礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

1942年(昭和17)の『夏季鍛錬日誌』

2015-03-19 05:09:12 | コラムと名言

◎1942年(昭和17)の『夏季鍛錬日誌』

 先週の金曜日、神田神保町の古書展で、『夏季鍛錬日誌』という粗末な冊子を入手した。一九四二年(昭和一七)の夏季休暇中にしたためるための日誌で、これは中学生用であった。実際に、富山県立高岡中学校の五年生の某君が使用していたものであって、日記欄には、ほぼ全ページわたって、ペン字による書き込みがあった。古書価は二〇〇円。
 はるか昔の昭和三〇年代前半、まだ自分が小学生だったころ、夏季休暇の直前、教師から『夏休み絵日記』といった名前の冊子を渡された記憶がある。戦争中、中学生を対象に、同じような日記帳が作られ、市販されていたことを、初めて知った次第である。これに日記をしたためていた某君が、この冊子を、個人的に買い求めていたのか、それとも高岡中学校から配布されていたのかは、判断がつかない。
 中等教育会編纂、文信社発行、B六判六四ページ。「昭和十七年六月廿三日発行」、初版発行部数二〇〇〇〇部、売価二三銭。
 本日は、その「はしがき」を紹介してみよう。

 は し が き
一、中等学校に於ける夏期休暇の利用法としては従来各種教科の宿題や練習問題を課したが最近時局に鑑み心身鍛錬、勤労奉仕作業等の立場から之を排する傾向にある。本日誌はこの新傾向を汲んで一面練習ともなり、他面には修養ともなる資料を選択してこの両思潮を折衷することに努めた。
二、上欄には時局の認識を新にし、学生生徒の本分を識らしめるため、主として最近の発表になれる名家の論説、歌詩等の文献を輯録して修養読本とした。
三、作文欄を設け慰問文を作つて前線将士を慰問し、感謝の意を表すると共に出征将士の武運長久を祈る資とした。
四、日記の末尾には夏季休暇日誌反省録及び小遣帳を附した。之によりて日々の行事を確実に実行したるや否やにつき指導者又は保護者の監督を受けるやうにし、他日の修養の資とした。
五、附録として「殉忠軍神九柱の偉勲」、「大東亜戦争作戦主要地面積人口便覧」、最近国勢グラフの発表にかゝる「大東亜重要物資資源統計」並に大東亜共栄圏要地図等を附して学習の資に供した。
 昭和十七年五月   編 者 識

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