礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

沖縄の米軍、与那原に進出

2016-05-23 04:34:02 | コラムと名言

◎沖縄の米軍、与那原に進出

 この間、中村正吾秘書官、および黒木勇治伍長の「日誌」によって、七一年前(一九四五年)の「今ごろ」の出来事を紹介している。出典は、それぞれ、中村正吾著『永田町一番地』(ニュース社、一九四六)、および黒木雄司著『原爆投下は予告されていた』(光人社、一九九二)である。
 本日は、『原爆投下は予告されていた』から、五月二三日と二四日の日誌を紹介する(一四二~一四四ページ)。なお、『永田町一番地』は、五月一四日のあと、六月四日まで、日誌が飛んでいる。

 五月二十三日 (水) 晴
 午前八時上番する。昨日の午前中の敵機来襲以降は静からしい。内地の相手は米軍だが、ここは蒋介石軍だ。米軍から新しい武器や弾薬の補給を受けているが、蒋介石軍はやはり軍そのものに力があると思えない。したがって、毎日攻撃はないようだ。
 正午のNHKのニュースが流れてくる。
 ――本日、駐日デンマーク公使が日本に対し国交断絶を正式に申し入れて来ましたと。
 デンマークはドイツのすぐ北の方にある小国で、昨年までドイツの占領下にあったが、逆にソ連か米英に取り返されて、付き合い上でまったく意味はないと思う。【後略】

 五月二十四日 (木) 晴
 午前八時上番す。下番者田原候補生は、
「前勤務者田中候補生の申し送りでありますが、昨夜午後十時、ニューディリー放送によりますと、(一)沖縄の米軍は東西両海岸線で戦車を先頭にして本格攻撃に移り、昨日(五月二十三日)、与那原【よなんばる】に進出しました。(二)B29百機は昨日、東京を空襲しました。以上であります」
 沖縄の東西両海岸を進攻しているということは、中部山岳地帯は進転していないということでもある。山岳地帯では、日本軍は頑張っているのだ。
 午前十時ベル。「こちら保線班です。情報室ですか」「そうです。情報室です」「男体山より東側の回線、全面的に接断〔ママ〕されております。那須山、恵那山、鳥海山は不通です。修理していきます」「了解」
 電話の内容をメモに記録し、「上山少尉殿経由隊長殿」として回す。
 あの重い配線を背負って急な山道を進んでいると思うと頭が下がる。こんな机の上でじっと座らせてもらって八時間たてば終わりと違う。
 上山少尉は隊長の前に地図をひろげ、その地図を指さしながら説明している。【中略】
 午後四時、下番する。下番して内務班に帰ると、一勤の田原君がちょうど起床して昼食を食べていた。久しぶりに雑談しながら、洗濯や入浴を一緒にする。そのうちに夕食の時間となる。夕食も雑談しながら食べるのは楽しいもんだ。

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