住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

(追記あり)震災一月に思う (付[ ボランティア奮闘 ]95年2月記) 

2011年04月10日 18時13分11秒 | 様々な出来事について

東日本大震災から、ひと月が経とうとしている。今日も近くのお寺の法要に参加し、東日本大震災の被災者の皆様の一日も早い復興と亡くなられた方々への追悼のために経を唱えてきた。被災地では今もって物資が足りない、瓦礫の整理が進まない、遺体の身元も確認できない、その中で痛んだ遺骸を葬らねばならないなど、様々な問題が山積していることと思う。何事もうまくいかない、焦燥の中に困り果てている方もあるかもしれない。しかし、これだけの大惨事にすべてが上手く進むと考える方がどうかしているとも言えるのかもしれないし、それでも、もう少し何とかなっても良さそうなものだと思わざるを得ないという方もあるだろう。

原発事故のその後の推移もまったくテレビ報道がなされなくなると判断が付かない状況にある。新聞から海水へ汚染された水が漏れ出たというが、その後意図的に低濃度の放射能汚染水一万トンを放出したという。これは、明らかにロンドン条約という国際的な廃棄物の海洋投棄に関する条約に違反していると指摘する方もある。私たちは国家犯罪に荷担している国民なのだという方もある。これから海外の環境問題に関する諸団体から糾弾を受けることになるのではないか。とにかく放射能の大気や海洋への汚染を食い止めることを最優先して即刻手段を講じて欲しいものである。

そんな中で、この震災による私たちの生活への影響ばかりか、経済にものすごい悪影響が及んでいる。この震災があったばかりに多くの中小企業が部品が届かない、商品が引き取られない、受注が止まった、キャンセルの嵐だと、資金繰りに困りはてている。余りにも日本全体が萎縮してはいまいか。何もかも取りやめ、自粛では日本経済が沈没する。これまで通り、なるべく普通にすべきことをすることによってしか、日本は元気になれないし、被災地の経済も活性化しない。

そんな中、復興計画が審議されつつあり、その財源に連帯税なる考えが浮上している。日本全体が被災し、疲弊し、経済的にも困り果てている人たちが多く出つつある現状に増税があってよいものか。先頃新聞(朝日新聞4/5)にも、会計検査院審議官が言われていたように、昨年の決算剰余金30兆円を使えば増税などせずにすぐに復興に使えるという。このような真っ当な発言が出来る官僚をこそ政治家はブレーンとして大切にして新しい国造りを考えて欲しい。

被災した三陸海岸地方の復興計画の青写真はもう既にできていると言われる。参議院議長が言われるように会議を開いて悠長なことをしているときではない。早く優秀な官僚の智慧を結集して国の方針を発表すべきではないか。

4月6日に行われた民主党国会議員勉強会での上杉隆氏の原発事故を中心とする官邸と報道機関のあり方並びに東電の対応などについて問題点を鋭く指摘している会見。是非ご覧下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=O0CRuajD6C8

ならびに同日別室で行われた上原春男佐賀大学元学長(原発設計者)の官邸とのやり取りを交えた原発事故の終息に向けた提言。必見の価値あり。
http://www.youtube.com/watch?v=B1aAYwCnRt8&feature=related 

 

以下の文は、阪神大震災の折、何度かボランティアに入った先での体験談である。今多くの人たちがボランティアとして活動されていることと思うが、この地から何のツテもなくボランティアに入ることを躊躇している身として、少しでも応援したい気持ちから掲載させていただく。何か参考になることがあれば幸いである。
  

[ ボランティア奮闘 ]  


 今回の阪神大震災に関連して延べ三十万人ものボランティアが活躍しているといわれている。

 一口にボランティアといってもその形態立場はまちまちで、団体に属し数人の単位で行動しているもの、まったくの個人で駆けつけて来るものなどさまざまである。

 私の場合も、知人の紹介によって避難所に寝泊まりし、避難所を中心として活動した。全国からこうしたボランティアが毎日五人から十人は本山南中学には来ていた。多すぎて区役所内に設けられた情報センターに問い合わせてもらうケースも多かったようだ。

 一週間くらいの長期の人もあれば一日だけという人も多い。高校生から社会人まで。大半は大学生。出身地で目立ったのは、大阪、千葉、東京、北海道。一度中学生が自転車で大阪から来たというケースもあった。

 団体で活動する場合も、代表的には、医療担当の医者や看護婦のグループのように専門職を持つ人と、炊き出しなどの仕事を担当するために道具を持参で避難所を回ってくれている団体の人たちもある。

