかけさせられた上で、PCR検査会場まで軍人に連れていかれる様子が話題になっている。その光景を物珍しがって他国の観光客が写真を撮るのだが、“これでは犯罪者が市中引き回しにあっているのと変わらない”と中国人旅行客は憤慨している。
中国の国民旅行消費報告によれば、2019年における中国人旅行客消費額の上位10か国は順に、タイ、日本、オーストラリア、マレーシア、シンガポール、インドネシア、アメリカ、ベトナム、イギリス、UAE(アラブ首長国連邦)である。
コロナ禍で厳しい経営を強いられてきた日本のインバウンド関連企業だが昨年6月以降、入国制限が段階的に緩和されたことで、ようやく回復の兆しが見えてきた。今回、日本にとって最大の得意先である中国が海外旅行の事実上の解禁になり、このタイミングをビジネスに活かしたいであろうと思う。
他方、国を挙げて歓迎の意を表しているのはタイだ。タイの他には、カンボジア、オーストラリア、ニュージーランドなどが中国旅行客の受入れに積極的だ。