礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

視たり聞たり皆自由(植木枝盛)

2016-04-02 05:56:29 | コラムと名言

◎視たり聞たり皆自由(植木枝盛)

 調べ物をしていて、植木枝盛〈ウエキ・エモリ〉の「民権田舎歌」が気になり、インターネット上で、いろいろ検索してみた。全文を紹介したものは、一件のみで、あとのものは、ほとんど、ごく一部の紹介のみ。しかも、本文の校訂に疑問のあるものが多かった。全文を紹介している一件は、音声で再現している動画である。字幕もついていて、実によくできていると思ったが、やはり、一部の字句の校訂に疑問を持った。
 そこで、この「民権田舎歌」の本文を、礫川の校訂で紹介してみたい。もちろん、自信があるわけではなく、あくまでも議論の材料である。出典は、一八七九年(明治四二)四月、集文堂刊の、植木枝盛著『民権自由論』である(国会図書館デジタルコレクション)。なお、校訂に時間がかかったので、本日は前半の紹介のみ。後半の紹介は、明後日あるいはそれ以降。

  民権田舎歌
自由なるぞや人間【にんげ】のからだ  
頭も足も備はりて
心の霊妙万物【ばんもつ】に越へ   
心と身とが倶【そな】はるわ
一【ひとつ】の天地と云ふもよし 
自分一人【ひとり】わ一人で立つよ
なにも不足はなひぞいの  
そこらで人間を自由と申す
自由じや自由じや人間わ自由  
行くも自由よ止る〈トマル〉も自由
食【くろ】ふも自由に生きるも自由  
心わ思ひ口わ言ひ
骸【からだ】わ動き足【あ】しや走る  
視たり聞たり皆自由
自由にするのが我【わが】権利  
自由の権利わ誰も持つ
権利張れよや国の人  
自由わ天の賜【たまもの】じや
取らねは吾儕【わがみ】の恥ぞかし  
おまへ見んかへ籠の鳥
羽【はね】があつても飛ぶことならぬ 
おまへ見んかへ網の魚【うを】
鰭【ひれ】があつても游【およ】がれぬ 
おまへ観んかへ繋【つない】だ馬を
蹄【ひづめ】があつても走られん  
人に才あり力もあれど
自由の権利がない時は   
無用の長物益がなゐ
さらば人間と云ふものは  
自由で生きてこそよけれ
自由が無けれは死んだも同じ 
おまへ見んかへあの塩を
塩と云ふのはからいが塩しや 
からくなければ沙【すな】である
砂糖と云ふのは甘いが砂糖  
甘くなければ土じやぞへ
人間も自由でこそよけれ   
自由がなければ人形よ
卑屈さんすな圧制受けな   
人に貧富【ひんぷう】強弱あれど
天の人間を造るのは    
天下万人【ばんにん】皆同じ
人の上には人はなく     
人の下にも人はない
こゝが人間の同権じや

 ここまでで、約半分だから、かなり長い歌である。
 原文は、今日でいう変体仮名が多用されているが、すべて、ふつうの仮名に直した。
 最後から七行目「卑屈さんすな圧制受けな」は、原文のママ。しかし、「さんすな」は、「さらすな」の誤植ではないのだろうか。なお、人間のルビは、すべての箇所で、【にんげ】となっている。

【追記】 後半部も、何とか校訂を終えましたので、以下に掲げます。2016・4・2

政府は民の立【たて】たもの
法度【はうど】は自由を護る為め
官的きや吾儕【おいら】の雇ひもの
権利を張らねば詮【せん】がない
古へ今の別【わか】ちなく
悪るき政府が世に在ると
圧制暴虐やらかして
民の自由を抑へ制【つ】け
人を殺して家を焼き
金をとつたり宝を奪ひ
議論を禁じ口を閉ぢ
無理非道の事ばかり
なんとこれでもよい事か
これは間違ひ大間違ひ
こんな無道の政事では
民の安楽【あんら】が得られない
権利張れよや自由を伸べよ
民選議院を早くたて
憲法【おきて】を確かに定めゑよ
これは今日【けふび】の急務じやぞ
やれやれやれやれ国の人
立憲自由の政体で
自由の権を張り伸し
学問修めて智恵磨き
職業務め働て
文明開化の人となり
三千五百が一致して
国の威光を輝かし
秀で栄えて行かしめよ

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