 これらは労働組合、青年会議所の人たちが多かった。また、洗濯のサービスや理髪師美容師のグループ。風呂や仮設トイレを設営してくれるグループもある。また、炊き出し用の大鍋や網を運んでくれる人、街角でテントを出す便利屋のようなボランティアまである。さらには、救援物資を地方から運ぶ運送屋さんのボランティアまでいる。

 本当にみんなの気持ちが暖かい、優しい、嬉しいのである。何かしたい。その一心でここに飛び込んで来た人たちばかり。駅の貼り紙を見たり、人に聞いて来たという人たち。何でも必要なことをしよう。その純粋な気持ちで結ばれた人たちの仕事によって避難所に暮らす人たちの生活が支えられていく。

 物資が市役所から届くと一斉にボランティアが集まり荷を下ろしていく。自衛隊の給水車が来ればポリタンクに水を移し運ぶ。一日二度の物資の配分。そして炊き出し。朝夕のお湯の準備。小さな子供たちの世話。子供たちを校庭に出させて一緒に遊ぶのもボランティアの仕事。

 私も呼ばれてドッチボールをしたり、バスケットボールをしたり。遊ぶ中で、子供は元気になっていき、大人たちも外に顔を出すようになって来た。

 そうして、この次に待っていたのが、災害弱者といわれる老人のケアーの問題。こちらのほうは私の担当になり、避難所の周りの各家々を一軒一軒三人四人で手分けして回っていく。

 避難所以外の比較的損壊の少なかった家やマンションに暮らす人たちの状況調査である。その中に老人だけの家庭もあり、水や食料に事欠く家が無いかどうか調べて回るのである。本来であれば行政の仕事であろうが、そこまで手の回る段階に無いことから、我がボランティアチーム独自の調査に乗り出したという訳なのであった。

 初めは何か押し売り的な気分がして気後れしていたが、ドアを開けてくれる人それぞれがやはり誰かと話したいという気持ちで質問する以上のことを語ってくれた。話をするということがこれ程までに求められているのを実感することができた。

 ボランティアに来る人の中には、学校内の様子を見て、自分にはやることが無いからすぐ帰りますという人もいる。せっかく遠くから来たのだから何かしていけば。と言っても何もありませんと言う。何でもいいんだよと言うとよけい困惑してしまう。

 何か生きるか死ぬかの状況の中で、作業をし人を救うことがボランティアと勘違いしているようなのだ。ボランティアとは本来、自主・自立ということで、自分で判断し自分で責任を持つということだそうだ。

 自分の判断で自由に仕事を見つけ行動すること。人から指図されていて楽しいことは無い。自分で見つける自主的にやるからいきいきできる。楽しいし自分のためになる。ボランティアに限ったことでも無いだろうが。

 また、長くいると、こんなに俺たちはやっているのに住民は何も手伝わない。疲れて来てそうぼやき出す人も多い。被災住民が主で我々ボランティアは補佐する立場なのに主導になってはいないかとの反省も聞かれる。初心を忘れないということはいかに難しいことか。

 何かしたい。そう思って来たのにいつの間にか、こんなにしてやっているのにという気持ちになって来てしまう。ボランティアに期待し感謝してくれている人がほとんどなのに被災者と接していないがためにそのことを知らずに過ごしてしまったのである。たくさんの被災者と接すれば、してやっている、という気持ちは吹き飛んでしまうだろう。

 大切なのは、その仕事を通じて被災者と接し、そこから自分自身が何かしらを学んでいくことではないかと思うのである。被災者のためになることをさせていただき、あくまでそのことは自分のためである。

 そして、被災者が地震で何を得たのかを知り、学び取って帰ることで、地元の多くの人と話し考えてもらう必要があるのではないのか。そうして初めて、この地震が神戸のものだけでなしに広く日本人全体の問題として捉え始めるのではないかと考えるのである。

 人間は本来ボランティアではなかったであろうか。お金のために毎日奔走する姿が人間の本来の姿では無かろう。困った人を見つけたら、黙って馳せ参じて救ってあげる。何の恩着せがましいことも無く。ただ当たり前の行為としてできたこれらのことが、今では特別のものとなってしまった。

 人の痛みを分かること、これほど今の私たちに求められていることは無い。この震災を契機にこれだけ多くの若い人たちが被災地に集結したことに勇気を感じ、ただただ熱い気持ちが胸に込み上げて来るのである

 

(↓よろしければ、クリックいただき、教えの伝達にご協力下さい)

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 仏教へにほんブログ村

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする