◎東條英機元首相の処刑と辞世
映画『大東亜戦争と国際裁判』については、いろいろ述べたいことがあるが、本日は、そのラストの場面を紹介してみたい。
この映画のラストは、東條英機元首相が処刑される場面である。
処刑前、土肥原賢二(信夫英一)、松井石根(山口多賀志)、武藤章(中西博樹)、東條英機(嵐寛寿郎)の四人が、一室に集められ、机の前に座っている。いま、東條が色紙に署名をしようとしている。すでに色紙には、右から、土肥原賢二、松井石根、武藤章の三人の署名があり、一番左に、東條が毛筆で署名した。
続いて四人は、教誨師の花山信勝(中村彰)から「酒」をすすめられる。この酒は、黒いビンに入っており、ビンの形状から、洋酒と思われる。紙コップに注がれた酒を、手錠をはめられた両手に持ち、口を近づけて飲む姿が、何とも哀れである。
このあと、松井石根の発声で、「天皇陛下万歳」、「大日本帝国万歳」を、それぞれ三唱。手錠のせいで、両手は、胸の高さまでしか上がらない。
将校に促されて、四名は部屋を出る。米将校二名、MP一名、花山師、武藤、松井、土肥原、東條、MP二名という順で列を作り、暗い廊下をゆっくりと歩いて、処刑場へ向かう。「13A」と書かれた鉄の扉の前までやって来た。ここが、処刑場のようである。
花山師も、処刑場の中までは入れない。「13A」の部屋にはいった四名は、そこで、頭から黒い袋をかぶせられる。最初に、死刑台に昇るのは、東條英機。階段の前で、東條は、黒い袋を脱いで、上を見上げる。おもむろに階段を昇り始めるが、ここでは、東條の足元だけが映る。やがて、何かが落ちるような音が……。
画面が変わって、字幕。東條英機の辞世。
身はたとえ
千々に裂くとも及ばじな
栄ゆる御代を
おとせし我は
世に伝わっているものと、若干、字句が異なるようだが、映画では、右のようになっている。
さらに、字幕。
時に――
昭和二十三年
十二月二十三日
午前零時二十分
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