礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

農地改革で日本再建(木村小左衛門)

2016-11-27 07:33:09 | コラムと名言

◎農地改革で日本再建(木村小左衛門)

 昨日の続きである。『日本週報』の「第四十八―五十号」(一九四七年三月二三日)を紹介している。
 本日は、同号の巻頭に置かれている農林大臣・木村小左衛門による「新農村の黎明」という文章を紹介してみたい。木村小左衛門〈コザエモン〉は、第一次吉田茂内閣で農林大臣を務めた。
 ここで木村は、敗戦後の食糧対策という面から、農地改革の必要性を説いている。なお、木村自身は、島根県屈指の「豪家」に生まれたという。

  新 農 村 の 黎 明
 日本再建の為に、農村の果さねばならぬ使命は極めて重大である。農村は、戦前すでに人口の過剰に苦しめられていたが、戦後には更に多くの人口を養わなければならなくなつた。食糧は朝鮮、台湾の補給地を失つたので、国民生活の安定を期せんと欲すれば、従来よりも更に多くの食糧を国内で生産せねばならなくなつた。
 然るに、農家の約七割を占める小作農家と、耕地面積の約半ばを占める小作地とを支配する小作関係は、旧態依然たるものがあり、耕作権は不安定で、小作料は高く、しかも物納制であつた。このことは農村の封建性を依然として存続させる所以〈ユエン〉であって、このまゝに放置せんか、農村の民主化は望み難く、日本の再建は困難である。これ農地改革の必要が叫ばれるに至つた所以であつて、第一次農地改革法は早くも終戦の年たる昭和二十年〔一九四五〕暮の議会を通過したが、内容に於て尚欠くる所があつたので、翌二十一年〔一九四六〕夏の議会に第二次農地改革法が上程可決され、昨年〔一九四六〕の暮から施行されるに至つた。この内容は、複雑な我国の農村の実情からみて多岐に亘るけれども、その中心となつているのは、極めて大規模な自作農の創設を、極めて短期間に断行せんとするところにある。
 本法によれば、僅か二年間に、不在地主の小作地の全部、在村地主の小作地は―北海道で四町歩、都府県では平均一町歩―を残すのみで、その他の小作地は全部国家が買牧することになっており、自作地でも経営の適正でないものは、一定面積を超過する部分を買収し、原則として現在の小作農に売渡そうとするものである。もしこの計画が完全に遂行されゝば、小作地は総耕地面積の僅かに一割を残すに過ぎず、一町步以上の地主は我国の農村から姿を消し、殆んど大部分の農家は自作農となるであろう。
 新日本建設の為には、どうあつても、この農地改革はなさねばならない。これがため政府に於て凡ゆる努力をなすことは勿論であるが、尚その上に国民全体の一致協力がなければ、到底その成功は望み難いのである。
 もしこの農地改革が成功し、合理的な農業経営が打立てられるならば、ここに初めて新農村の建設が可能となり、新日本建設の黎明が来るであろう。                農林大臣 木村小左衛門

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